室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第14回ゲスト 望月衣塑子(前編)

室井佑月と東京新聞・望月衣塑子、闘う2人の女が語った安倍政権の圧力、ネトウヨの攻撃、忖度メディア

2019.08.08 11:31
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室井佑月と東京新聞・望月衣塑子、闘う2人の女が語った安倍政権の圧力、ネトウヨの攻撃、忖度メディアの画像1
望月衣塑子氏(左)と室井佑月氏(右)(編集部撮影)


 室井佑月連載対談「アベを倒したい!」、今回のゲストは、安倍政権に飼いならされた新聞・テレビのなかで、孤軍奮闘を続ける東京新聞・望月衣塑子記者。菅義偉官房長官の記者会見で厳しい質問を投げかけ続けることですっかり有名になった望月記者だが、官邸から信じがたい圧力や嫌がらせが加えられ、ネトウヨたちも連日、口汚い言葉でバッシングを繰り広げている。しかし一方で、その圧力に怯まない姿勢、権力のチェックを続ける記者魂に称賛と応援の声がどんどん大きくなり、6月には、彼女の著書を原案とした映画『新聞記者』も公開され、異例の大ヒットになっている。

 かたや、ワイドショーで空気を読まず政権批判を続けている室井佑月も『新聞記者』を観て大感動!「望月さんにエールを送りたい」と、今回の対談が実現した。

 権力と闘い続ける2人の女が、安倍政権からの圧力やネトウヨの攻撃、そしてメディアの実態を語り合い、意気投合した最強対談。まずは前編をお読みいただきたい。きっと勇気が湧いてくるはずだ。
(編集部)

●テレビも映画『新聞記者』プロモーション拒否の裏にある噂が

室井 初めまして! 早速だけど映画『新聞記者』観たよ! 森友・加計問題や、伊藤詩織さんの事件とか、安倍さんが政権を握ってからの数々の悪事がてんこ盛りになっていた。内閣情報調査室の内幕も描かれていて。すごい面白かった。

望月 ありがとうございます。公開から1カ月ほどですが、配給会社によると動員33万人で、興行通信社の週末観客動員ランキングも3週連続トップ10入りしたそうです。

室井 知り合いの映画関係者も言ってた。政権を批判した社会派作品がここまで健闘するのは異例だって。でも、テレビとかあんまり取り上げてくれなかったんでしょ。プロモーションを拒否されたってリテラでも書いてあった。公開直後には公式サイトがサーバー攻撃にあったり。やっぱり、真っ向から安倍政権批判をして、官邸から睨まれている望月さんの原作だから、テレビとか完全に腰が引けたんだろうね。

望月 今回の映画宣伝はテレビではすごく難しかったと宣伝部の人も言ってました。それに加えて、参院選前に私が選挙に出るという噂が出回って。

室井 あっ、やっぱり。私も聞いた。望月さんが選挙に出馬するんじゃないかって話。そんな噂を聞いたから最初に絶対確認しておこうと思ってたんだ。そういう話、あったの?

望月 あるわけないじゃないですか。でも、宣伝部は、テレビ局から「望月さんが選挙に出るかもしれないから、取り上げるのはちょっと……」と難色を示されたと聞きました。

室井 映画の宣伝で露出してないなって不思議に思ってたけど、そんな事情があったのか。でも、それって宣伝を断る口実でしょ。安倍政権を批判する作品だから忖度マスコミ、特にテレビは取り上げたくなかったんだね。ただ、出馬に関しては望月さんは知名度も高くて、菅さん(菅義偉官房長官)と闘う女っていうイメージだから、野党系から結構声がかかっても不思議じゃないとは思う。もし声がかかっても、いまの立場を変えずに記者としてガンガン記事を書いて、声をあげ続けて欲しい。私も誘われたことあるけど「私、不倫するのとかなんとも思ってないんで無理です」って言って断った。逆に「出馬なんてことより先生のガールフレンドのひとりにしてください」って(笑)。

望月 ……(爆笑)。

安倍首相と会食を繰り返すマスコミ幹部の異常、菅官房長官とも

室井 でもさ、ちょっと有名になるとすぐに出馬の噂が出るのは心外だよね。私も仕事として表現者として、物を書くことを一生懸命やっているし、案外評価もされている。なのに、なぜ「議員になったらいいじゃん」とか言われなきゃいけないんだろうって。

望月 同感です。いまの立場から発信し、発言する。それが私たちの仕事ですからね。発信といえば室井さん、最近ツイッターをやり始めたんですよね。リアルタイムで安倍政権の批判もしていて、ツイート回数も多くてがんばっているなと思いながら見ています。でも私もそうですが、かなりネガティブな反応も多いでしょう?

室井 すっごく多いです。最初はやり方から何から全然わからなくて「くだらないことを送ってこないで」っていちいち返事していたら、みんなに「ブロックとかミュートとかすればいいだけだ」って言われて。初心者なのでそんなことも知らなかった。それで炎上騒ぎもあって。あっ、望月さんは炎上の先輩だ!

望月 (笑)。私も一時期はあまりにひどいものはブロックしていたんですけど、そうするとまた炎上している感じになるから、いまはもう放置しています。

室井 でも、ツイッターにしても映画にしても、政治的なことがアウト、タブーになるなんて本当に恐ろしい世の中だよ。本当に怖い。そんななか、望月さん、そして東京新聞はうんとがんばってるよ。

望月 ありがとうございます。中日新聞が母体だから、社長と会長が名古屋市にいるというのにも助けられているかもしれません。安倍さんはあまり地方紙とは会食をしていないですからね。全国紙や大手マスコミは、軒並み安倍さんとの会食を繰り返していますが、こうしたトップ同士の関係は現場に必ず影響していると思います。東京新聞では、たしか長谷川幸洋さんがいた頃の2013年5月、彼が間に入って中日新聞の当時の社長が一度安倍首相と会食しているんです。でも、それ以降はしていないと思う。もし会食するような関係が続いていたら、現場としては、やりづらくなりますね。

室井 そうだよね。首相とマスコミのトップがベタベタの付き合いなんて先進国では考えられないし、報道機関、ジャーナリストとしてのプライドがないんじゃないかと思っちゃう。トップがそうなら現場も萎縮する。もうマスコミはすっかり安倍さんにやられて、忖度、自粛のオンパレードだもの。

望月 今年6月に国連人権理事会でデービッド・ケイ特別報告者から日本の報道の自主性に対し危惧する報告書がまた出ました。そのなかには「日本政府当局者が彼らに批判的な質問をする記者に圧力を加えている」という文言もあって。

室井 それって望月さんのことだよね。デービットさんは2017年5月にも安倍政権による報道圧力とメディアの萎縮について是正を勧告していたけど、その後もメディア圧力は是正されないどころか、どんどんひどくなっているからね。

望月 政権幹部とマスコミ幹部との会食がこれほど繰り返されるという状況は異常です。それだけでなく「桜を見る会」には芸能人をどんどん呼んで、メディア幹部だけでなく情報番組司会者、コメンテーターなど影響力のある人たちにも手を伸ばしはじめています。安倍政権になってからメディアの取り込みが露骨になっています。ただ、こうした会食への批判が大きくなったことも影響してか、一部テレビ局のトップが安倍首相との会食は断っていると聞きました。でも、その代わり菅官房長官と会食をしているそうです(苦笑)。何を話しているのかと言えば、民放連(日本民間放送連盟)の人事の話とか。菅氏は他のメディア幹部と会ったときも、官僚の人事話をしていたと聞きます。“官僚や政治家、メディア含め、俺があらゆる人間の人事を握っている”ということを内外に示すことが、自分の権力の源泉になるという意識があるのでしょう。

室井 菅さんなら新聞の動静に出ないものね。

ギャラクシー賞を受賞した『報ステ』元CPを報道から追放したテレビ朝日

室井 望月さんの菅さんとのやりとり見ていてもそうだし、望月さんの著書『新聞記者』(角川新書)を読んでも、映画を観てもそうだけど、望月さんって新聞記者であることへのプロ意識がすごく高いんだなと思いました。男の人って、“記者”としてではなく、会社の“役職”がつくことにこだわりがちだけど、望月さんはそうじゃない。私はジャーナリストでも新聞記者でもないから、そんなプロの記事を読んで「私はこの記事を読んでこう思った」ということを、賛否両論になってもいいから広げる。それが役目なのかなと思ってます。

望月 室井さん、新聞から雑誌から書籍まで、ものすごい量を読んでますものね。テレビでの発言や週刊誌コラムなどを拝読していますが、相当読み込んでやってるなって。

室井 私、オタクだから(笑)。

望月 熱量のすごさを感じます。特にテレビは権力批判もできなくなり、危ないと思っているけど、室井さんやジャーナリストの青木理さんが発言しているのを見ると、「でもまだ希望があるな」と思います。ただ、最近でもすごくひどい人事がテレビ朝日であった。それがジャーナリズムの要として『報道ステーション』のチーフ・プロデューサーなどをやっていた松原文枝前経済部長が、報道局から総合ビジネス局のイベント事業戦略担当部長に異動したことです。彼女は現役の記者のなかでも、ずっとブレずに仕事を続けて。それで安倍政権になってから嫌がらせが続いても「それでもやらなきゃいけない」と発信し続けてきた。昨年4月の財務省・福田淳一事務次官(当時)のテレビ朝日社員へのセクハラ問題のとき、告発した社員の上司でもありました。それを逆手に取られ、「飛ばされるのではないか」という空気がありましたが、当時は伊藤詩織さんの#MeTooの流れがあって、この問題を『報ステ』でも小川彩佳アナ(当時)が取り上げ、反響を呼んでいました。女性記者たちが集まってできた団体「メディアで働く女性ネットワーク」(WiMN)でも、「声をあげた人たちを守ろう」と掲げていたんです。そうしたまっとうな方だったからこそ、相当前から政権に目をつけられていた。しかもいま、テレ朝は早河洋会長の体制下で、安倍首相や菅さんの応援団を自認する、幻冬舎社長の見城徹さんが放送番組審議会の委員長に入っている。(松原さんが)番組を外れる可能性は高いんじゃないかと危惧していたのですが、現実になってしまって。

室井 彼女は古賀茂明さんが『報ステ』を降板させられたときも、最後までかばった人でもあるよね。

望月 そうです。予兆もありました。2016年6月、『報ステ』で松原さんが経済部長時代に手がけた特集「独ワイマール憲法の“教訓”」がギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞した。「ドイツの民主的なワイマール憲法下でなぜ独裁者ヒットラーが生まれたか」という日本の憲法改正の動きとの比較で深く考察されたものでした。そんな栄誉ある賞なのに、政権に批判的に取れる内容なのでテレ朝内では喜ぶどころか“なかったこと”のようだったと聞きます。しかも「贈賞式に出るな」「コメントするな」って松原さんに対して圧力もあったらしくて。異動との関連ははっきりしませんが、松原さんは、憲法改正の国民投票でのテレビのCM規制についての民放連の動きも問題視していました。これまで民放連は「CM規制をかけることも含めた議論をすべきだ」としていたのに、民放連会長や専務理事が日テレに変わった途端、「表現の自由がある」として、「CM規制をかけない」と一変させた。松原さんはそれに対し、過去の国会の議事録などを調べ上げて分析、民放連の会見でも追及していたと聞きます。誰も聞かないから聞きに行かなければという意識だったそうです。政治部デスクにことわって聞きに行っていたそうですが、これをテレ朝の幹部が、問題視していたと聞きました。

権力の肩を持ち、望月記者の足を引っ張る記者クラブに、室井が激怒

室井 憲法改正をしたい安倍さんへの忖度と金儲けってやつか。テレ朝は小川アナを追い出したり、逆にネトウヨアナの小松靖を『ワイド!スクランブル』に起用したり。テレビも安倍さんへの忖度と、広告収入や視聴率が下がっていくなかで、どんどん変な方向へ行っている気がする。そんななかで、望月さんにして松原さんにしても、権力と対峙してる。官邸に立ち向かっている。誇りを持って仕事してるんだなってわかる。でも、いろいろ大変なんでしょ。菅さんにガンガン質問してる姿は私たちからしたら拍手喝采だけど、記者クラブで足を引っ張られてるって聞いてる。質問する望月さんの悪口言う記者までいるっていうじゃない。昨年も、辺野古の赤土について質問したら菅さんが逆上して、望月さんの質問を制限しようとしたんでしょ。しかも、そんなひどいことに対して、一部の記者が「望月さんが質問をすればするほどクラブの知る権利が阻害される」なんていうコメントを共同通信にしてさ。その上、菅さんの主張はフェイクだったじゃない。

望月 そうなんです。日本新聞労働組合連合(新聞労連)や日本ジャーナリスト会議から抗議声明も出て、東京新聞でも社説や特集記事を掲載し、官邸前でのデモなどもあったのですが、でも記者クラブに関しては室井さんの言う通りかもしれません。実際、ある大手紙記者が「なんだよあいつ、いつまで来させるんだよ」と私についてあからさまに批判していたとも聞きました。それと最近、新聞労連の新聞研究部が、ここ2年以内で官邸にいた記者を対象に官邸会見について匿名アンケートをとり、幹事業務を担う19社、33人が回答を寄せたようですが、そのなかに私の批判もあった(笑)。「パフォーマンス」「自己アピールだ」だとか「質問が長い」とか。同時に、なかには「内部で官邸と繫がっている社がある限り、記者クラブとして身動きが取れない。苦しい」というような生々しい声もありました。彼らはわかっているけど、ジレンマに陥っている。

室井 どこかの独裁国家のメディアとほとんど変わんないね。現場の人から実態を聞くと、どんどん怖くなってくる。
(後編に続く)


プロフィール
望月衣塑子 1975年生まれ、中日新聞入社後、東京本社に配属され千葉、埼玉など各県警担当、東京地検特捜部担当を歴任。2017年に森友学園、加計学園の取材チームに参加し、菅官房長官会見に出席、また前川喜平文部科学省前事務次官や女性ジャーナリスト伊藤詩織へのインタビューなどを手がける。『武器輸出と日本企業』『新聞記者』『権力と新聞の大問題』など著者多数。

室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビュー、その後テレビコメンテーターとしても活躍。「週刊朝日」「日刊ケンダイ」「女性自身」など連載コラムも多数持つ。また『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『大竹まこと ゴールデンラジオ』(文化放送 金曜日)などに出演中。

最終更新:2019.08.09 11:55

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