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太田光が「年始にNHKで政治ネタやる」宣言! フジの安保漫才で噛んだリベンジ? 腰砕けを不安視する声も
TBSラジオ『JUNK 爆笑問題カウボーイ』公式サイトより
「あえて持っていくけどね、俺は」
先日13日、爆笑問題の太田光がラジオ番組『JUNK 爆笑問題カウボーイ』(TBSラジオ)でこのように発言し、話題を呼んでいる。太田が何の話をしたかと言うと、年末年始のネタ番組のこと。NHKのネタ番組に、「あえて“政治ネタ”を持っていく」と話したのだ。
というのも、今年の1月、同番組で太田は「(年始の)NHK(の演芸番組)に持っていった(ネタが)プロデューサーに却下されて」と発言。田中裕二も「今回、NHKのヤツは、政治家さんのネタがあるんだけど、全部ダメじゃん。アレは腹立ったな」と舞台裏を明かした。このことが「言論統制では?」と大きなニュースになったのだ。
しかし、そうして話題になると、今度は「(報道は)言論統制みたいなことになっちゃったけど、そんなことないですから」「アレに関して、ルール違反は俺らなんだよね」「ああいうことはよくあることで。NHKに限らずね」とフォローに走った。普通に考えれば、NHKであれ民放であれ、「政治ネタはけしからん!」と事前に止めさせるのはただの検閲ではないか?と思うが、当人たちはあくまで「自分たちが悪い」と事の収拾をはかった。
そんな流れがあって、今度は早くも「政治ネタをやる」宣言。──これはまるで、最近の太田の迷走ぶりを象徴するかのようだ。
たとえば、今年の4月初旬、ラジオで「安倍っていうバカ野郎」と言い放ち、太田はネトウヨから「不敬だ!」「名誉毀損罪にあたる」と総バッシングを受けたが、そのあとすぐに安倍首相主催の「桜を見る会」に参加し、安倍首相と仲良く一緒に写真におさまるという行動に出た。
さらに、安保法制反対デモには「そのやり方は通用しないんじゃないかなと」と苦言を呈し、政治的メッセージを発信するアイドル・制服向上委員会に対しても「あれ、やらされてるんだろうなぁ」「かわいそうだよねぇ」と嘲弄。しかも、安保法制が国会で可決されると「安保法案ってのが通ったことによって、僕は9条護憲派ですけど、憲法改正はうんと遠のいたと思ってるんです」と見当違いも甚だしい持論を展開した。
本サイトではすでに論じているが、今回の安保法制は9条の解釈改憲であり、9条は死文化されてしまった。だからこそ反対デモでは「立憲主義の否定だ」と叫びつづけ、制服向上委員会はその危機感をパフォーマンスを通して訴えていたのではないか。それをよりにもよって護憲派が「憲法改正はうんと遠のいた」などと言うのは荒唐無稽もいいところだ。
こんな杜撰な時勢の捉え方で、いまさら爆笑問題が政治ネタなどをやれるのか。当然、そんな不安も頭をもたげるが、じつは爆笑問題は9月26日に放送された『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ)で安保法制を取り上げた漫才を披露、安倍首相や、太田がその運動に懐疑的だったSEALDsをネタにしている。
この放送で大トリを務めた爆笑問題は、「最近のニュースでいちばん大きいのは、なんたって安保法案ですよ! 国会前のデモ、見ました?」「すっごいパワーね」「とくにあのSEALDsっていう、学生の集団の人たちがね」と言い、SEALDsのデモにおけるラップ調のコールを紹介した。その後の掛け合いはこんな感じだ。
太田「『集団的自衛権なんかいらない!』みたいな。そいで強行採決しそうになったら『ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん!』」
田中「ラッスンゴレライなんかやるわけねえだろ!」(中略)
田中「でも偉いよ。10代の子たちがね、『戦争法案反対』とかね『未来を守れ』とか言ってるわけですよ」
太田「未来を守れー!って言って、家帰ってSEKAI NO OWARIを聴いてる」
田中「関係ねえよ! それはいいだろ! アーティストの名前なんだから!」
そして、話題は安倍首相に移る。
田中「でもね、安倍総理をこういう世間のムードを察知したのかね、夏あたりやたらテレビに出て、国民の理解を得ようとしてね、あのフリップとかで、たとえ話とかでわかりやすく説明しようとしていたんだけど、余計わかりづらくなっちゃったんだよね」
太田「まず滑舌が悪い」
田中「それはいいだろ別に!」(中略)
田中「安倍さんにとっては安保法案っていうのは悲願なんですから」
太田「そうですよ。政治家としてのプライドとか心情をすべて賭けてるっていうのは演説にも出てましたね。『私には国民の命を守る義務がある!』ってね」
ここでの大オチは「って言ったあと、SP5〜6人囲まれて帰って行った。お前が守られてるじゃねえか!」というものだったが、この肝心なところで太田は噛んでしまったのだ。
そのため、ネタが終わると舌を出して「噛んじゃった」と弁解し、舞台裏でも「安倍総理の滑舌が悪いって言ったのに、俺が……。すいません、安倍さん」とカメラに向かって謝罪。さらに前出のラジオ番組でも「噛んじゃったどころの騒ぎじゃないよ。ボロボロだよ。ちきしょー!」と言い、その悔しさの理由をこのように述べた。
「とくに安倍さんの滑舌を茶化してるところだったから、俺が噛んじゃうと台無しになっちゃう。そのプレッシャーもあったの」
太田は「本当にイヤだ。俺、自分を本当に殺したい」とまで言い、心底後悔しているようだった。たしかにネタの肝で噛んでしまったことは大ミスだし、本人が悔やむのもよくわかる。
ただ、このネタをテレビでやったこと自体は、評価していいのではないか。たとえば、安倍首相がテレビに出演し集団的自衛権の行使をアメリカの火事に喩えて、その説明のバカバカしさと持参した模型の火事の煙が生肉にしか見えなかったことから、ネット上では「生肉総理」と壮大にからかわれていた。世間の目からすれば、あの喩え話はあらゆる面でツッコミどころが満載だったわけだ。
しかし、そんな“おいしいネタ”を、ワイドショーはもちろん、テレビで芸人たちが取り上げることはなかった。はっきり言って、安保法制の国会論議はネタの宝庫だった。昔なら、安倍首相のヤジ問題や、人間かまくらの強行採決、キャラ立ちが激しいヒゲの隊長のかまくらパンチ場面などはすぐさま笑いとして、漫才やコント、トークのネタとして重宝されていたはずだ。
だが、そんなことは今回、たった一度としてなかった。唯一、NHKの『LIFE!人生に捧げるコント』が、樹木希林をコントに登場させ、番組のキャラである宇宙人総理に対し、「総理大臣だからって何でも思い通りになると思ったら大間違いだよ」と安倍首相を暗喩するかのように言い放った場面くらいだろう。
政権に萎縮し、報道だけでなく笑いのネタとしてでさえ取り上げることをしない空気のなかで、安倍首相をネタの俎上に載せ、からかってみせた爆笑問題。──どうせならもっと盛大に国会の異常をネタにしてほしかったとも思わなくもないが、いまのテレビ、そして松本人志が象徴的なように権力に迎合する芸人たちが大勢を占めるなかでは、爆笑問題がこのネタをテレビで披露するのは重要なことだったのだと思う。
逆にいえば、大オチで噛んでしまうという失敗をしたネタでさえ評価に値してしまうという、それくらい笑いの世界の風刺は貧しい状況にあると言ってもいい。実際、今回、太田が「NHKで政治ネタをやる」と宣言したあと、田中自身も「(政治ネタをやると言ったものの)俺ら、出なかったらすごいよね(笑)」と言い、出演見合わせのような事態になる可能性を示唆している。
本サイトは太田の“変節”を苦々しく取り上げてきた立場だが、政権批判を行っただけで「偏っている!」などと声があがる不健全な状態を打開するためにも、ここは爆笑問題にがんばってほしいとエールを送っておきたい。
(大方 草)
最終更新:2015.10.25 11:15
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