自民党が密告フォームで集めた反戦教師情報を警察に提供、大分県警は野党の施設を監視…自民党=警察一体の監視社会に

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自民党HPより


 この国はもうすでに、中国や北朝鮮のような弾圧国家になったのかもしれない──。そう感じずにはいられないニュースが立てつづけに起きている。そのひとつが、自民党がホームページ上に設けた「学校教育における政治的中立性についての実態調査」のその後だ。

 本サイトでも伝えてきたように、自民党は先月の参院選公示直前に“「子供たちを戦場に送るな」と主張することは偏向教育、特定のイデオロギーだ”と糾弾し、そのような学校や教員の情報を投稿できる“密告フォーム”を設置したのだ。このページの存在が問題視されはじめると、自民党は一度ページを削除したが、その後、「子供たちを戦場に送るな」という部分を「安保関連法は廃止にすべき」に修正。それもまた批判を浴びると、安保法制についての文言も削除した。だが、7月19日未明まで、この“密告フォーム”は設けられたままだった。

 そして、問題はこのあと。なんと今月1日に自民党の木原稔・党文部科学部会長(5日、内閣改造で財務副大臣に起用が決定)は、“密告フォーム”に寄せられた情報について「公選法違反は警察が扱う問題」などと述べ、情報の一部を警察当局に提供する考えを示したのだ。

 つまり、教員が「子供たちを戦場に送るな」と言う当たり前のことすら糾弾し、監視によって教育現場を統制しようとしただけでなく、選挙中であったことを盾に公選法違反として捜査対象にしようというのだ。

 しかも、この警察への情報提供問題を大きく取り上げた大手メディアは皆無。そればかりか、“密告フォーム”問題自体を読売新聞と産経新聞は一度も報じず、読売にいたっては、名古屋市立中学校の男性教諭が「与党の自民・公明が議席の3分の2を獲得すると、憲法改正の手続きを取ることも可能になる」「そうなると、戦争になった時に行くことになるかもしれない」と発言したことが問題となって謝罪したというニュースを先月13日にウェブ版に掲載。“偏向教師がいる”と言わんばかりに、この教諭を追及するトーンで記事にしたのだ。

 当然、こうしたメディアも相乗りした自民党の強硬姿勢に対して、今後、教育現場はさらに萎縮していくことは確実。密告を推奨し、警察に取り締まらせ、メディアも片棒を担ぐ──いったいどこの弾圧国家の話かと思うが、これがいま、日本でまさに起こっている現実なのである。

 さらに先日発覚したのが、大分県警による隠しカメラ問題だ。参院選の公示前の6月18日夜、別府警察署の捜査員が民進党や社民党の支援団体などが利用していた建物の敷地内にビデオカメラ2台を設置、この件には署長以下幹部もかかわっていたことが判明している。

 これは憲法が認める思想・信条の自由などを侵した人権侵害事件だ。しかも、自民党が警察と一体となって進めた監視活動であることはあきらかで、戦前の特高警察の復活と言うべき重大な事件である。だが、こちらもメディアによる追及は見られず、問題の大きさからは考えられないほど新聞でもテレビでもその扱いはきわめて小さい。

 このような自民党=安倍政権による、あからさまな思想の自由や基本的人権を無視した暴挙が行われても、メディアが沈黙するかぎり、問題が問題として認知されないまま、政治権力と警察権力が結び付いた監視体制はどんどん強化されていくだろう。そうなれば、人びとは政治的行動・発言をタブー視し、相互監視という密告社会が進んでいく。けっして大袈裟ではなく、わたしたちの社会や他者との関わり合い方そのものを、安倍政権は変化させようとしているのだ。
(水井多賀子)

最終更新:2016.08.08 11:15

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