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なべおさみのヤバい交友録第二弾! 暴力団や政治家だけじゃない、王貞治を手かざし治療、ハイジャック犯撃退…
『昭和の怪物 裏も表も芸能界』(講談社)
あの、なべおさみが新著を出版した。タイトルは『昭和の怪物 裏も表も芸能界』(講談社)。
ちなみに、なぜ「あの」か、というと、なべは昨年、『やくざと芸能と 私の愛した日本人』(イースト・プレス)という本を上梓。そのヤバい内容で、読者を驚愕の渦に巻き込んだからだ。
この本はとにかくヤバかった。タイトルにあるような、愚連隊のメンバーだった生い立ちや、ヤクザ人脈との関係を告白していたというのもさることながら、同書には、この世のものとは思えないなべの華麗な交友録と「裏の仕事」自慢がこれでもか、と書かれていたのだ。
当時、芸能界のドンだったナベプロ社長・渡辺晋氏を「お屋形様」と呼び、「陰の世界の任務」を課せられる。加賀まりこが布施明との子を宿して未婚の母になる決意を固め姿を消してしまったときには、つてを辿り隠れ家を探し当て、森進一が独立を画策すればそれを阻止する。
さらに、その活躍は政界にまで及んだ。
実はなべが最も親しく付き合っていた政治家、それは安倍晋太郎であった。ご存知、安倍晋三の父である。
ある日、なべは赤坂のお座敷で晋太郎から出馬要請を受けたという。しかし、なべは首を縦には振らず、同席していた「絵に描いた様な美人」を指さし、「彼女を立候補させれば?」と進言した。その「美女」は後に参議院選挙に出馬、そして大臣にまでのぼりつめた。その「美女」とは、元タカラジェンヌの扇千景だったのである。
なべと晋太郎のエピソードはこれだけではない。晋太郎からの依頼で金丸信と会い「すまんが、北海道に入ってくれんかね」と鈴木宗男の選挙協力を打診された話は驚愕だ。この依頼になべがOKを出すと、金丸は「(テーブルの)下へ手を出して!」「両手を広げて!」と言い、なべの広げた両手にドサッと選挙資金を差し出したのだそうだ。
いったいあんたは何者なんだ、と誰もが声をあげる内容だったわけだが、それから1年、新たな本が発表されたわけだ。しかも、タイトルは『昭和の怪物』である。いやがおうにも期待に胸は膨らむ、というものだろう。
ということで、ページを開いてみると、やはり、前回にも負けず劣らずの驚愕エピソードが綴られていたのであった。
まず、一つ目は、あの、世界の王貞治との逸話である。なんと、なべは王の病気をスピリチュアルパワーで治したのだと言う。事は、2006年、王の胃に癌が見つかり全摘手術を受けた年の終わり、12月30日に起こった。この病気の発覚により、王は7月に記者会見を開き福岡ソフトバンクホークスの監督業を休養していた。翌年07年1月の末には来シーズンに復帰できるか否かを球団側に告げなければならない状況だったが、06年7月に胃を全摘してから半年近くが経っても出術の予後が芳しくない。
そこで、手をかざすだけで病の気を消し去ることができる不思議な力の持ち主、なべおさみに「私を助けてくれませんか」とお願いに来たのである。王とは旧知の仲でもあるなべはその依頼を快諾。さっそくスピリチュアルヒーリングを施した。その結果、車椅子なしでは外出できないような状況だった王は完全復活。春のキャンプから監督復帰できるほど回復したのであった。
ただ、この超能力治療を施すと、相手の病の気がなべの身体に移ってくるため、彼の身体は大変なことになるという。王に治療を施した後、なべはリンパ癌や類上皮肉腫といった病に冒される。「余命は2年」と医師に言われるような絶望的状況にまで追い込まれるが、手術により奇跡的に寛解。それから今にいたるまで再発はないのだという。
前作とは趣が違うが、今回の本でもなべおさみ節は健在である。ただ、彼の「ヤバい」話はこれだけではない。なべが1974年の日航機ハイジャック事件に偶然居合わせているのは好事家には知られた話だが、本書ではこの時に機内で何が起こっていたかを詳らかに明かしているのである。なんと、なべはこの事件で人質救助作戦の指揮をとっていたのだった。
機内に異変が起きると、顔面蒼白なキャビンアテンダントが「助けてください!」「コックピットの状態を、聞いてきて頂けませんか!」と、なべに救いを求めてきた。まだ新人のCAはこの状況に対応できず、顔が売れていた自分を頼りにしたのではないかと彼は述懐している。
そこで彼は、腹に「スクリーン」「映画の友」の雑誌二冊を入れてコックピットへ向かった。「人間、首と腹さえ避ければ命は保てる」という考えからの防御策だった。だが、コックピット内の犯人と接触することはできなかった。そこで、なべは残された人質たちのケアに回る。
それから数時間が経過したが、日本政府と犯人の交渉はうまく行かない。よど号ハイジャック事件で得た教訓から、簡単には犯人の要求に屈しない態度を貫く日本政府は終いにはハイジャック犯を激高させてしまう。そして遂に犯人は「一時間に一人、乗客を殺して機長の窓から放り出す! いいか! 一時間に一人や!」という声明を出すにいたるのだった。
もう自分たちの力で犯人と戦うしかない。追い込まれたなべは、残りの乗客から義勇軍を募る。そこで手を上げた8人の男たち、「8人の侍」を中心に戦いが始まる。コックピット内の犯人に気づかれぬよう後部ドアを開け、そこから人質たちを脱出させる決死の計画を開始した。作戦は見事成功。事件も無事解決したのだが、飛行場のロビーに着き、駆け寄ってきた日航職員の言葉でなべはまたもや驚愕することになる。感謝の言葉を言われるのかと思いきや、彼の口から飛び出してきたのはこんな言葉だった。
「あなた、内側から飛行機のドアを開けましたね。脱出シュートの操作もしましたね。これは大きな過ちです。飛行機には飛行機の規約というものがあるんです」
「御存じないですね。国際航空法というものがありまして、あなたの行為はこれに明らかに違反するわけです。困りました。違反しておりましてね。民間人がドアを開閉をしてはならないと、きっぱり定められておるんです。これに当たるんです」
「そこで当社では、これをあなたの為に内分にしようと決めました」
「つきましてはそちら様も、この件に関しては、一切、口にしないと誓って頂けませんか!」
「とりあえず本日の記者会見には、出席を控えて頂きます」
この事件の解決の手柄が機長たちのものとなり、なべの功績が世間に伝わっていないのには、こんな裏事情があるとのことなのだ。やはり、なべおさみ、いろんな意味でヤバすぎる……。
本書のなかには、こういった話の他にも、美空ひばり、石原裕次郎、ハナ肇、谷啓、水原弘、勝新太郎、ジャンボ尾崎、落合博満といった、昭和を代表するスーパースターたちとの眩いばかりの交友録も綴られている。この年の瀬は『昭和の怪物 裏も表も芸能界』を読んで、この世のものとは思えないなべワールドに浸ってみてはいかがだろうか?
(新田 樹)
最終更新:2015.12.23 12:44
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