『アナと雪の女王』に泣いているのは長女だけ? 姉妹の微妙な関係

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『ディズニー アナと雪の女王 ビジュアルガイド』(KADOKAWA/角川書店)

 3月14日に公開されたディズニーのアニメーション映画『アナと雪の女王』。公開から約3カ月で1869万人を動員し、大ヒットとなっている。主題歌「Let It Go」の覚えやすく壮大なメロディーはもちろん、触るものを凍らせる魔力を持つ姉エルサと、そのことを知らずに姉に避けられていると思っていた妹アナが姉妹愛を取り戻していく姿は実に感動的だ。

 とはいえ、姉妹の仲がギクシャクしてしまうのはよくあること。そんな普遍的なテーマが、なぜここまでヒットに結びついたのだろうか。そこで今回は、『姉妹あるある』(レッカ社・編/カンゼン)を参考に、『アナと〜』で描写されていた“姉妹あるある”とヒットの要因を分析してみたい。

『アナと〜』にも描かれていたあるあると言えば、「妹は強引にでも姉と遊ぼうとする」。本書によると「妹はとにかく姉と遊びたい。『お姉ちゃん、遊ぼう。ねえったら〜』と強引に引っ張っていきます。姉は渋々それに付き合うも、最終的には自分のほうが夢中になってしまい、妹を泣かす……というパターン」とある。まさに映画の冒頭にある2人の幼少のシーンでは、まだ夜中にもかかわらず目が覚めてしまい、強引に姉エルサを起こして遊ぼうとするアナの姿が映し出される。エルサの魔法の力を使って雪だるまや氷で遊ぶうちに、誤ってアナに魔法がかかってしまい、助けるためにアナの記憶が消され、姉妹がボタンを掛け違う原因になってしまう。

 たいていの場合、どちらかが強引に始めたことはいい結果にならないことを両者とも薄々気づいているものの、妹が懸命に誘う姿はかわいらしい。劇中でも、アナのチャーミングな笑顔にエルサも誘いに乗ってしまうのだ。妹が生まれながらの小悪魔キャラというにも姉妹あるあるのひとつなのだ。

「彼氏ができたときは、姉妹に紹介するのが一番」というのも、あるあるのひとつ。アナは、エルサの戴冠式で出会った男性と恋に落ち、その日のうちに結婚の約束までしてしまう。そして、彼をエルサに紹介すると、エルサは結婚は認められないと冷たくあしらう。本書でも「だめんずに捕まったときは、歯に衣着せぬ意見が炸裂。聞く耳を持つかは本人次第……」とあるが、アナの恋の行方は……?

 そして大ヒットの要因に関連するのが、「お姉ちゃんは傘。わずらわしいけれど、困ったときは助けてくれる」。このあるあるが示す通り、今まで姉妹といえば、「しっかり者の姉」と「奔放な妹」の組み合わせが一般的なイメージだった。劇中でも途中まではこの方程式に乗っ取って物語が進んでいったが、終盤にはそれがひっくり返される。エルサは魔法の力を持つ「ありのままの自分」を解放し、アナはそのままのエルサを愛するように。ここで“助けられた”のは奔放な妹ではなく、しっかり者の姉のほうなのだ。このように、姉や妹といった“役割”を乗り越え、互いを認め合う2人の姿が人々の心を打ったのではないだろうか。

 随所にあるあるを散りばめ共感を呼びつつ、最終的には「姉だから」「妹だから」といったネガティブな偏見を壊して、新しい価値観を打ち出した『アナと雪の女王』。こう考えると、大ヒットを記録したのは当然なのかもしれない。
(江崎理生)

最終更新:2014.07.05 03:04

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