今日が命日…忌野清志郎の「表現の自由を奪う圧力」との闘い、そして憲法9条への美しすぎるメッセージ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 しかし、シングル発売の2週間前、清志郎は当時所属していた東芝EMIの重役から呼び出されシングルおよびアルバム発売中止の通告を受ける。そして、朝日、毎日、読売の朝刊に「素晴らしすぎて発売出来ません」というキャッチコピーとともに発売中止が発表されることになる。その理由について詳細は明かされなかったが、以下のような収録曲の歌詞に対し、親会社である東芝からEMI上層部に圧力がかかっていたというのが通説だ。言うまでもなく、東芝は原発プラント企業である。

〈何言ってんだー/ふざけんじゃねー/核などいらねー〉(「ラヴ・ミー・テンダー」)
〈熱い炎が先っちょまで出てる/東海地震もそこまで来てる/だけどもまだまだ増えていく/原子力発電所が建っていく/さっぱりわかんねぇ 誰のため?/狭い日本のサマータイム・ブルース〉(「サマータイム・ブルース」)

 かなり直接的な歌詞だが、RCサクセションというバンドは、それまで政治的なメッセージを掲げているバンドではなかった。それがなぜ原発や核に関する歌を歌うことになったのか。その理由について、彼は後にこのように語っている。

「70年代の途中から、反戦歌とかメッセージソングっていうのが一挙になくなったじゃないですか。で、フォークなんかもどんどん軟弱になってって、そのまんま延々きちゃったでしょ。ふと、それはおかしいと気づいたんですよね」
「外国ではスティングがレーガン大統領のことを名指しで歌ったり、とかいうことがたくさんあるのに、日本の音楽界はおかしいぞって思ったんですよね」(「Views」95年2月号/講談社)

 この発売中止騒動の後、アルバム『COVERS』は、発売を強く求めるファンの声に応え、キティレコードから発売されることになるが、この一件が、表現の自由を規制しようとする体制側に対する清志郎の反骨精神に火をつける。それがかたちとなったのが、この直後に結成された覆面バンド・タイマーズだ。タイマーズというバンド名は、「大麻」と「タイマー」をかけたダブルミーニングなのだが、その名前が生まれたのは『COVERS』騒動のあと行われたレコード会社側とのある会議がきっかけだった。

〈「じゃあ、今後、なにとなにを歌っちゃいけないのか、きちんと教えておいてほしい」と清志郎は単刀直入に聞いた。
「原発のこと、そして天皇を侮辱するようなこと」
 と、東芝の人間は答えた。
「あ、そうですか。じゃあ、マリファナのことは歌ってもいいんですね」と清志郎が言うと「いいですよ」という答えが返ってきたという〉(「週刊プレイボーイ」99年10月19日号/集英社)

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

瀕死の双六問屋 (小学館文庫)

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

今日が命日…忌野清志郎の「表現の自由を奪う圧力」との闘い、そして憲法9条への美しすぎるメッセージのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。圧力新田 樹の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄