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安倍首相が参院選でついた9のインチキ総まくり(後編)!
安倍首相が年金問題で信じがたい詐術!「基礎年金は6万3000円を確保できる」→実質賃金40%アップ想定の数字だった
自民党の動画広告(自由民主党ホームページより)
参議院選挙で安倍首相がついている「インチキ」を紹介しているこのシリーズ。前編ではおもに「政策によって年金を増やしていくことはできる」と豪語するときの根拠として挙げる、賃上げや雇用の増加の数字のカラクリについて指摘したが、後編では、もっと直接的な年金制度のデータをめぐる発言を検証してみた。
すると、もっと信じがたい安倍首相の嘘と詐術、そして安倍政権が隠している年金制度の恐ろしい実態が明らかになった。ぜひ、最後まで読んでほしい。
その5
「(年金の)運用だって、民主党政権時代の10倍、44兆円増やすことができたんです。これは相当の、私はいわば年金の財政を厚くすることができたんだろうと思います」(日本記者クラブ党首討論会)
→民主党政権時の運用益をかさ増し+運用に失敗すれば「給付で調整」と明言!
これまた何度も安倍首相が繰り返している主張だが、この「民主党政権の10倍」という数字の内訳は、じつにセコいもの。
というのも、安倍政権下である2013年1月〜2018年12月までの年金積立金の運用益は約39兆円であり、安倍首相の主張から5兆円少ない。この5兆円は何かといえば、2012年10〜12月の運用益である約5兆円も加算しているのだ。
安倍政権が発足したのは、2012年12月26日。たった6日間しか政権をとっておらず、実質的には民主党政権時の運用益であるものなのに、それを安倍首相はかさ増しして「10倍」と言っているのである。
「悪夢」と連呼しているくせになんともみみっちい話だが、しかし、もっとも重要なのは、年金積立金の運用では一方で大損失も出しているということ。事実、2018年10~12月期の資産運用成績は14兆8039億円もの損失を出している。
そもそも、以前は国民の年金を減らしてしまう危険性を考え、年金積立金の運用では株式などリスクのある投資を直接的にはほとんどしていなかった。しかし、第二次安倍政権では株式への投資を全体の半分にまで増やした。ここには、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に大量に株を買わせれば株価が上がり、景気が回復したという印象を与えることができるという安倍政権の計算があったと言われる。ようするに、国民の大事な年金を世論操作と政権維持に利用してきたのだ。
しかも、安倍首相は年金の運用について「想定の利益が出ないということになってくればそれは当然支払いに影響してくる」「給付にたえるという状況にない場合は当然給付において調整するしか道がないということ」と述べている(2016年2月15日衆院予算委員会)。つまり、この大博打のツケを払うのは、国民なのである。
その6
「私たちはしっかりと財源を確保して、厳しい人たちに光をあてていく。例えば、年金の低い方々に対しては、消費税を活用してこの10月から、1年間最大6万円給付をしていきます。あるいはまた年金の低い方々、非常に介護保険料高いねという声を聞きます。そこで消費税を活用して、この介護保険料の負担を3分の2に軽減をしていく」(街頭演説など)
→一方で介護サービスや高齢者の医療負担引き上げを検討!
「厳しい人たちに光をあてていく」と言いながら、その対策費を生活が厳しい人ほど負担が重くなる消費増税で賄うって……まず言っていることがめちゃくちゃだ。
しかも、いかにも弱者対策に力を入れていくように語っているが、騙されてはいけない。政府はすでに高齢者の医療や介護などで“切り捨て政策”を実行しようとしているからだ。
財務相の諮問機関である財政制度等審議会が6月19日に麻生太郎財務相に提出した「令和時代の財政の在り方に関する建議」では、要介護1・2の場合、2021~2023年度中の〈生活援助サービスを対象とした支給限度額の設定又は利用者負担の引上げ〉を具体的に検討すべきとし、後期高齢者医療制度の窓口負担についても〈できる限り速やかに75 歳以上の後期高齢者の自己負担について原則2割負担とすべき〉〈既に後期高齢者となっている者についても、数年かけて段階的に2割負担に引き上げるべき〉としているのだ。
この意見書をめぐっては、原案にあった〈将来世代の基礎年金給付水準が、平成16年改正時の想定よりも低くなることが見込まれている〉〈自助努力を促していく観点も重要〉といった年金問題にかかわる文言が削られていたことがわかっているが、都合の悪いことは隠し、その一方で着々と介護や医療で自己責任を迫る政策は進められているのだ。
そして、この選挙戦で安倍首相が「隠している」最たるものといえば、「財政検証」だろう。これについても、安倍首相は以下のように必死になって「隠しているのではない!」と強弁している。
その7
「我々、別にこれ、数字が悪いから隠しているんではない。たとえば、出生率ですね、(前回の財政検証では)1.35という予想だった。足元で1.4に、良くなってますね」
「(年金積立金の)運用益で、これは1.7で想定していたんですが、いま運用は4.5で回っています。ですから、悪いから隠してるっていうことではなくて」(テレビ朝日『報道ステーション』党首討論など)
→「36年後に積立金枯渇」の指摘も……悪い数字は無視する安倍首相
2015年にぶち上げた「アベノミクス新3本の矢」では「出生率1.8」を掲げていたのに、「1.4になった、良くなってますね」と言い募るとは呆れるが、ここで安倍首相が挙げているものは“都合の良い数字”だけ。
実際、党首討論では国民民主党の玉木雄一郎代表がすかさずつっこんだ。
「それ、いい数字だけ言ってるんです。例えば名目の物価上昇率は、前回5年前(の財政検証では)、最悪でも1.3だったんです。それは達成できていません。それと生産性の上昇(全要素生産性上昇率)は最悪でも0.5だったんですけど、この前、最新の2018年の実績値が出てきたら、実績値は0.3ですよ。5年前に想定した一番悪いケースよりも生産性が下がっています」
ちなみに、2017年の全要素生産性上昇率を前回の財政検証にあてはめると、「36年後に積立金が枯渇する」結果になるという。
だが、こうした都合の悪い数字を国民に伏せ、「年金は大丈夫なのか」という国民の不安に対し、「マクロ経済スライドありき」でしかものを語らない安倍首相。たとえば、その正当性を強調するために喧伝しているのは、こんな話だ。
その8
「マクロ経済スライドの調整がすべて終わった後、物価上昇分を差し引いたとしても、6万3000円の給付は確保できる」
「物価上昇分を除いた実質で見てもですね、基礎年金においては、マクロ調整が終わった段階でも6万3000円は、これ、確保できます」(『報ステ』など)
→「6万3000円」は実質賃金が40%上がった場合という現実離れした設定だった!
マクロ経済スライドによる調整が終わる2043年のあとも、6万3000円は給付できる──。こう断言されると安心するかもしれないが、この発言にもとんでもないカラクリがあるらしい。共産党の志位和夫委員長は、安倍首相にこのように反論したからだ。
「ちょっといまの数字、間違っている。いま安倍さんの言った数字は、実質賃金が40%上がっているという架空の計算なんですよ。で、いまの賃金と物価の水準で計算したら3割下がるんです」
「この数字(6万3000円)は、賃金が1.4倍になる(という計算)。実質賃金がですよ」
つまり、安倍首相が言っている数字は、2043年までのあいだに実質賃金が物価を上回り、なんと約4割も引き上がるという現実離れした設定のもとで弾き出されている、というのである。志位委員長は安倍政権下で実質賃金は約14万円も下落していると指摘したが、実際に現在も実質賃金は前年同月比で5カ月連続のマイナスという状態にある。それが約40%も上がる前提で安心を振りまくなど、完全に詐欺ではないか。
しかも、安倍政権は7月2日、マクロ経済スライドを適用しなかった場合の2043年度の基礎年金給付額は「マクロ経済スライドの適用があった場合と比べて約7兆円増加すると見込んでいる」という答弁書を閣議決定した。「増加」などと言っているが、勘違いしないでほしい。これはつまり、マクロ経済スライドの適用によって7兆円、約3割も給付額を減らすと言っているのである。しぶん赤旗(7月6日付)によると、これを個別の給付額に当てはめると、現在の基礎年金(国民年金)満額月6万5000円が月4万5000円になる計算というのだ。
その9
「経済を強くした結果、税収も増えました。国の税収過去最高、あのバブル期を超えました」(街頭演説など)
→実態は大企業や富裕層を優遇する一方、消費増税で庶民の生活を圧迫した結果!
財務省が7月2日に発表した2018年度の一般会計決算見込み額では、たしかに税収は過去最高の60兆3564億円となった。しかし、じつはこのうち約4000億円はソフトバンクグループの資金取引によるもので、〈ルール上は同社に還付される見通しで、19年度は同額の減収になる〉(日本経済新聞7月2日付)。しかも、これがなければ過去最高にならなかった可能性があるという。
だが、問題の本質はそういうことではない。捨て置けないのは、安倍政権下では所得税や法人税の国税収入に占める割合とくらべ、消費税の割合は大幅に伸びていることだ。
実際、税収の2013年度から2018年度の項目別伸び率は、所得税が28.1%増、法人税が17.4%増である一方、消費税は2014年の増税もあって63.3%増と圧倒的に伸びている(しんぶん赤旗7月7日付)。そして、2番目に税収が高かった1990年度と2018年度を比較すると、法人税と所得税は1990年度に比べてともに約6兆円、合わせて約12兆円も減少している一方、消費税は約13兆円も増えている。つまり、消費税を増税することによって、法人税と所得税の減少分が補われているような数字になるのだ。
安倍政権は所得が低い人ほど負担が大きくなる消費税を増税する他方で、法人税や所得税で大企業や富裕層を優遇してきた。日本記者クラブの党首討論会で安倍首相は「当然、今年度もそれ(2018年度)を超えてゆく税収になっていきます」と得意気に語っているが、それは「庶民の生活をさらに圧迫するぞ」と宣言しているに等しいものだ。
どうだろう。「強い経済で年金は増やせる」と言い、その根拠に持ち出す数字やデータは一面的に見た恣意的な解釈のものばかり。むしろ、それらのデータが示しているのは、賃金が上がっていない実情や、低賃金で生活が苦しい労働者の増加という問題点ばかりだ。
しかし、安倍首相はこうした問題に取り合わず、「悪夢の民主党政権」というフレーズに象徴されるように、話のすり替えで国民の目を別に向けさせることしか考えていない。そして、「野党は財源の裏打ちのある具体的な議論をしていない」という嘘を平然と街頭演説でがなり立てているのだ。
一方、野党側は今回の参院選で、安倍首相による大企業・富裕層への優遇税制の見直しを争点として掲げている。この点はあらためてお伝えするが、安倍首相がいかにデタラメばかりを吐いているのか、ひとりでも多くの有権者に知っていただけたらと願うばかりだ。
(編集部)
最終更新:2019.07.13 01:49
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