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「死ぬまでSEX」特集を「セクハラを生む」と批判した朝日新聞に週刊ポストが反論!「朝日こそセクハラ」
「週刊ポスト」(小学館)16年12月9日号
ここ何年か、「週刊現代」(講談社)「週刊ポスト」(小学館)の2誌が競うように取り上げ続けてきた、「死ぬまでSEX」「死ぬほどSEX」と題される特集企画。先日当サイトでは、「週刊現代」2016年10月15日・22日号に掲載された〈さようなら、「死ぬまでSEX」 妻からの伝言〉というタイトルの特集を紹介し、「週刊現代」は近いうちに「死ぬまでSEX」特集をやめるのではないかとの記事を配信した。
そんななか、今度はこの特集をめぐり、「週刊ポスト」と「朝日新聞」の間で論戦が勃発した。
前述の通り、「週刊現代」の方は、〈さようなら、「死ぬまでSEX」 妻からの伝言〉という「死ぬまでSEX」特集への決別ともとれる記事を掲載している。
その記事はまず、日本性科学会が14年に出した「中高年セクシャリティ調査結果」のデータを引き、50代以上の男性の約40%が妻とのセックスを求めている一方で、妻は50代で22%、60代で12%、70代で10%しか性交渉を求めていないという現実を読者に指し示す。そして当の女性たちの声を取り上げ、これまで同特集を鵜呑みにしてきた男性たちが行ってきた、バイアグラを飲んだりラブグッズを買ったりといった努力はすべて、女性たちにとってはむしろ苦痛を与えられる行為でしかなかったかもしれないと主張したのだ。記事には、閉経後も夫に迫られ苦痛を感じている女性からの「年を取ったら枯れましょうよ。セックスなんて若い人に任せておけばいいんですから。夫にもいい加減、目を覚ましてほしい」との声まで掲載されるといった、これまでの路線とは一線を画す内容だった。
「週刊現代」はこの後もエロ記事を掲載し続けているわけではあるが(16年12月10日号では「飛び出すエロ動画」と題してアダルトVRの特集をしている)、それでもこの記事以降「死ぬまでSEX」特集とは少し距離を置いた誌面づくりが続いている。
一方、問題の「週刊ポスト」である。16年12月9日号には「朝日新聞」に向けてこんな檄文が掲載されていた。少し長くなるが全文を引用する。
〈11月15日、朝日新聞(夕刊)に〈おじさん、勘違いやめて〉と題された記事が掲載された。
記事中では本誌大人気特集『死ぬまでSEX』を読んだ若い女性たちが〈こんな記事が出るから、セクハラが減らない〉〈男性向けに、いいように書かれている〉〈若い子がおじさん好きとは限らない〉などと言いたい放題。まさに、このシリーズ企画を「キモイ」とばかりに罵ったのである。
しかし、これこそがセクハラではないか──と本誌は反論したい。
人間は何歳になろうと生き生きと自由に恋をする権利を持っている。“人権意識”の高い朝日新聞なら当然うなずくところだろう。にもかかわらず、この記事からは「いい年して」「ジジイが恋やセックスをするなんて……」という差別意識が伝わってくる。
高齢化社会が進むなか、中高年男性が残りの人生をより豊かに、勇気を持って生きられるように──その一助となるべく、本誌はこの『死ぬまでSEX』を掲載し続けている。どんな批判を浴びても「読者ファースト」の情報をお届けするつもりだ。
実際、編集部には中高年読者から「女性との素晴らしい出会いがあった」「ポストの記事が自分の“壁”を壊してくれた」などと喜びの声も届いている。
本誌は今週も自信を持って、世の男性のために『死ぬまでSEX』をお届けする〉
この後、8ページにもわたり延々と「死ぬまでSEX」記事が続く。今週は「不倫」にフォーカスした号のようで、「「不倫」は罪だがナニは立つ」とサブタイトルを打ち(もちろん『逃げるは恥だが役に立つ』のパロディだ)、「1万4100人調査で判明した衝撃データ「40代女性の19%に浮気相手がいる」」や「人気AV女優が語る「不倫」これが私の生きる道」といった記事が掲載されていた。
彼らをここまでムキにさせた「朝日新聞」記事とはいったいいかなるものだったのか。
「死ぬまでSEX」特集への疑義を叩きつけたのは、先ほどの「週刊ポスト」の檄文にもある通り、先月15日付「朝日新聞」夕刊に掲載されていた連載「オトナの保健室」である。この連載は、セックスレス、不倫など、性愛に関する問題について匿名の女性が意見をぶつける座談会形式のコーナー。そして、15日付夕刊でのテーマが「死ぬまでSEX」特集についてであった。
記事は実際に「死ぬまでSEX」特集を読んでみた女性がその感想を述べるところから始まる。27歳のAさんが疑問を抱いたのは、誌面に出てくる女性が不自然なまでにやたら「おじさん好き」をアピールしているところだった。そして、このような記事を鵜呑みにした人のせいでセクハラが起こっていると切って捨てる。
「若い女性のコメントが印象的だった。「おじさんがかわいい」「プニッとしたおなか周りの肉がいい」とか。周りに結婚している子は少ないけど、もし友人が50、60代の男性と関係を持ったら、ギョッとするというか……。「父親以上の年齢だけど大丈夫? 結婚を視野に入れてちゃんと考えようよ」と言いたくなる。こんな記事が出るから、セクハラが減らない。「若い子は僕らが行っても大丈夫」と勘違いする」
誌面に出てくる女性のコメントが、読者のメイン層である中高年男性に利するものしかないという点は52歳のBさんも指摘する。
「男性向けに、いいように書かれている。女性も特集の取材ではマイナス面は語らないので、本心なのか疑問。昨日、中小企業の社長をしている60代男性に聞いたんです。こうした特集はインパクトがあるから「おっ」と思うけど、内容は想像がつく、と。ただ、その方も「若い子が俺らを勘違いさせる」と。「違うってば」と説得しました。ゴルフで「わーすごい」とほめても、それはゴルフの腕を指しています」
また、前述「週刊現代」が指摘した、「死ぬまでSEX」の押し付けは妻やパートナーにとって迷惑でしかないのかもしれないという問題だが、47歳のCさんもまたそれを裏付けるかのような発言をしている。
「私もそう考えていたけど、2年前から体調が悪くなって、激しいのはダメだと医者に言われた。夫を拒むこともあり、不満そう。友人もひざが痛いと話している。「死ぬまで」は重い」
「死ぬまでSEX」の言説に対しては、前々から医学的な見地からも疑問の声が発せられてきた。たとえば、ウェブサイト「KERAKU」で日本家族計画協会理事長の北村邦夫氏は、性行為時に、心拍数、呼吸数、血圧が上昇するため、〈高血圧症状のある男女の場合、セックスの最中の瀕死の危険もありうる〉と高齢者のセックスに警鐘を鳴らしている。
また、それ以外にも、年を重ねた女性の場合は性交痛の問題も出てくる。北村氏は前掲サイトで〈閉経が近づくと、女性ホルモン(エストロゲン)の低下によって腟粘膜が薄くなり、皮下脂肪の減少などによって、腟の乾燥や性交痛が起こります〉と説明しているが、年を重ねれば重ねるほどこのような痛みに見舞われる可能性は増えていく。そして、こういった状況をさらに深刻化させかねないのが、パートナーがED治療薬を服用した場合だ。まだ十分な準備が出来ていない女性器にバイアグラなどの効果を得た男性器が無理やりねじこまれることで膣壁裂傷を負ってしまうこともある。
こういったことを含めて考えると、「死ぬまでSEX」は始めから無理筋の特集だったのかもしれないが、ここ最近の「週刊現代」と「週刊ポスト」のこの特集に対する距離感の違いはいったい何が原因なのだろうか。ある出版関係者はこのように語る。
「あの特集は『現代』にとっても『ポスト』にとってもドル箱の特集でした。だから、時には10ページ近くもの誌面を割いたりもしていたのですが、ここ最近はあまり売上に貢献しなくなりました。最近はむしろ『飲んではいけない薬』『やってはいけない手術』系の企画の方が人気です。これも両誌とも熱心に取り組んでいる企画ですね。とはいえ、『死ぬまでSEX』にもまだまだ愛読者はいますし、そんななか、『現代』がこの特集に距離を置くようになったことで、『ポスト』はもう一度この特集に力を入れることにしたみたいですね。それであのような檄文が生まれたようです」
今後この論争はどんな展開を見せるか、生暖かい目で見つめていきたい。
(田中 教)
最終更新:2017.11.12 01:58
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