あの『日本会議の研究』が出版差し止めに! 過去の判例無視、「表現の自由」を侵す裁判所の不当決定の裏に何が?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 はっきり言って、ありえない決定だろう。たかが一箇所、真実性が証明できない記述があるだけで、出版物の販売を差し止めるとするのは、憲法で保障された表現・報道の自由および読者の「知る権利」を著しく損ねるもので、あきらかに行き過ぎである。

 過去の事例を見ると、たとえば2007年には、田中真紀子(当時・衆議院議員)の長女が、自身の離婚について報じた「週刊文春」(文藝春秋)の記事がプライバシー権を侵害するとして申し立て、地裁が同誌出版前に差し止めの仮処分決定を出したことがあった。この決定には、日本雑誌協会、出版労連、日本ペンクラブが抗議声明を出すとともに、言論界からリベラル派、保守派を問わず大きな批判の声があがり、文藝春秋が抗告した高裁は「記事はプライバシー侵害だが、事前差し止めを認めなければならないほど重大な損害を与える恐れがあるとは言えない」として決定を取り消している。

 最近では、百田尚樹氏の『殉愛』の記述をめぐって故・やしきたかじんの娘が起こした名誉毀損裁判も記憶に新しい。この裁判では、長女が発行元の幻冬舎に出版差し止めを求めたが、東京地裁は4件でプライバシー侵害と名誉毀損を認めたものの、差し止めに関しては「頒布することで原告が被る不利益は大きいが、事後に回復するのが著しく困難と認められない」として棄却している。つまり、百田氏による記述のデタラメさこそ認定したが、それでも出版差し止めという表現の自由の剥奪には至らぬと配慮したのだ。

 出版物の差し止めが、このように通常よりかなりハードルが高く設定されているのは、もちろん、その濫用が近代民主主義の根幹である表現の自由を侵す可能性があるからだ。損害賠償や訂正・おわびの掲載などと違って、出版物の頒布・販売を禁止するというのは、下手をしたら国家による「検閲行為」につながりかねない。

 そういう意味では、今回の『日本会議の研究』についてただ一箇所の記述のみで差し止めを決定したことのほうがむしろ、異常事態なのだ。

 事実、同書には、これまでの裁判所の基準で出版差し止めにあたるような要素はまったくない。出版差し止めの判例としては1986年の「北方ジャーナル事件」が知られ、「もっぱら公益を図る目的でないことが明白であること」と「被害者が重大にして著しく回復困難な被害を被るおそれがあること」が、その後の差し止め判決でも大きな基準とされてきた。『日本会議の研究』のケースでは、第一に、安倍首相をはじめとする現役政治家の多くが日本会議の議連に参加し、関連集会などに出席していることから、同書の公益性は自明である。また、日本会議の源流を探るうえで、個々人の政治活動家について言及することもまた、公益を図るものとして当然、認められるべきものだ。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

日本会議の研究 (扶桑社新書)

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

あの『日本会議の研究』が出版差し止めに! 過去の判例無視、「表現の自由」を侵す裁判所の不当決定の裏に何が?のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。安倍政権改憲日本会議生長の家編集部の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 菅政権「成長戦略会議」恐怖の顔ぶれ! 竹中平蔵、三浦瑠璃、アトキンソンも
2 欠陥だらけ GoToイートの背景に菅首相と「ぐるなび」会長の特別な関係か
3 二階幹事長はリアル『半沢直樹』? 日本航空がらみの土地取引疑惑も
4 甘利明、下村博文、高橋洋一、橋下徹も……日本学術会議攻撃のフェイク
5 杉田和博官房副長官「公安を使った監視と圧力」恐怖の手口!
6 大阪都構想住民投票に58億円 吉村知事「イソジン会見」の裏側も発覚
7 中曽根首相「1億円合同葬」強行、教育現場に弔意強要 「前例踏襲」の嘘
8 ホリエモン擁護のロンブー淳が「切り取り」反論も…発言はもっと一方的
9 通販生活が「左翼だ」攻撃を一蹴!
10 「日本学術会議」任命拒否問題で平井文夫、志らく、橋下徹、八代英輝が…
11 竹中平蔵が「収入が上がらない」という悩みに童貞差別的説教
12 菅首相が山口敬之氏への資金援助を親密企業「ぐるなび」会長に依頼か
13 小倉優香の番組中「辞めさせてください」の本当の理由は番組のセクハラ
14 菅首相は消費増税をするつもりだ!内閣官房参与に増税主張エコノミストを抜擢
15 橋下徹が都構想で使った詐術を検証!
16 中曽根康弘「慰安所つくった」証言と「土人女を集め慰安所開設」文書
17 エイベックス松浦会長が「安倍さんでなくて菅さん」
18 自殺した赤木さんの妻が『バイキング』生放送中にLINEで…
19 菅政権で「公費不倫」の和泉洋人首相補佐官が“再任、官邸官僚のトップに
20 デジタル担当相・平井卓也は電通と組んでネット情報操作を始めた張本人
1杉田和博官房副長官「公安を使った監視と圧力」恐怖の手口!
2欠陥だらけ GoToイートの背景に菅首相と「ぐるなび」会長の特別な関係か
3「日本学術会議」菅首相が会見を開かずグループインタビューで批判封じ
4菅首相は消費増税をするつもりだ!内閣官房参与に増税主張エコノミストを抜擢
5大阪都構想住民投票に58億円 吉村知事「イソジン会見」の裏側も発覚
6 中曽根首相「1億円合同葬」強行、教育現場に弔意強要 「前例踏襲」の嘘
7甘利明、下村博文、高橋洋一、橋下徹も……日本学術会議攻撃のフェイク
8「日本学術会議」任命拒否問題で平井文夫、志らく、橋下徹、八代英輝が…
9日本学術会議への不当人事介入は安倍政権時代から始まっていた
10菅首相 学術会議の推薦名簿を「自分は見ていない」とトンデモ発言
11菅首相と河野太郎行革相が学術会議を「行革対象」にして違法人事介入を正当化
12菅政権「成長戦略会議」恐怖の顔ぶれ! 竹中平蔵、三浦瑠璃、アトキンソンも
13二階幹事長はリアル『半沢直樹』? 日本航空がらみの土地取引疑惑も
14ホリエモン擁護のロンブー淳が「切り取り」反論も…発言はもっと一方的
15田崎史郎が『ひるおび』共演・柿崎首相補佐官就任で不機嫌に!

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄