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紅白で倒れた平手友梨奈、鈴本美愉、志田愛佳だけじゃない、今泉佑唯は休養…欅坂46メンバーを苦しめるもの
「不協和音」(SMR)
昨晩放送された『第68回NHK紅白歌合戦』。2回目の出場となった欅坂46が大きな話題を巻き起こした。パフォーマンスが終わった瞬間、メンバーの鈴本美愉が倒れ込む様子と、センターを務める平手友梨奈が身体を震わせて苦しむ様子がカメラに映し出されたのだ。
『紅白歌合戦』のなかで、欅坂46は「不協和音」を2回歌唱。一度はグループのみで。そして二度目は、かねてより「不協和音」を評価していた総合司会の内村光良とコラボでパフォーマンスした。
件の出来事は、内村とのコラボのパフォーマンス中に起こる。平手は歌唱が始まった瞬間から身体の動きが鈍く、ダンス中に内村から「大丈夫?」と問われ、うつむきながら頷く姿も。そして、曲が終わると同時に、鈴本美愉が倒れ込み、後ろにいた渡辺梨加に抱きかかえられる姿が映し出された。
共同通信社の報道によると、この後、平手と志田愛佳も倒れ込み、看護師の手当を受けたという。いずれも過呼吸によるもので、症状は軽く、病院に運ばれるようなことにはならなかったという。
今回歌われた「不協和音」だが、この曲は欅坂46にとっていわくつきの楽曲である。
先月30日に大賞が発表された日本レコード大賞。欅坂46は優秀作品賞に「風に吹かれても」が選ばれているのだが、実は、本来であれば「不協和音」が選ばれる予定が、所属レコード会社であるソニーミュージックからの要望で急きょ「風に吹かれても」に変更されたという経緯があるという。
この事実を明かした「週刊文春」(文藝春秋)2017年12月7日号によれば、ソニーミュージックがそういった要望を出してきた原因は、平手の体調にあると事務所関係者が「週刊文春」の取材に答えている。曲の世界観にのめり込むタイプの彼女は、〈ここで主張を曲げたら生きてる価値ない/欺きたいなら/僕を抹殺してから行け!〉というシビアな歌詞の「不協和音」を歌うとコンディションが急激に悪化するため、30日の生放送で歌わせられないと運営側が判断したからであるという。
そのような要望を出したスタッフの脳裏には、もしもここで「不協和音」を歌わせれば、翌日の紅白にも影響が出かねないとの懸念もあっただろう。残念ながら、その懸念は当たっていたわけだ。
しかしそれにしても、楽曲ひとつで体調を崩すだなんて、まるで憑依型の役者のような話で、にわかには信じられないが、実際、平手のインタビューを読めば、「週刊文春」の記事がデタラメなどではないことがわかる。
「不協和音」が原因で平手友梨奈は夏のツアーを休演している
「ROCKIN’ON JAPAN」(ロッキング・オン)17年12月号に掲載されたインタビューで彼女は「不協和音」について、命を削る曲であるとし、このように語っている。
「“不協和音”は気持ちが入ったり、その世界に行かないとできないです。だから、できる時とできない時がだいたいわかるので、(ライブで)『今日はできないな』と思ったらできないし、やれるとしても自信はないです」
実際、平手は「不協和音」という楽曲が原因で心身を壊す経験をしている。
この夏、欅坂46は8月2日の神戸ワールド記念ホールを皮切りに1カ月で全国6カ所(11公演)をまわるアリーナツアー『真っ白なものは汚したくなる』を開催したが、平手はそのツアーで体調不良による途中退場を繰り返したのだ。
特に、同月16日に日本ガイシホールで行われた名古屋公演では、途中退場ではおさまらず完全休演になってしまっているが、その原因は、茨城県ひたちなか市で行われた『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』(欅坂46は12日に出演)だったと、前掲「ROCKIN’ON JAPAN」で語っている。
平手は「不協和音」をセットリストに組み込むことについて「できなかったら心が折れるから、そうなった時にどうなるか自分でもわからない」として不安を感じていたが、しかし、「ギリギリまでスタッフさんと相談」した末、「不協和音」を歌うことになったという。
だが、結局、「ROCK IN JAPAN」での「不協和音」は満足のいくものではなかった。その影響を平手は「ロック・イン・ジャパンでダメになっちゃって、次の名古屋公演かな、出られなかったです」と語っている。
なぜそんな事態になってしまうのか? 欅坂46運営委員会委員長の今野義雄氏は「QJ」vol.135(太田出版)のインタビューで「彼女は表現者としてだけではなく、クリエイターとしてもいいものを作りたいという気持ちが強く、常に100点以上を目指していると思うんです。だからこそ「100点が取れない」とわかった瞬間、自分の中で失格の烙印を押してしまう部分がある。それが全国ツアーで現れてしまった。世間的には平手の体調不良を心配する声もありましたが、あれは「表現への苦しみ」との戦いに見えました」と語り、平手の体調不良は過労や病気などに端を発する体調不良ではなく、クリエイティブに関わる彼女の精神状態に起因するものであると証言している。
平手友梨奈が抱える「表現の苦しみ」とはいったいなんなのか?
では、平手が抱える「表現の苦しみ」とはいったいなんなのか。これは、「提供された楽曲をただ単に歌うだけ」といった、操り人形としてのアイドル像から脱し、ひとりの表現者としての自覚が彼女のなかで芽生えつつあることと関係しているのではないか。そして、この自覚と彼女の現状が大きな矛盾をはらんでいることが、彼女を苦しめているのではないか。
言うまでもなく、欅坂46のすべての楽曲の歌詞は秋元康氏のペンによるものであり、そのほかのクリエイティブの面においても、恋愛禁止などプライベートな面でも、周囲の大人たちのコントロール下に置かれている。
そのシステムの範疇にいる限りにおいては、彼女の表現者としての自立にも限界がある。その相克といかに対峙していくのか。
『サイレントマジョリティー』や『不協和音』といった欅坂46の代表的な楽曲は、大人がつくったシステムや同調圧力へのプロテストを歌ったもの。それを深く表現しようとすればするほど、自らの抱える矛盾や相克にも自覚的にもならざるを得ないだろう。
その矛盾と相克こそが、平手の抱える苦しみではないのか。そして、その「表現への苦しみ」は現在でも続いていると思われる。
それは、平手自身の言葉からも明らかだ。前掲「QJ」のインタビューのなかで彼女は「実は日々思ってることはノートに書き溜めてるんです。でも、仮に自分が歌詞を書いたとしてもしばらくは内緒にしておきたいかな。いろいろ言われそうだし(笑)」と発言。自らの手で「0を1にする」表現をつくりだすことへの欲求を語っている。
巷間言われている通り、確かに、平手の存在感や表現力は他のメンバーに比べて抜きん出ているのかもしれない。しかし、それ故に、彼女を「絶対的センター」の構図に置くことは、平手自身も、そしてその周囲のメンバーも不幸にしているのは間違いない事実だ。
今回の紅白には欅坂46(ひらがなけやきは除く)のメンバー全員が参加しているわけではなく、今泉佑唯が体調不良のため休養している。
今泉は昨年4月に体調不良のため活動を休止、同年8月に復帰しているが、12月になって再び年内の活動休止を発表している。活動休止にいたった原因について詳らかにはされていないが、アイドル誌編集者はこのように語る。
「デビュー曲『サイレントマジョリティー』のフロントメンバーであり、他のメンバーに比べても人一倍センターポジションへの野心をもっていた人でした。しかし、活動を続けていくうちに、平手のセンター固定が揺らぐことはないのがどんどん明らかになっていきます。そこで、遂に心が折れてしまったのでしょう」
平手友梨奈は秋元康に「この場からいなくなりたい」とSOSを出していた
それは、今泉自身の発言からもある程度読みとれる。「BRODY」(白夜書房)18年2月号掲載のインタビューで彼女はこのように話している。
「今もセンターになりたい気持ちはあります。きっと私がセンターになっても誰も喜ばないだろうなって思ったりもします。でも、なりたいです」
「平手がいなきゃ欅坂46は成り立たないって言われるのが、すごく悔しいし悲しいんです。他にも個性的なメンバーがたくさんいるよって思いながらずっとパフォーマンスしてきたので」
とはいえ、その一方で、平手一強体制は日増しに強化されていく。それを端的に示したのが、前述したツアーにおける平手の離脱だろう。
このとき、平手が離脱したセンターポジションが他のメンバーによって埋められることはなく、その部分は空白のままライブが行われた。AKB48グループや乃木坂46では通常そのような場合、誰か他の人が代理でセンターを担うのが普通で、センターを空きポジションにしたままパフォーマンスが行われるのは相当珍しい事例だ。
そもそもの話だが、たとえセンターがある特定のメンバーに固定されていようとも、他のメンバーにも各々が能力を活かして輝ける場所があれば、それならそれでもかまわない。しかし、現状の欅坂46はそのような状況にはなく、むしろ、「マスゲームの駒のひとつ」のように扱われる環境が強化されつつある。
そのような状況が、メンバーに負荷をかけるのは明らかだ。向上心があればなおさらである。前掲「BRODY」のなかで今泉は「今は欅坂46は笑わないとか、そういうイメージがあると思うけど、また違う欅坂46を作りたいなって気持ちがあります」と発言。また、小林由依も「私も今の欅坂46じゃない欅坂46の一面を知りたいっていう思いがあります」と語り、現状とは違うグループの姿への希望を語っているが、それが実現する可能性は、現状ではかなり低いと思わざるを得ない。
小林は同インタビューのなかで「みんなわかってるんだよ。自分たちがどうすればいいかも」「わかってるんだけど、それをなかなか行動に移せない」と、言葉を濁しながら苦しみを吐露しているが、今回の紅白で、平手のみならず、鈴本、志田といったメンバーが倒れたのと、このような状況は無関係ではないだろう。
昨晩の出来事が示した通り、平手一強体制は、平手本人はもちろん、他のメンバーの心身をもどんどん壊し始めている。
それは、総合プロデューサーの秋元康氏も認識しているはずだ。前掲「QJ」のインタビューのなかで秋元氏は「平手はよく「この場からいなくなりたいです」と言うんですね。ピュアな子なので人間関係に疲れちゃう場合もあるんだろうし、あるいはセンターでい続ける重圧かもしれない」と語っている。
「この場からいなくなりたいです」とまで言われているのに、それでも負荷をかけ続けるのは果たしてどうなのか? これは、どう考えてもSOSのサインだろう。
秋元康氏と運営は抜本的な解決をはかるべきではないのか。
(編集部)
最終更新:2018.01.01 12:54
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