あのマンガ家たちがマンガで伝える反戦メッセージ…水木しげる、山上たつひこ、松本零士から浅野いにおまで集結

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 それにたいして、不条理ギャグ漫画『がきデカ』で知られる山上たつひこの『光る風』は徹底的にシリアスを追求した傑作である。

 本作は1970年に描かれた著者渾身のディストピアSF。今回再掲されているのは、その一エピソードであるが、これが強烈。軍部と警察が肥大化した管理社会に、四肢切断の状態で戦場から帰還した軍国主義者がどのような末路を辿るのか……。

 正直、断片の一話なので物語の全体像は(呉智英氏の解説原稿を読まなければ)皆目わからないのだが、この圧倒的な描写に触れたら全編通して読みたくなるのは間違いない。筆者も最近復刊された愛蔵版を速攻ポチってしまった。

 作家によって「戦争」への視点は様々。なかでも現代的な感覚を糧にアプローチしている作品が多くて興味深い。

 たとえば、さそうあきら「菜々子戦記」は、現代に生きる「おバカちゃん」の女子高生が、家族の歴史を通じて戦争という過去への意識に目覚める話。聞きかじりで韓国の悪口を言っていたら、隣にいた親友が実は在日韓国人だったというくだりがなんとも示唆的である。

 また、突飛だが、実際ありえなくもなさそうなのが、あまやゆうき+吉田史朗「僕はあの歌が思い出せない」。日本がどこかの国と戦争をしている近未来、自称アーティストのオタク青年がネットに投稿した動画が、いつのまにか戦意昂揚プロパガンダに利用され、影響を受けた若者が特攻で死にまくっている。しかしつくった当の本人は自分が加担したことに無自覚なまま。日常パートと戦場パートのタッチの違いがより皮肉さを増す力作だ。

 そのほか、スマホが物語の鍵となる浅野いにお「きのこたけのこ」や、高橋しんによる『最終兵器彼女』のスピンオフ「LOVE STORY, KILLED」なども極めてアクチュアルな戦争マンガになっている。これらを比べながら一度に読めるというのもこの企画ならではの体験だろう。

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