奴隷労働に耐えられず失踪者が続出…安倍政権の「外国人実習制度」改革に海外から「人身売買強化」の指摘が

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安倍晋三公式サイトより


「劣悪な労働環境と低賃金を強いる奴隷制度」と海外から非難を浴びている「外国人技能実習制度」。安倍政権はこの忌まわしい労働システムをあろうことか一気に拡大させるべく、来たる9月の臨時国会で制度改正案の成立を目指して躍起になっており、外国人を酷使するブラック企業が全国にまん延しかねない状況にあるという。政権の目論みを大手新聞社政治部デスクが語る。

「安倍首相は『一億総活躍社会の実現』を謳い文句に、女性と高齢者を活用すると言い出しているが、加速する生産人口の減少にはとても追いつかず、政府目標の“GDP600兆円”はとうてい達成できない。実際、自動車メーカーの組立工場をはじめ、造船や被服メーカーの工場に日本人工員はなかなか集まらず、生産体制を維持できなくなっている。そこで、日本経団連の要望を受けて、外国人技能実習生の大幅な受け入れ拡大を目論んだわけだ」

 改正案は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」。先の通常国会に提出済みで、継続審議中だ。この法案、実習生の受け入れ団体を許可制とし、悪質な業者は許可を取り消すと明示しており、一見すると実習制度の監視強化にみえる。だが、これはまやかしらしい。実習制度に詳しい大学教授はこう語る。

「現行制度でも受け入れ団体の取り消しが次々と行われているから、制度をいじる必要はないんです。実は、法案の隅っこに『技能実習制度の拡充』と書いてあり、実習期間を最長3年から5年まで延長できることになっている。狙いはズバリ、受け入れ拡大だよ。しかし、安倍政権は海外の反発を招かないよう、ネーミングを変えて法案成立を狙うという姑息な手段に出た。これが功を奏したのか、大手メディアはこの受け入れ拡大の狙いについて一切触れようとしておらず、“監視強化を目的とした好ましい制度改正案”などととんでもない報道ばかり繰り返しています」

 外国人技能実習制度といえば、発展途上国の人々が日本国内の製造工場や第一次産業の現場で働きながら日本の職業技術を学ぶ「国際貢献」の一つとされる。しかし、これは建前に過ぎない。その実態といえば、国内の労働力不足を穴埋めするための安価な労働力になっており、劣悪な労働条件に晒されている。

 実際、この制度については、海外から「強制労働」との指摘の声が上がっている。たとえば、米国の国務省人身取引監視対策部の直近のレポート「2015年人身売買報告書」は、こう喝破している。

〈本来の目的である技能の教授や育成が行われない仕事に従事させられ、中には依然として強制労働の状態に置かれている。職を得るために最高で1万ドルを支払い、実習を切り上げようとした場合には、数千ドル相当の没収を義務付ける契約の下で雇用されている。技能実習生のパスポートやその他の身分証明書を取り上げ、技能実習生の移動を制限する雇用主もいる〉

 この報告はけっして極端なものではなく、実態をかなり正確に指摘していると言えよう。実は、この制度を利用して来日した実習生がこの劣悪な条件に堪えられず、大量の失踪者となっている現実があるのだ。

「政府統計によると、昨年末現在で、20万人近い実習生のうち1年間で6000人が実習先から失踪し、不法滞在者になっている。こんな実態がありながら、制度改正してさらに受け入れを図ろうというのだから、開いた口がふさがりません」(前出・大学教授)

 しかも、外国人実習生が劣悪な労働条件に晒されていることや、失踪した事実も知らされていない自治体が山ほどあるようだ。

 外国人実習生の受け入れはすでに全国的に広がっている。先月報じられた共同通信の調査結果によると、外国人技能実習生を住民登録している自治体は1240市区町村に上り、全国の80%近くに上る。ところが一方で、全体の42%の市区町村が技能実習生の待遇改善を要望しているという、なんともちぐはぐな結果になっているのだ。

「ほとんどの自治体に外国人実習生が住民登録されているのに、肝心の実習生は受け入れ企業が囲うようにして借り上げアパートなどに住まわせているから、どんな暮らしぶりなのか、自治体側はさっぱり分からないようだ。技能実習生がひどい処遇を受けていると噂で聞き及んでも、なかなか手出しできない状況にあり、困惑ばかりが広がっています」(前出・大学教授)

 国内にいる実習生の労働条件や人権を守る施策が最優先課題なのに、安倍政権はこんな状況下で、実習生をどんどん増やそうとしているのである。

 先に紹介した米国の国務省人身取引監視対策部のレポートは、安倍政権がいま進めている制度改革が「まやかし」であることもはっきり指摘している。

〈日本政府は包括的な見直しを行うとともに、強制労働の加害者を処罰する能力を有する第三者管理・監督機関を設置し、移住労働者の救済制度を改善する改革法案を国会に提出した。しかし、政府は、法の大きな欠缺を埋め、それにより人身取引犯罪の訴追を推進するという法整備や制定は行わなかった。労働搾取目的の人身取引の申し立てにもかかわらず、政府が訴追または有罪にした強制労働の加害者はいなかった。2013年以降、訴追および有罪判決の総数は減少した〉

 ところが、日本の大手メディアはこうした実態を無視し、技能実習制度の見直し論議にまともに与しようとしない。政権はもちろんだが、マスコミまでが戦前並みの国益重視、人権軽視体質に戻りつつあるということだろうか。
(小和田三郎)

最終更新:2016.08.20 06:59

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