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パリのテロは日本も標的だった? 佐藤優も警告! 安倍政権と安保法制が国内にイスラム過激派テロを呼び寄せる
YouTube『AFPBB News』より
パリで発生した同時多発テロはやはりISの犯行だったようだ。日本時間14日夜、ISが犯行声明を発表、AFP通信は、劇場を襲撃した容疑者の一人が「オランド大統領のせいだ。シリアに手を出すべきではなかった」と叫んでいたという目撃者の証言を報じた。
フランス軍は2014年からイラクでISへの空爆を行っており、今年9月27日には、はじめてシリア領内でISに空爆を実施していた。ようするに、今回のテロはこうしたシリア内戦へのISの報復だということだろう。
しかもここにきて、今回の同時多発テロの標的に、日本も入っていた可能性が浮上している。昨日、本サイトではいち早く報道したが、日本食料理店が銃撃を受けていたことが明らかになったのだ。この件はフランスのフィガロやイギリスのデイリーテレグラフなどでも報じられ、かなり確度の高い情報と思われる。
昨日は日本食料理店への銃撃情報自体を「デマだ」と攻撃していたネットの安倍親衛隊たちは、こうした報道に今度は「なんでもかんでも安倍さんのせいにするな」「たまたま一帯の食い物屋が狙われただけ」と、躍起になってテロと安倍政権の関係を否定している。だが、本当に日本は今回のテロと無関係なのだろうか。
ISは今年1月、後藤健二さん、湯川遥菜さんの日本人2名を殺害した際、ビデオで安倍晋三首相を名指しし「勝ち目のない戦争に参加するというお前の無謀な決断のために、このナイフは後藤を殺すだけでなくお前の国民がどこにいようとも虐殺をもたらすだろう。日本の悪夢を今始めよう」と恫喝した。続けて、ISの機関誌「ダービク」電子版も2月12日に「安倍による思慮のない支援表明後は、すべての日本人と日本の施設が標的になった」とし、日本をもテロ攻撃の標的とすることを宣言している。今回の日本食料理店銃撃がこうした宣言を行動に移した結果である可能性は否定しきれないだろう。
しかも、今回のテロがどうであれ、パリ同時多発テロはけっして安倍親衛隊が言うような日本と無関係なできごとではない。
安保法制が強行採決されて自衛隊の中東派兵が現実味を帯びてきたことで、日本もこれから、ISなどイスラム過激派のテロの標的になるのは確実だからだ。それも海外の邦人にとどまらず、これからは日本国内で起きる可能性がある。
実際、あの元外務省分析官の佐藤優も池上彰との対談本『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』(文春新書)のなかで、イスラム過激派に関する国内テロについて、以下のように指摘している。
〈佐藤 (前略)日本で極端な思想をもつ人たちの受け皿が、かつてのような左翼過激派ではなく、イスラム主義になる可能性は十分にある。集団的自衛権で日本が中東に出て行った場合、向こうからすれば、イスラム世界への侵略だということになるわけだから、それに対する防衛ジハードとして、日本国内でテロが始まり得る。〉
この言葉を受けて池上は、「イスラム国の兵士の約4割が外国人、国籍は70か国以上」という問題を取り上げ、〈こうなると、二〇二〇年の東京オリンピック開催時の治安対策も、これまで以上に難しくなるかもしれません〉と答えているが、2020年というのは甘いかもしれない。
『イスラム聖戦テロの脅威 日本はジハード主義と闘えるのか』(松本光弘/講談社+α新書)によれば、〈テロリストは行動を通じて、世界と交信しようとしている。望むのは、「反応」を誘い出すことだ〉という。そのうえで著者は、〈(政府は)テロに対して強力、迅速に反応せざるを得ない。その反応がテロリストの味方コミュニティには、テロ・グループの存在と力の証明と映る〉と解説する。
事実、2005年にイギリス・ロンドンで起こった同時爆破テロにしても、発生日がG8サミット開催の当日であり、前日には2012年オリンピック招致が決まっていた。そのことを考えると、国際的な注目度が高く、厳戒態勢を敷くなかでテロを起こすことは“力の証明”になり得る。
そう考えると、やはり、安保法制によってISの敵国・アメリカとの同盟関係をさらに顕示した日本が、次なるテロのターゲットとなる可能性は極めて高い。2020年の東京オリンピックはもちろん、来年の伊勢志摩サミットなどもまた、テロリストにとって好ましい「反応」を引き出す、格好の舞台となるだろう。
多くの専門家もまた、ISによる邦人人質殺害事件以降、高まる国内テロの可能性について語っている。たとえば「SAPIO」(小学館)15年3月号の記事「アメリカのイラク戦争が生んだモンスター「イスラム国」は東京の駅・空港を狙う」では、危機管理論が専門の大泉光一・青森中央学院大学教授が、国内テロについてこう警告する。
「重火器の調達が難しいのでテロは起こしづらいという見方もあるが、日本で一般に入手できる薬物や黒色火薬で化学兵器・爆発物などを製造するのは十分可能。さらに、テロリストに国籍は関係ない。日本人や白人の若者がイスラム国に同調・加担する可能性を見るべき。そうした人物は日本国内にもいるし、海外から入国するのも容易い」(「SAPIO」3月号より)
同様に、「週刊ポスト」(小学館)3月6日号の記事「在日米軍と公安が警戒する「東京テロ」の“本命ターゲット”」では、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が現代テロリズムの手法についてこのように語っている。
「現在、テロの主流となりつつあるのが『ローンウルフ(一匹狼)・テロ』です。テロ組織を支持・信奉する個人や小人数の仲間内だけで計画。“本体”の組織とは接触せず、独自の判断でテロを実行する。また海外の過激思想に共鳴した国内出身者が起こすテロを『ホーム・グロウン・テロ』と呼びますが、最近はこの2つの特徴を併せ持ったケースが急増している」
「ローンウルフ型のテロリストはどこの国にもいます。通り魔犯的な犯罪者予備軍などがイスラム過激思想に感化され、テロリストに転じるケースも増える可能性がある」
ようするに、テロを行う側の技術的・人材的ハードルは、一般的に思われているよりもはるかに低いのだ。こうした現代テロ事情を踏まえても、やはり、次は日本でテロ事件が発生するのは時間の問題のように思える。しかも、状況によってはあの福島原発事故レベルの被害を、人為的に起こすことすら可能なのである。また、今年6月、東海道新幹線で男が車内に灯油を撒き焼身自殺し、女性1人が死亡した事件が示したように、爆破物による新幹線テロも十分に現実的なシナリオだろう。
いすれにしても、こうした危険性を飛躍的に増大させたのが、安倍政権の集団的自衛権と安保法制であることは間違いない。これは陰謀論でもなんでもなく、プラグマティックな外交戦術としても、安倍外交は明らかに時代遅れなのだ。
中東を専門とする国際政治学者で、イスラム国人質事件の際の的確な分析・論評が注目を集めた内藤正典・同志社大学大学院教授も『イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北』(集英社新書)で、まず、軍事力の行使や誇示は、対テロ戦争には役にも立たないどころか、さらなる危険を引き寄せるだけだと指摘している。
〈日本にとっても、イスラム戦争は他人事でも、遠くの出来事でもありません。国内では安倍政権が集団的自衛権を容認し、その行使を主張しています。中東・イスラム世界で想定されるのは、アメリカが自国に対するテロの脅威があるという理由で集団的自衛権の行使を同盟国に呼びかけ、日本もそれに呼応して派兵するケースでしょう。東アジアでアメリカに守ってもらうのだから、中東で恩返しをしなくては──もしそのような発想があるならば、日本にとってだけでなく世界にとって途方もない危険をもたらすことになるのです〉
〈日本で集団的自衛権の行使が議論され、海外への派兵の条件を緩和しようとしているさなか、世界の方が変わってしまったことに注意を向けなければなりません。日本が憲法にしばられて、自衛隊の海外派兵を躊躇している間に、軍事力の行使ではおよそ問題が解決しない方向に変わっていたのです。
特に、イスラム世界で起きている現在の混乱において、軍事力の行使は、紛争解決に貢献しません〉
〈非対称の戦争では、いったい、誰に向かって宣戦布告をし、誰が降伏文書に調印するというのでしょう。アルカイダを相手にしているときは、象徴的にビン・ラディンが宣戦布告の相手だったように見えます。しかしいまや、何人もの相手がいます。アルカイダのアイマン・ザワヒリも、タリバンのムッラー・オマルも、イスラム国のバグダーディもそうです。一人を殺害しても、また次が出てきます。しかも世界中から〉
では、いったい日本はどういう道をとるべきなのか。内藤氏が挙げるのは〈フィリピン政府と南部ミンダナオ島などを拠点とするムスリムの武装組織であるモロ・イスラム解放戦線とが和平への包括的合意に達した〉例だ。
2011年、両者の仲介を行ったのは日本政府で、JICA(国際協力機構)の緒方貞子氏やNGOが協力。〈少なくとも、武力とは無縁の国際協力が平和構築に有効であることを示しました〉という。
〈アフガニスタンのタリバンでさえ、日本が軍を派遣しなかったことを理由に挙げて、和解のための会議に来ました。同じなのです。武力で強そうに見せることで、日米同盟の絆の強さをアピールすることと、武力は使わないと宣言して、対立している勢力の間に立って信頼醸成につとめ、平和構築に向かわせることと、どちらが現実的でしょう。日本人をグローバル化したいのであれば、世界の状況に謙虚に向き合うべきです〉
だが、安倍政権は全く逆の方向を向いている。世界に向かって武力を誇示し、さらにテロを誘発するような外交戦略に次々打って出ているのだ。もしかすると、安倍政権はむしろ「テロ」を積極的に招き入れ、それを奇貨として、「緊急事態条項」を軸にした改憲世論を盛り上げるというシナリオを持っているのではないか。そんな陰謀論めいた不安さえ頭をもたげてくる。
前出の内藤氏は同書の中で〈戦争が犠牲者を生み出し、怒りと悲しみを増幅させることは、これまでに起きた世界大戦も、今のこの戦争も同じです〉と語っている。卑劣なテロ、戦争の広がりを食い止めるためにも、安倍政権の自己陶酔的外交を食い止めなければならない。
(宮島みつや)
最終更新:2015.11.17 01:04
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