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SKY-HIが共謀罪の強行採決を批判したラップ「キョウボウザイ」を緊急発表!安倍政権の本質をつく痛快な歌詞
SKY-HIツイッターより
もはや説明するまでもでないが、今月15日の早朝に共謀罪が強行採決された。公権力による法律の恣意的な解釈が横行する可能性や、「一般人」とはどの範囲の人を指すのかなど、不明点や問題点は山積みであったのにも関わらず、安倍政権はまともな議論に応じようともせず、国民の声を完全に無視して強行採決に踏み切った。加計学園をはじめとした、自身に降り掛かるスキャンダルを追及されないよう早く国会を閉めてしまいたいという一心で、後世の人々に多大な被害をおよぼしかねない「平成の治安維持法」をつくりあげてしまったのである。
もはやどう控えめに表現しても「安倍“独裁”政権」としか言いようのない国会運営には多くの文化人や芸能人からも非難の声が相次いだ。末次由紀(『ちはやふる』作者)、平野啓一郎、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、デーブ・スペクター、中原昌也、村本大輔(ウーマンラッシュアワー)、海野つなみ(『逃げるは恥だが役に立つ』作者)、会田誠、野田洋次郎(RADWIMPS)、ケラリーノ・サンドロヴィッチなど、ジャンルを問わず多くの人々がツイッターを通じ、共謀罪法案、および、安倍政権の強権的なやり方に対し疑義を表明。本サイトでもそれらをまとめた記事を配信している。
そのなかのひとりがラッパーのSKY-HI。AAAのメンバーとしての活動でも知られる彼は、14日夜、「共謀罪と特定秘密保護法が合わさることで治安維持法が再来する」といった趣旨のツイートをリツイートしながら、それは大げさな話などではないとツイートしていた。
〈規模の大きな話に聞こえるかもしれないけど、「そんな漫画みたいな事が出来てしまう」「する事でメリットがある人がいるとは考えられる」って時点で相当危ないわけで さすがに疲れ果ててもう寝るけど、起きたら採決されてるのかい…〉
SKY-HIは先月23日にも〈トランプ政権以降の国家間、人種間の軋轢や日本でも共謀罪の衆院通過とかなってくると戦争の気配は感じずにいられない〉とツイートし、かねてより共謀罪による言論抑圧や、戦争への危機感を訴えていたが、今月21日夜、そんな彼が驚きの行動に出る。
SKY-HIが共謀罪批判の新曲「キョウボウザイ」を突如発表
なんと、こんなコメントと共に、突如新曲「キョウボウザイ」をYouTube上にアップしたのだ。
〈新曲ビート打ってラップしました。Trap系のビートいくつか作ってるトライアル中。主張に関しては曲の通り…否定とか肯定も無くはないけど、それ以前に可決へのプロセスがあんまりすぎてDAMN.〉
「Trap」というのは、アメリカのヒップホップシーンではもはやすっかり定着したラップの一ジャンルのこと。ここ数年は日本でも広がりを見せていて、宇多田ヒカルの最新アルバム『Fantôme』に収録された楽曲「忘却」でフィーチャリングされているKOHHなどがその代表的なアーティストとして知られている。
SKY-HIによるその新曲「キョウボウザイ」はこのようなことが歌われていた。ちなみに、「Morning」や「国会」など、括弧で囲った部分は合いの手の言葉だ(合いの手を入れるのは最近のヒップホップのトレンドでもある)。
〈木曜日 朝4時(Morning)
国民的行事(国会)
色を変えた常識
説明ならば放棄
何らかの事情に
何らかの理想に
良い悪いの定規
それで作るなんてホント正気?(DAMN.)〉
本人がコメントで〈可決へのプロセスがあんまりすぎて〉と語っている通り、楽曲冒頭では法案の採決にいたるまでの過程を批判。共謀罪をめぐる国会運営で改めて浮き彫りとなった安倍政権の強権的な姿勢に異議申し立てをしている。そして、この後、ラップはさらに具体的なトピックに踏み込んでいくのであった。
〈燃えた家計簿に(加計)
火消しをするように
木で隠した森(Friend)
丸出しでソーリー
シンゾウには毛が生えて
舌の数は無尽蔵
HP残り36ポイント(支持率)
保護するのは秘密の方で
テロと五輪 歪なコーデ
組み合わせて出来た
それで治安維持しようぜ〉
「“心臓”と“晋三”」や「“Sorry”と“総理”」などダブルミーニングのオンパレードで、森友学園のことを「木で隠した森(Friend)」と表現するなど、ヒップホップらしい言葉遊びに溢れている。
スキャンダルの火消しのための強行採決であったこと、安倍首相の答弁は嘘に嘘を塗り重ねていること、テロや五輪など後付けの理由が次々と付け加えられ何のための法律なのかさっぱりわからなくなっていったことなど、ここでラップされている主張はすべてその通りで、まさに「痛快」と言う他ない。
そして、1分40秒にわたる怒濤のラップで構成される「キョウボウザイ」は、最後、こんな言葉で締めくくられるのであった。
〈黙ってた方が良いか そうか
たまったもんじゃない〉
芸能人が政治の話をするのはタブーとされるルールにSKY-HIは異議
このラインは、言論の自由を著しく萎縮させ、「自主規制」を横行させる恐れのある共謀罪への批判であると同時に、ミュージシャンや俳優などが政治的な発言を行うと「芸能人風情が偉そうに語るな」と炎上を焚き付けられる風潮に対する異議でもあるだろう。
昨年6月、「FUJI ROCK FESTIVAL’16」にSEALDs(当時)の奥田愛基氏の出演がアナウンスされたことをきっかけとして、「音楽に政治を持ち込むな」という論争が起きたことは記憶に新しいが、彼はこういった日本社会の風潮に対し、ツイッターでこのように主張していた。
〈社会的な話をツイートしたり伴ってハッキリと意思を持った発言をすると、面白いくらい…時には軽く数万単位でフォロワーが減るんだけど、それは兼ねてから言われている「芸能人(って言葉も最早嫌いなんだけど)は政治、宗教、野球チームの話はしてはいけない」って話と繋がるのでしょう。〉
〈でもそうやって出来上がった日本のエンターテイメントがどんどん嘘や無味無臭になっていくのは面白くないし、第一もう古いとしか思えないから、自分は発言します。「海外のアーティストの様に…!」って訳ではないんだけど、クリエイティブの壁の前に存在する、意識の壁が気になってしまう〉
〈人前に立つ立場の人間が、まるで性器でも隠すかの様に自分の意思や主張を言わない、嘘でも良しとするってのは、違和感しか感じないし、少し話は逸れるけれど間違いや過ちを集団ネットリンチする姿勢も、アンチグローバルに感じるし、世界の成長から取り残される日本と単純にダブるのです。〉
〈本来、人前に立つ機会が多いミュージシャンやタレントこそ、明確に意思や主張を発言するのも、SNSがある以上そこに反映されるのも当然のことに思います。皆で予定調和の無味無臭な平均点を作る事と「エンターテイメント」は真逆でしょう本来。〉
当然のことながら、海外において「音楽に政治をもちこむな」などという馬鹿げた主張が横行することはない。今回、SKY-HIが行ったように、時事問題に対しラッパーが素早く反応し、ネットを通して楽曲を公開することは珍しいことでもない。昨年の大統領選挙中、エミネムがドナルド・トランプ批判を含んだ新曲「Campaign Speech」を突如発表し話題となったことを覚えている人も多いだろう。
ちなみに、SKY-HIは、5月31日にリリースしたばかりのシングル「Silly Game」でも、同調圧力や排他主義について言及したり、トランプ政権の強権的な政策について批判していた。
SKY-HI「音楽にするときだけ社会問題を話題にしないのは気持ち悪い」
実際、SKY-HIは「Silly Game」のプロモーションインタビューにて、日本の社会に蔓延する風潮についてこのように語っていた。
「人の生活って、何をやっても社会や政治と関わってるわけでしょ? こうして人と話すことだって社会活動だし。そもそも、社会に全く目が向かないことの方が不自然じゃないかな。良い悪いは別として、プライベートでは社会問題について話すでしょう? それなのに音楽にするときだけ話題に出さないというのは「何の漂白剤が効いてるんだよ」と感じて、気持ち悪い。」(ウェブサイト「MEETIA」より)
そして、これからの活動、具体的に言えば、次のアルバムについても、このように語っている。
「これだけ突っ込みどころの多い世の中に生まれたら、書くことなんて無数にある。逆にいまの時代に生きていて、音楽活動を通じてメッセージを1ミリも発することが無い人がいたら、皮肉じゃなく神経を疑います。何を感じて生きているんだろうと思う。超アーティストでテレビも見なければネットにも繋いでなくて、スタジオと家の往復だけで生活していて戦争のことも一切知らない、という人なら話は別だけど。
でも普通に生きていて、普通に音楽をやっていて、1パーセントもメッセージが出ないとしたら、それは嘘でしか無いでしょう? いまの時代、嘘はバレますよね。俺は、そういうフェーズに現代社会は入っていると思う。音楽をしている人間にとっては、いまは書くことがありすぎて終わらない時期なんじゃないかな。」(前掲「MEETIA」)
「キョウボウザイ」は、現在でもSNSを通じて拡散を続けている。彼の勇気ある表現に続くミュージシャンが多く現れることを願ってやまない。
(編集部)
最終更新:2018.10.18 03:59
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