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ゴーン被告の“保釈中逮捕”は特捜部による完全な口封じだ! 検察“口封じ逮捕”の歴史と卑劣な本質
カルロス・ゴーン著 『ルネッサンス ― 再生への挑戦』(ダイヤモンド社)
4日午前6時前、東京地検特捜部は日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告を、オマーンに不正送金をおこなったとして特別背任容疑で4回目の逮捕をした。しかし、周知のように、ゴーン被告は3月6日に保釈されたばかり。その際、検察の準抗告も棄却され、裁判所は罪証隠滅や逃亡の恐れもないことが確認されていた。もちろん、10億円の保釈金も支払われていた。それが保釈から1カ月も経たないうちに、再び逮捕して身柄を拘束したのである。こんな話は、これまでほとんど聞いたことがない。
ゴーン被告の弁護士である弘中惇一郎氏は「仮に追起訴する必要があると裁判所や検察が判断したとても、あえて身柄を取るという相当性・合理性がどこにあるのか」「法律の趣旨に反する、文明国としてはあってはならない暴挙だと思っている」と怒りをにじませながら語ったが、まさにそのとおりだろう。
弘中氏によると、保釈の際、追起訴があるか裁判所が質問すると、検察は「あるともないとも言えないが、3月末までにはっきりさせる」と回答。4月に電話をして確認した際も、「何とも言えない」というものだったという。それが4月4日になって、突然の逮捕。しかも、検察は今回、すでに起訴されている裁判のための準備資料まで押収したという。これは明らかに弁護権の侵害だ。
実際、今回の逮捕については、弘中氏だけでなく、多くの法律専門家が違和感を表明している。逮捕当日の4日『ひるおび!』(TBS)に出演した元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏でさえ「保釈中の再逮捕は極めて異例」と指摘、普段は右派的発言が目立つ元裁判官の八代英輝氏も「この逮捕は必要かな?」「身柄拘束っていうのは恣意的にされてはいけないもの」「弁護人から批判されても当然」と疑問を呈していた。
東京地検特捜部は一体なぜ、こんな暴挙をおこなったのか。弘中弁護士は「一種の口封じ」だと言っていたが、たしかに“口封じ逮捕”の可能性は非常に高い。
ゴーン被告は3日までにツイッターを開設し、〈何が起きているのか真実をお話する準備をしています〉として、来週11日に記者会見を開くことを明らかにしていた。そして、そのツイートの翌日、4日に逮捕されてしまったのだ。
一部にはゴーン被告が保釈にあたってつけられた「インターネットの接続不可」「パソコン使用も弁護士事務所でのみ」という条件を破ったからだと指摘する声もあったが、ツイッターは弁護士管理のもとでおこなわれたもので、保釈条件に反したわけではない。
検察を動かしたのはそうではなく、ツイッターにも書かれていたゴーン被告が近く会見を開くという計画だったようだ。司法担当記者がこう話す。
「逮捕の方針は4月はじめに固まっていたようなので、ツイッターを見て、ということではない。ただ、ゴーン被告が近く会見を開き、検察捜査に対する告発、批判をおこなうことは察知していましたから、とにかくそれを阻止するために強引に逮捕に踏み切ったのでしょう。しかも、当初は、逮捕はもう少し後と思われていたのが、急に4日になった。これはやはり、ゴーン氏が会見のスケジュールを告知したからではないかと思いますね」
三井環事件でも実名裏金告発の直前に“口封じ”逮捕
こうした見方について、新聞の解説記事やテレビのコメンテーターは「検察が口封じのために逮捕するなんてありえない」などと否定していたが、そんなことはまったくない。
特捜部はこれまでも、不当逮捕を主張する容疑者や自分たちの不正を告発しようとする人物を恣意的に逮捕してきた。
その典型が2002年に起きた三井環事件だ。当時、大阪高検公安部長という要職にあった三井環氏を、大阪地検特捜部が詐欺などの容疑で逮捕した事件だが、検察が身内の検事、しかも高検幹部を逮捕したのには裏があった。実は、三井氏は、検察の裏金づくりという不正を実名告発する準備を進めていたのだ。
検察には、検察官が情報収集や内偵のために使う経費として「調査活動費」というものが認められ、毎年、全国の検察庁に数億円もの予算がつけられている。ところが、実際は情報提供者に支払われるべき調活費は、支払われることなく検察内部にプールされ、料亭やゴルフなどの遊興費に不正流用されていた。その金額は、1998年の時点で検察庁全体で6億円もの莫大な額になっていたとされる。
三井氏は2001年頃から、この調査活動費の実態を「噂の真相」(休刊)や「週刊朝日」などの週刊誌に匿名で告発していた。ただ、新聞やテレビは匿名での告発を理由に取り上げず、一向に不正は正されなかった。そこで、三井氏は実名での告発を決意する。複数の新聞・テレビに話を持ちかけた結果、朝日新聞と共同通信、テレビ朝日や毎日放送で報道することが決まり、そのあと、国会で取り上げる動きも組まれた。
ところが、そのうちのひとつであるテレビ朝日『ザ・スクープ』の収録日当日の2002年4月22日朝、三井氏は前述したように検察に逮捕されてしまうのだ。容疑は購入したマンションの移転登記の際、そこに住民票を移し、登録免許税50万円の軽減措置を受けようとしたとする「電磁的公正証書不実記載及び詐欺」と、自分を脅そうとしてきた暴力団組員の前科調書をとったことに対する「公務員職権濫用」。法律関係者もこぞって「普通なら絶対に逮捕はありえない」と首をひねる微罪逮捕だった。
これはあとになってわかったことだが、検察は三井部長の実名告発の動きを察知。身辺を徹底的に洗っていた。そして、いよいよテレビや国会やテレビで証言することがわかると、強引に微罪を探し出し、その前に逮捕したのである。
長期勾留も口封じが目的! 人質司法が続く限り検察の腐敗は温存される
とにかく、今回のゴーン再逮捕は、この三井事件と展開がそっくりなのだ。
いや、三井事件だけではない。検察の口封じ逮捕はほかにも山ほどある。最近では、2017年7月、森友学園前理事長だった籠池泰典氏とその夫人が補助金不正受給問題で大阪地検特捜部に逮捕され、異常な長期勾留をされたのも、国有地売却問題に関する安部首相夫人の関与を訴え、検察の動きを「国策捜査だ」と批判していた籠池夫妻に対する口封じが目的だった。
いや、もっと根本的なことを言えば、いま、検察や警察がやっている長期勾留のほとんどは、“口封じ”が目的とも言える。身柄を拘束し続け、外部と遮断することで、容疑事実の否認、強引な取り調べや恣意的な捜査への批判を封じ込め、検察に屈服させる。それが究極の目的なのだ。
そして、実際、この人質司法は冤罪や違法な捜査、検察という組織の腐敗を温存させてきた。
もっとも、今回のゴーン被告再逮捕はこれまでと違う点がいくつかある。ひとつは、ゴーン被告がフランス人であることから、国際社会が日本の異常な人質司法を批判的な視点でチェックしていること。そしてもうひとつは、ゴーン被告の弁護に“無罪請負人”といわれる弘中弁護士がついて、徹底的に闘う姿勢を示していることだ。弘中弁護士はすでに、ゴーン被告の声明を収めた動画の存在を明かし、近いうちに公開することを予告している。
楽観は許されないが、今回のゴーン再逮捕劇で、検察捜査の人質司法の問題点が大きな批判にさらされる可能性もゼロではない。
(編集部)
最終更新:2019.04.05 10:54
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