オードリー若林正恭が訴えた新自由主義的な日本社会への違和感「休みなく働くことが褒められる社会はおかしい…」

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競争社会以外で生きる術を見つけるため若林正恭はキューバに向かう

 2013年に出版された若林のエッセイ集『社会人大学人見知り学部 卒業見込』(KADOKAWA)でも、当時のつらさを物語る、こんなエピソードが綴られていた。

〈ようやく仕事が増えて良かったね。八年間耐えた甲斐があったね。なんてムードだったので口が裂けても「休みたい」なんて言える空気じゃなかった。「仕事増えて良かったねー」「でも、今が今後生き残れるかどうかの大事な時期だよ!」と応援してもらっていた。
 そんな中少し変わった面白い人たちもいた。とあるグループアイドルでかつて一世を風靡しまくった方と、ひょんな流れで大阪で偶然タクシーに一緒に乗ることになった。ぼくらは緊張して黙っていると「今、全然楽しくないでしょ?」とその人は聞いてきた。「いえ、そ、そんなことないです」と言うと、「真面目だなー。わたしは全然楽しくなかったなー」と投げ捨てるように言う。それから一番忙しかった頃の話をしてくれて、宿泊先のホテルのロビーに着くと「大人にいいようにされちゃダメだよ。がんばって」と言って自分の部屋に向かうエレベーターに乗り込んで行った。「ぼくらもだいぶ大人なんだけど」と思いつつ、そういうふうに応援してくれる人もいるんだな。と嬉しかった〉

 若林は来月『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』(KADOKAWA)という本を出版する予定だ。この本は、過剰な競争を強いられて消耗していく人が後を絶たない日本社会に疑問をもった彼がキューバを訪れ、改めて自分や自分たちの社会について見つめ直すという内容だという。

 若林がそのように、過重労働、拝金主義、厳格な縦社会といった日本社会の理不尽な慣例に対して疑問を抱く背景には、20代のほとんどを風呂なしアパートで過ごした長い下積み期間を経て、ブレイクしたらしたで今度は過重労働で心を壊しかけ、テレビで欠くことのできない中堅芸人となったいまでも厳しい競争にさらされているという、芸人としての彼の人生が関係しているのは間違いないだろう。

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