国際問題・戦争に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
トランプのシリア先制攻撃を全面支持した安倍首相の支離滅裂! 裏でアサド政権に資金協力しながら
自由民主党HPより
この男の「米国のポチ」ぶりは重々承知していたつもりだったが、まさかここまで思考停止しているとは……。7日、米トランプ政権がシリア・アサド政権支配下の軍事施設に対し59発の巡航ミサイル攻撃を行ったと発表した約4時間後、安倍首相はなんと「日本政府は支持します」「高く評価します」といち早くその軍事行動を支持してしまったのである。
改めて指摘しておくが、今回の米国のシリア攻撃にはなんの正当性もない。もちろんシリア・アサド政権が化学兵器を使用し、多くの無辜の市民を殺戮していたとしたら、その行為は明らかな国際法違反行為であり、徹底的に批判、追及されるべきだ。だが、国連安全保障理事会の決議も経ずに、化学兵器使用の明確な証拠も提示しないまま、いきなりのミサイル攻撃を仕掛けた米国の行為もまた、明らかな暴挙なのである。
それは国際法違反の先制攻撃を仕掛けた、戦争を引き起こしたという意味だけではない。国際政治における戦略の有効性という観点から見てもとんでもない「悪手」なのだ。
そもそも、アサド政権が化学兵器を使ったのが事実ならば、まず、その客観的証拠を収集し、アサド政権の後ろ盾になっているロシアにその証拠を突きつけ、国際社会全体でアサド政権とロシアにプレッシャーをかけていくのが本来のやりかたであり、唯一の現実的な解決方法だった。
実際、2013年8月にやはり、シリアの首都ダマスカス近郊のゴウタでアサド政権が化学兵器を使用した疑惑が浮上したが、この際には米ロが対立するも、最終的には話し合いによって、アサド政権が所有する化学兵器を査察し、廃棄する枠組みをつくった。
今回も、国連安保理では米国と英国、フランスはアサド政権に真相究明に協力するよう求める決議案を提案しており、これに対してロシアがアサド政権の使用を否定して、アサド政権を特定しない別の決議案を提出。これから交渉が行われるという状況だった。
ところが、トランプ政権はこうした議論を一切すっ飛ばし、具体的な証拠を提示することもないまま、だまし討ちのように先制攻撃を仕掛けたのだ。
これによって、化学兵器問題を外交カードにしてアサド包囲網をつくることも、ロシアを化学兵器の真相調査の枠組みにひきずりこむことも不可能になり、逆にロシアにアサド政権擁護の口実を与えることになった。シリア情勢じたいも、今後は、米国とロシアの代理戦争状態に突入するのはもちろん、勢力が減退しつつあったISもこれに乗じて復活するなど、混迷・泥沼化に拍車がかかるのは確実だろう。
いったい、トランプ政権はなぜ、こんな横暴をやらかしたのか。そもそも、トランプ政権は一貫してアサドの退陣を求めてきたオバマ政権時代の方針を転換。IS壊滅を最優先するとして、ロシアと共同歩調をとりアサド政権に容認的な姿勢を示してきた。つい1週間前には、ティラーソン米国務長官が訪問先のトルコで「アサド氏の長期的な地位はシリア国民が決めることだ」。ヘイリー国連大使が「われわれの優先課題はもはや腰を据えてアサド氏を追放することではなくなった」などと述べていた。
それがいきなり、180度方針転換をしたのは人道的な動機などではもちろんない。
トランプ大統領は就任以来、支持率が歴代最低クラスに低迷していることに激しい苛立ちを見せていた。そこに、今回の化学兵器使用問題が勃発したため、シリアへの軍事行動をとどまったオバマ大統領との違いを見せつけ、支持率アップを狙おうと、いきなりの先制攻撃パフォーマンスを展開したのである。ブッシュ大統領がイラク戦争を始めた途端、支持率が大幅に上昇したことも明らかに意識していたはずだ。
さらに、この行動の背後には石油メジャーの意向も見え隠れしている。周知のように、ティラーソン国務長官は石油メジャー最大手のエクソンモービル前CEOだが、このシリア攻撃で米国内の原油価格は急騰、石油メジャーには莫大な利益がころがりこんだ。つまり、石油メジャーが支えるトランプ政権が自分たちの利益のために中東で紛争を起こすチャンスをずっとうかがっていたのではないかというのだ。
いずれにしても、トランプ政権のシリア先制攻撃は国際社会の安定という目的とは何の関係もない。自らの政権維持のために、さらなる混乱の原因となるような暴挙を犯したのだ。
ところが、安倍首相は冒頭で指摘したように、どこの国の首脳よりも早くこの軍事行動を全面的に評価した。安倍首相はその理由として、「極めて非人道的であり、国連決議にも反する」とアサド政権を厳しく批判したが、ならば、自分たちのこれまでのアサド政権への協力姿勢をどう説明するのか。
たとえば、昨年12には日本を除くG7の6カ国がアサド政権とロシアに対する非難声明を出した際、日露首脳会談を控えていた安倍政権はロシアの顔色を伺ってこれに参加すらしなかった。
また、2015年には、国民にひた隠しをするかたちで、シリア・アサド政権支配下の火力発電所に約25億円の資金提供を行っている。電力は軍事活動にも利用されており、明らかにアサド政権の延命に手を貸すものだった。
それが、トランプが政策転換したとたん、もろてをあげて賛同――。ようするに、安倍首相には独自の外交スタンスも戦略もまったくなく、ひたすら大国の顔色をうかがい、トランプがやることなすことにすべて「さすが大統領!」「どこまでもついていきます!」と盲従し続けているだけなのだ。
しかも、情けないのは、これだけ忠誠心を見せても、トランプからはまったく相手にされていないことだ。トランプが大統領に就任してから、安倍応援団は「世界の首脳の中で、安倍首相が一番トランプとの信頼関係が強い」などと喧伝してきたが、今回のシリア攻撃も事前通告すらしてもらえなかったようだ。
しかも、笑ってしまうのは、官邸がこの期に及んで、「シリアへの先制攻撃は北朝鮮への牽制になる」などといった情報を流していることだ。7日の朝日新聞電子版によると、官邸幹部は「北朝鮮が合理的に考えれば、この状況は『やばい』と思うはずだ」と語ったという(その後なぜか記事からコメントが削除された)。
いったいこいつらは何を平和ボケな分析を口にしているのか。そもそも、北朝鮮がこれまで核やミサイル開発をエスカレートさせてきたのは、米国に攻撃されるという恐怖からだ。米韓軍事演習における斬首作戦導入など、米国が北朝鮮対策を本格化させればさせるほど、北朝鮮も核とミサイル開発を加速化させてきた。シリアへのミサイル攻撃は牽制になるどころか、さらに北朝鮮との緊張を高めるのは火を見るより明らかではないか。
いや、安倍首相はもしかしたら、それを承知で、米国のミサイル攻撃を支持したのかもしれない。今回のシリア攻撃後の会見で、安倍は「米国政府の決意に対する支持」を示したあと、「東アジアでも大量破壊兵器の驚異は深刻さを増しています。そのなかで、国際秩序の維持と、同盟国と世界の平和と安全に対するトランプ大統領の強いコミットメントを、日本は高く評価します」と発言していた。
このコメントからもわかるように、安倍首相は明らかに、トランプに北朝鮮への“先制攻撃”を待望しているのだ。しかし、実際にアメリカによる北朝鮮への“先制攻撃”が行われれば、その報復の標的となるのは日本だ。沖縄の米軍基地にミサイルが打ち込まれ、国民の血が流れることになる。
ところが、マスコミとりわけテレビメディアは、こうした安倍政権の対応の危険性にほとんど言及しようとしない。
本サイトは以前から、差別主義と一国主義を明確にするトランプ政権が引き起こす戦争に日本が巻き込まれる危険性を指摘してきた。このままでは本当に、明日にでも日本の“戦後”が終わる。指をくわえて見ているだけでいいのか、よくよく考えてもらいたい。
(野尻民夫)
最終更新:2017.11.22 01:45
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