安倍晋三と橋下徹の“独裁者コンビ”が持ち出す「民意」「多数決」の論理を疑え!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 だからこそ、多数決に代わる「性能のよい集約ルール」が必要だ。本書の副題は「社会選択理論とは何か」であるが、社会選択理論こそ、そうした可能性を探る学問分野である。

 本書ではいくつもの集約ルールを平易に紹介し、比較検討している。そのなかでとくに有効なものとして挙げられているのが、スロヴェニアの国政選挙やFIFAワールドカップの予選でも採用されている、ボルダルールという方式だ。

 これは、たとえば選択肢が3つあるとしたら、投票者は支持する順番に1位は3点、2位は2点、3位は1点とポイントをつけ、その総和が多い選択肢から勝利するというやり方である。

 ボルダルールでは、各選択肢を1対1で対決させたときに他のあらゆる選択肢に負ける選択肢、つまり先述の大統領選の例でいえば、ブッシュのような実質的には弱いのに、全体の多数決では勝者に見えてしまう候補者を排除できるメリットがある。

 細かく見ればボルダルールにも難点はあるのだという。だが、実は完全に合理的で民主的な集約ルールなどありえないのだ! そのことは、ノーベル賞経済学者ケネス・アローを筆頭とする論者たちが「不可能性定理」で数学的に証明しているのである。

 とはいえ、ボルダルールが多数決より圧倒的にマシであることには変わりない。ボルダルールでなくともいい。いますぐにでも公職選挙法を改正し、少しでも民意が反映される多数決以外の方法を導入すべきだ。

 ところで、本書は公職選挙法にからんで、きわめて重要な指摘をしている。

〈本来なら憲法は法律を上位から縛るものだが、公職選挙法が小選挙区制を通じて、下から第96条の実質を変えてしまっている〉

 現行の選挙制度では、小選挙区制(ないしは小選挙区寄りの区分け)の割合が大きいせいで、得票率が低くとも簡単に圧勝できてしまう。

 それをふまえると、憲法改正のための条件として衆議院と参議院のそれぞれで3分の2以上の賛成が必要だとしている憲法96条の縛りは「見かけ以上に弱い」。実際、自民党は直近の国政選挙で衆議院、参議院ともに半数以下の支持だったのも関わらず、それぞれ約76%、約54%の議席を獲得してしまった。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

安倍晋三と橋下徹の“独裁者コンビ”が持ち出す「民意」「多数決」の論理を疑え!のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。安倍晋三松本 滋橋下徹選挙の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄