年末特別企画 リテラの2017年振り返り

来年も安倍政権は明治=大日本帝国美化に邁進!慰安婦像に逆ギレ、アパホテル炎上、高須ナチ礼賛…2017歴史修正事件簿

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●ケント・ギルバートのヘイト本が大ヒット、講談社の担当編集者は

 歴史修正と差別主義は表裏一体の関係にある。数年前から問題になってきた“歴史修正・ヘイト本”ブームがようやく下火になりつつあるかに思えたが、今年は安倍応援団の元外国人タレント、ケント・ギルバート氏によるヘイト本『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)が約50万部の大ヒットを記録した。
 一見、他国の歴史的文化を論評するように見せかけ、実のところ事実を捏造しながら罵倒し、「それに比べて日本はなんて素晴らしいんだ」と持ち上げることで、国籍・民族差別を煽動する。あまりにお粗末だ。そもそも、タイトルに「儒教」と出てくるが、同書をいくら読んでもの儒教思想に対する深い分析などまったく出てこず、引用文献も一次資料はもちろん学術書も皆無で、あるのはネトウヨ系のタネ本ばかり。
 しかしケント氏は、なんの根拠も示さないまま「儒教に呪われた中韓の人間」「儒教の陰謀」などと言いっぱなしにして、〈「禽獣以下」の社会道徳や公共心しか持たないほどに落ちぶれた〉〈自尊心を保つためには、平気で嘘をつくのが韓国人です〉〈その病的なレベルについていえば、韓国人が世界一だと思います〉などというヘイトスピーチを連ねるのである。
 こんな悪質な差別本を大手の講談社が出版したこと自体クラクラしてくるが、しかも恐ろしいのは、同書の担当編集者が業界紙のインタビューで、「欧米人の書いた反中国・反韓国本だからこそ、特定の人たちだけでなく、多くの日本人に受け入れられたんでしょうね」などと、一切悪びれることなく、“読者ニーズがあったから売れたのだ”と開き直っていたことだ。 本来、出版文化の担い手であるはずの大手編集者が、“売れるから”という理由で歴史修正やヘイト本に手を出す。末期状態としか言いようがない。

●百田センセイのトンデモ歴史修正主義は健在

 ケント氏の『儒教に支配された〜』ほどではないが、ネトウヨ作家こと百田尚樹センセイの『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社)もベストセラーになった。
 同書は、朝鮮半島の紀行文から恣意的に引用したうえで、“未分化の朝鮮半島に文化を持ち込んでやったのは大日本帝国だ”などの虚説をもって歴史の歪曲を行うヘイト本。百田氏は〈(朝鮮)総督府は実質的に文字を持たなかった民衆に、ハングルを教育し、普及させました。つまり日本は朝鮮の国語を「奪う」ことはせず、むしろ「与えた」のです〉などと上から目線で主張しているが、これは完全なデマである。
 実際、朝鮮近現代教育・文化史や言語社会論を専門とする三ツ井崇・東京大学大学院総合文化研究科准教授も「総督府が初めてハングルを普及させた」というのは〈明らかな事実誤認〉と断じているように、ハングル小説の嚆矢と言われる許筠の『洪吉童伝』は17世紀初頭に成立しており、近代学校における朝鮮語教育も19世紀の終わり頃には始まっている(『朝鮮植民地支配と言語』明石書店)。
 余談だが、百田氏といえば今年、「中国を偉大な国と勘違いさせる「漢文」の授業は廃止せよ」なる文を「SAPIO」(小学館)5月号に寄稿した。言うまでもなく、漢文なくしては日本の文字文化もありえなかったわけで、この男の無知蒙昧ぶりにはほとほと嫌気がさすが、こうして他国の文化を罵って差別を煽動するのも歴史修正主義のバリエーションなのである。

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