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安倍首相が共産党・志位の「文化芸術の自粛補償」も立憲・枝野の「学生支援」も全部拒否、“Go Toに1兆7千億円”補正予算ゴリ押し!
衆議院インターネット審議中継より
本気で国民を見殺しにする気なのか──。全品回収騒ぎとなっている「アベノマスク」費用466億円のうち233億円を計上した2020年度補正予算案が、本日、衆院で可決・通過。野党が先送りを要求していた、新型コロナ収束後に実施するという「Go Toキャンペーン」に1兆6794億円を費やすという正気の沙汰とは思えない予算案を通したのである。
事態の収束など世界中の誰も見通せない状態であるというのに、収束後の観光や外食などへの消費喚起キャンペーンに約1兆7000万円も計上する──。当然、このトチ狂った予算案に野党は猛反発。だが、安倍首相は、どう考えても「いまやること」ではないこの予算案を、この期に及んで正当なものだと主張したのだ。
たとえば、きょうの衆院予算委員会では、日本共産党の志位和夫委員長が、医療現場へのさらなる財政措置や、「文化・芸術・スポーツは人間として生きていくために必要不可欠な酸素のような貴重なもの」だとしてイベント自粛にともなう補償を訴えたが、安倍首相はそれらをことごとく拒否。志位委員長は「Go Toキャンペーン」について「この非常事態のもとで収束後の事業に呑気にお金を付けている場合かと怒りが広がっている」と指摘。「収束後の事業につぎ込む予算が1.7兆円もあるのなら、まずは目の前の感染爆発、医療崩壊を止め、一刻も早い収束のために使うべき」と追及をおこなった。
だが、このごく当然の要求に、安倍首相はこんな反論をおこなったのだ。
「文化・芸術振興のための予算もですね、この『Go Toキャンペーン』のなかには入っているわけでありまして、こういう、まさに文化・芸術に触れようというキャンペーンもおこなっていくわけでございます。で、ありますから、いままさに厳しい状況ではございますが、この収束後について、いつ収束するのかってことについてはまだ確たることは残念ながらお答えできませんが、その後にですね、しっかりと、いま大変苦しい思いをしているみなさんにとって、将来の灯火となるような政策もしっかり示していく必要がある、こう考えているところでございます」
「将来の灯火」の前に自粛要請にともなう補償がなければ火が消えるだろ、と言うほかないが、ここまでバックアップをおろそかにしながら「Go To キャンペーン」の正当性のために文化・芸術を持ち出すとは、どこまでバカにする気なのか。
この人を食った答弁には、志位委員長もすかさず「収束ができたらね、そんなプレミア付けなくたって、みんな行きますよ!」とツッコミ。一時はTwitterのトレンドに「志位さん」というワードがランクインするほど注目を集めたが、じつは「Go To キャンペーン」に約1兆7000億円もの予算をつける一方で、安倍首相が拒絶した財政措置は医療・イベント分野だけではない。野党は早急に手立てが必要な問題への予算組み替えを提案したが、それをことごとく拒否。冷血な“他人事”答弁を連発しつづけたのだ。
安倍首相が「Go Toキャンペーン」を優先させる一方で、一体どんな支援策を拒絶したのか。そのひとつが、学生をめぐる支援策だ。
本日、一律学費半額などを求める要請書を野党議員らに提出した学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」によると、大学生・短大生ら1200人におこなったネット調査では、新型コロナの影響でなんと学生の5人に1人が大学を辞める検討を始めているという。そうしたなか、昨日の衆院予算委員会で立憲民主党の枝野幸男代表は、親から自立し学費と生活費をバイトで賄う学生や、家族を頼れない・協力を得られない学生が現状の制度では救えないこと、「雇用調整助成金」を受けられず解雇されている学生も数多いことを指摘。対策案として、「通常時では筋が悪いことはよくわかっている」と前置きした上で、バイトがなくなった学生が生活と学業を持続できるよう、例外的に「新型コロナで売り上げが半減以上した中小企業に200万円、個人事業主に100万円」を給付する「持続化給付金」を使えないか、と具体的に提案した。
だが、安倍首相の回答は、あまりにひどいものだった。
立憲・枝野代表の「学生への給付金」提案に安倍首相は雇用調整助成金をもちだし“雇用者が学生バイトに払え”
まず、安倍首相は「本年4月から開始した高等教育の修学支援新制度で学生生活の費用をカバーするために十分な給付型奨学金の支給をおこなうこととしている」「感染拡大などの影響を受けて家計が急変した場合には、それを加味した所得見込みで支援の判定をおこなう」と、枝野代表が“いまの制度では救えない”と指摘した現行の制度を説明しただけ。その上、こうつづけたのだ。
「雇用調整助成金についてはですね、学生アルバイトを含む不正規雇用もその対象としたところでございまして、ぜひ雇用者には、これを活用していただいて、えー、お願いしたいと、こう思っております」
「今般、創設した緊急小口資金の特例等ではですね、収入減少などにより返済が困難となった場合には、それを免除する仕組みを導入しておりまして、こうした特例等も活用していただくことが可能となっております」
枝野代表は“雇用調整助成金を適用してもらえずバイト先を解雇された学生がたくさんいる”と訴えていたのに、その話をまるっきりスルーして、「雇用者には活用してもらいたい」って……。だいたい、安倍首相も「雇用者には」と言っているように、勤め先から休業手当を受けるには、雇用者が助成金に申請しなくてはならない。その申請は煩雑でハードルがあまりに高いと批判されているのに、申請方法の抜本的な見直しもせず、安倍首相は「雇用者は活用して」と言うだけ。しかも、特例で免除されるかどうかもわからない「緊急小口資金」という“借金”を勧めたのだ。だいたいこれも世帯基準の制度であり、ここでも安倍首相は「親に協力を得られない学生を救えない」という訴えを無視したのである。
窮状に追い込まれた学生の事情を、欠片も想像しようとしない安倍首相──。実際、枝野代表の質疑後、「アベノマスク」問題を取り上げた同党の大串博志議員も、布マスク配布に充てられた466億円をやめて学生の生活援助など困っている人たちの支援に回すと舵を切ることこそが「総理としてのあるべき姿」と迫ったが、このとき安倍首相は、こう口を開いた。
「あの、学生のみなさん、アルバイトで学費を稼いでいるみなさんについてどう対応していくかってことは、もう午前中も議論させていただきました」
こうした冷酷さをあらわにしたのは、学生に対してだけではない。医療現場に対しても同じだった。
医療現場の生の声を紹介し補償を求める共産党・志位委員長の質問に安倍首相の答えは…
きょうの衆院予算委員会では志位委員長が、新型コロナ患者受け入れによる病院の減収が、杉並区の試算では月平均2億円にものぼることを指摘。医療崩壊を防ぐためにも、自治体任せではなく全額国が補償すべきと迫ったが、これに対して加藤勝信厚労相は、医療提供体制整備などに取り組む都道府県への交付金である「緊急包括支援交付金」(予算1490億円)があると持ち出した。
だが、これではあきらかに不十分だ。現在、新型コロナ患者の受け入れをおこなっている医療機関は全国で1200病院。月平均2億円の減収という杉並区の試算を考えると、減収分の補償には1カ月だけで2400億円かかるからだ。
そして、志位委員長は、この交付金だけでは「桁違いに足らない」とし、そもそも政府の医療費削減政策によって多くの病院が日常からギリギリの経営を迫られるなか、新型コロナ患者受け入れによる減収で倒産は必至だという悲鳴が全国から寄せられていると指摘。安倍首相に向かって、ある民間病院の院長から寄せられたメッセージを、こう読み上げた。
「日本という国は『高度な医療と素晴らしい健康水準を達成している』と言われてきましたが、こういった問題が起こると、ほとんどの病院が経営的にも人材的にもギリギリのところでやっていて、たちまちに崩壊モードになってしまうことがよくわかりました。それでも医療従事者は強い使命感をもって、命がけでがんばっています。そのときに政府が『お金のことは心配するな。国が責任を持つ。だから医療従事者は結束してがんばってください』と、強いメッセージを出してほしい。それがないと乗り切れない」
「お金のことは心配するな。国が責任を持つ」、そう安倍首相に言ってほしい──。この切実な訴えに対し、しかし安倍首相は、実感が微塵も感じられない覇気のない声で「最前線で感染と背中合わせのなか大変な努力をしていただいていることにあらためて感謝申し上げたい」「各病院の経営を圧迫しているのは我々も承知している」と言いながら、「そこで先程、加藤厚労大臣から答弁させていただいたように、緊急包括支援交付金として1490億円を計上している」などと、加藤厚労相がおこなった主張を同じように繰り返したのだ。
学生の窮状や医療現場から寄せられた悲鳴を、まるで「存在しない」かのように受け付けず、予算の組み替えを拒絶する。そして、いつになるのかもわからない収束後の「Go Toキャンペーン」の予算は「将来の灯火」などと必要性を主張して予算を通そうとする──。ようするに、安倍首相はいまだに国民が直面している苦難を何ひとつ見ようとせず、寄り添おうとする素振りさえ見せないのだ。
「野党は対案がない」は嘘! 党利党略で野党の現実的な提案もすべて拒否する安倍
今回の補正予算案には、野党が要求しつづけ、国民からの批判に耐えかねた安倍首相が一転して方針転換した一律10万円の現金給付の予算も含まれている。そのため、与党が野党からの予算組み替えの動議を拒否しても、早急な現金給付を求める野党は反発せず予算案の賛成に回り、衆院を通過するにいたった。だが、今回野党が要求した「持続化給付金」の倍増や、中小・小規模事業者等の賃料の支払猶予、「雇用調整助成金」の日額上限の引き上げ、医療機関などへの支援給付金の創設、そして「Go Toキャンペーン」事業の先送りによる歳出削減といった「対案」は、いずれも必要なものばかりだ。
普段、「野党は対案を出せ」などと言っている安倍首相だが、野党はこの間「対案」を出しつづけ、そのひとつが一律現金給付だった。そこからもわかるように、国民は「野党は対案がない」だのと事実を無視してバッシングしている場合ではない。「Go Toキャンペーン」に約1兆7000億円もの予算をあてようという国民をバカにしきった安倍首相の横暴に、国民は声をあげ、野党に代弁させ、安倍首相を動かさなければ、新型コロナではなくこの国の政治によって命が奪われかねない事態にあるのだ。明日にも補正予算案は成立する見通しだが、国民の怒りをしっかり突きつけなければならない。
(編集部)
最終更新:2020.04.29 11:44
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