有村vs蓮舫の国会論戦でも判明!安倍内閣の女性政策は専業主婦奨励!?

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有村治子ホームページより


「有村大臣はエッセーに『共働きの両親の子供は数十年後におかしくなる』と書いている」
「有村大臣が副会長を務める団体は『主婦が働くことで夜遅くまで預けられる子供が増え、社会を殺伐とさせる』と主張している」


 7日の参院予算委員会で民主党の蓮舫議員が、安倍内閣の有村治子女性活躍担当相をこう追及した。有村議員は「そんなことは書いていない」「それは団体の主張で、私の考えと一致するわけでない」と強弁したが、まったく説得力はなかった。

 本サイトでも指摘したように、有村議員が一貫して「赤ちゃんの時は肌を離すな」「子どもは母親の側で育てるべき」といった復古的な子育て論を主張してきたのはまぎれもない事実だ。

 また、女性の社会進出を否定する日本会議系の「日本女性の会」の副会長をつとめ、“子どもを産んだら傍にいて育てないと発達障害になる。だから仕事をせずに家にいろ”と強要するトンデモ理論「親学」を推進する親学議員連盟にも所属している。

 こんな議員を女性活用政策の要である担当相に就かせているというだけで、安倍首相の女性問題に対するスタンスがよくわかるというものだが、ひどいのは人選だけではない。女性問題への無理解は政策にもあらわれている。

 そのひとつが、「育児休業3年」制度だ。 現在最長で1年半の育児休業が倍になるというこの制度は2013年に安倍首相自ら、少子化・女性の社会進出対策の目玉として「3年間赤ちゃん抱き放題」などとぶちあげたのだが、その内実はとんでもないシロモノだ。当の女性たちの間でも「3年育休」に対して多くの疑問の声が上がっている。

「現在でも育休を取るのは肩身が狭いのに3年も取ったら居場所がなくなる」
「そもそも企業が女性の雇用を控えてしまう」
「働くママを社会から隔離することにもなる」

 実際、企業が女性の採用を控えるのは確実な上、女性の側も第2子、第3子を作った場合、職場復帰へのモチベーションはかなり下がってしまう。専門家の間でも、この政策はむしろ専業主婦が増えるだけだ、という意見が大勢を占めているほどだ。

 また、それ以上に問題なのは非正規雇用の問題だ。そもそも育休が使えているのはほぼ正社員だけというのが現状で、非正規では育休どころか3年で雇い止めがはびこってる。そして、現在は女性の半数以上(57.5% 2013年7月データ)が非正規雇用である。そんな状況で3年育休が適用されてもなんの意味もない。
 
 今、重要なのは正規雇用の育休延長より、非正規でも産休・育休が確実にとれるような制度づくりなのに、安倍政権はそのことがまったくわかってないのである。

 いや、そもそも安倍政権は弱い立場に置かれている女性のことなど、まったく考えていないのだろう。延長の「3年」という期間も実は、「3歳児神話」に基づいているのではないか、という見方が有力だ。この「3歳児神話」というのは、ゼロ歳から3歳までは母親が側にいて育てないと子どもに悪影響をもたらすとする、科学的にまったく根拠のない俗説で、前述した有村議員が推進する「親学」などの基礎となっているものだ。ようするに、安倍政権は復古的トンデモ理論にもとづいて、母親を子どもの側にいさせるために延長を導入しようとしているのではないか、というのだ。

 そして、「3歳までは休めるんだから保育園はいらないだろう」との理屈で保育園を増設しない言い訳にするつもりではないのか、と。

 いずれにしても、日本に必要なのは、こうした現実を無視した教条主義的政策ではない。むしろ、フランスのように今の時代の価値観にもとづいた環境政策を勧めるべきだろう。

 フランスは女性の社会進出や子育てを支援する様々な法・環境整備を行っており、その結果、EUの中でもトップクラスの出生率と女性労働率の高さを誇っている。

『フランスのワーク・ライフ・バランス』(石井久仁子、井上たか子他編著/パド・ウィメンズ・オフィス)という本によれば、その基盤にあるのはワーク・ライフバランス、「男性も女性も、家庭、職業、市民的活動という3つの領域でバランスよく生活できること」だという。
 
 具体的に示していこう。まずはパートタイム労働の確立について。仕事と家庭の両立は女性の過度な家事労働に支えられているのはフランスでも同様だが、そのためにパートタイムという働き方が重要になる。そう聞くと「なんだ、日本のパートと同じじゃないか」と思うかもしれないが、全然違う。なぜならフランスはフルタイム労働とパート労働は全てにおいて“平等”であり、それが法律として確立されているからだ。

 パートはフルタイムに認められた権利を同等に享受できる。例えば報酬も正規雇用と比例的でなければならないし、有給休暇、社会保障、失業保険等についても同じ権利を持つ。もちろん育児休暇も取得できるし、勤務時間も書面契約し、その変更が解雇の理由にはならない。パートからフル(またはその逆)に移行する優先権があり、使用者は対応する空きポストを示さなくてはならない。

「要するに、パートタイムとフルタイムの違いは法的には労働時間数」だけなのだ。フランスのパートは日本のように不安定雇用ではなく、選択する働き方といえる。

 もちろん育休も充実している。出産休暇は産前6週、産後10週だが産前を産後に移行できるなど柔軟性も高い。賃金は出産保険などから手取りとほぼ同額が支給されるし、それは農業や自由業にも適用されるのだ。そのため日本の女性の半数近くが出産前に仕事を辞めるのに対し、フランスでは83%がそのまま仕事を続けることができるという。

 さらに保育制度も充実し、柔軟性に富んだ様々な制度がある。驚くことに「フランスでは3歳になると育児問題は解消する」らしい。

 子どもが3歳になると原則全員が幼児学校に入学できるが、これが無料! そして日本の幼稚園との大きな違いが「時間」だ。朝8時半から夕方4時半までと長い上、併用できる託児制度もあり夕方6時ころまで預けることができる。さらに3歳以下でもヌースリという家庭的保育者が子どもを預かってくれる。これは有料だがその半額は手当が支給される。それだけでなく無許可のベビーシッターにまで半額の手当が出るという。その他休みの日や夏期休暇でも子ども達が単独で参加できるプログラムが充実しており、このような公的支援によってママたちは安心して出産、子育て、仕事ができるという。

 働く女性、出産した女性に手厚い様々な政策がなくして、女性の社会進出や出生率の回復は望めない。だが日本ではこうした支援もなく「3年育休」などという女性の実情とは遠く離れた欺瞞がまかり通ろうとしている。だが、さらなる大きな違いがある。それが父親の権利だ。

 EUやフランスでは「男女が親としての責任をより平等に分かち合う」ため父親の育児参加を奨励している。父親休暇も義務化され、誕生後すぐの5日間と1カ月以内に5日を義務化して、給与はほぼ全額が認められる。そのため04年には3分の2の父親がこの休暇を取得しているという。その他にも両親が3カ月ずつ取れる両親休暇、誕生日休暇などもあり、農業や自由業、失業手当支給者など「すべての男性労働者」の権利でもあるのだ。

 男女問わず、育児は親としての当然の権利であり、義務。フランスではそうした考え方が浸透しているようだが、一方の日本はというと──。

 安倍首相の言う「女性の積極的登用」「子育て支援」にはこの観点が決定的に欠けていると言わざるを得ない。それは「育児は母親がするもの」という古くさい“保守オヤジ”の価値観が全面的に押しつけるもので、父親の積極的育児参加という観点など毛頭ない。もちろん日本でも09年に父親の育休取得を奨励する方策を取ったが、その取得率はわずか1〜3%ほどだ。女性の社会進出などと言いながら、子育てを女性だけに押し付ける政策と言える。

 さらに「3年育休」に輪をかけるのが働者派遣法の改正(悪)案だ。もしこれが成立すれば、企業が安く劣悪な条件で、派遣労働者をとっかえひっかえしながら半永久的に使えることになってしまう。

 要するに安倍政権の目指すも先は、女性を3年も家庭に押し込み、その後は安くて不安定なパートのおばさんとして働かせる。これでは女性の社会進出どころではない。企業や男性にとって有利なだけで、女性は男性を“永遠にサポート”する存在に貶められてしまうのだ。

 有村担当相の起用といい、実は、安倍政権の本音は女性の社会参画を阻止し、専業主婦を増やすことなのではないか、という気さえしてくるのだが、それはうがちすぎな見方だろうか。
(伊勢崎馨)

最終更新:2015.01.19 05:09

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