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安倍首相「私は起立・拍手を促してない」は大嘘! 側近の“報道圧力男”萩生田官房副長官が指令を出していた
自民党公式HP議員情報ページより
「スタンディングオベーションをしてくれと一言も言ってない」
「どうしてこれがことさら問題なのか私はよく理解ができないわけであります」
9月30日の衆院予算委員会で、総理所信表明演説中に自民党議員が一斉に起立・拍手を行うという前代未聞の行為を追及され、そう言ってのけた安倍首相。ようするに、「議員が自発的にやった」「自分は要請していない」という逆ギレだが、これは真っ赤なウソ。その背景には、首相側近が実際に議員らに指示を与えていたことが判明しているのだ。
その前に、この問題を簡単に振り返っておこう。26日の所信表明で安倍首相は北朝鮮の核実験問題を取り上げ、「我が国の領土、領海、領空は、断固として守り抜く。強い決意を持って守り抜くことを、お誓い申し上げます」と宣言した後、このように続けた。
「現場では夜を徹して、そして、いまこの瞬間も海上保安庁、警察、自衛隊の諸君が任務に当たっています。極度の緊張感に耐えながら強い責任感と誇りをもって任務を全うする。その彼らに対し、いまこの場所から、心からの敬意を表そうではありませんか」
安倍首相がそう言い終わるや否や、自民党議員たちがゾロゾロと立ち上り、壇上で拍手を始めた安倍首相とともに、10秒近く盛大な拍手を始めたのだ。
この異様な光景に、「言論の府にふさわしくない」「国のために命を投げ出すことを礼賛し強制している」「まるで北朝鮮や中国共産党の党大会だ」という批判が続出。小泉進次郎衆院議員ら党内の一部議員からも違和感の声が漏れるほどだった。
そして開幕した秋の臨時国会で、安倍首相はこの“異様な光景”を追及され、冒頭に紹介したように「要請したわけではない」「自発的だ」と逆ギレ気味に弁明し、批判をかわそうとしたのだが、しかし、これは大嘘である。
実際、本サイトはこの光景の異様さを報じた記事のなかで、「安倍さんの側近幹部や閣僚が手下の若手議員に事前に指令を出し、リードさせたものらしい」という政治評論家のコメントを伝えたが、事実、その後の複数大手紙の報道でも、事前に萩生田光一官房副長官が糸を引いていたことが判明している。
萩生田官房副長官といえば、2014年末の衆院選に際して、在京キー局に対し〈報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い〉という恫喝文書を送りつけ圧力を加えるなど、政権の情報操作や広報戦略を指揮する安倍首相の側近で信頼も厚い。今回のスタンディングオベーションでは、演説当日の午前に竹下亘国対委員長ら幹部に、安倍首相が警察、海保、自衛隊などを讃えるくだりで「もりたててほしい」と指示を出していた。そして演説が始まると、国対メンバーが会議場で前の方に座る当選1、2回の安倍チルドレンたちに起立して拍手するように要請したのだ。
指示を受けた若手議員はかなりの数にのぼっていったため、安倍首相サイドは他の議員はつられて立ち上がる、と計算していたのだろう。事実、小泉進次郎議員が後でテレビの取材に「私もびっくりして、つい立ってしまったが、あれは、ない。ちょっとおかしいと思う。自然じゃない」と批判していたが、安倍首相サイドからすれば、まさに仕掛け通りの展開だったわけだ。
しかも、現に安倍首相は壇上で拍手を行っているが、これが演説中のスタンディングオベーションを促す行為でなければなんだというのか。現在、ネット上では原稿に「(拍手)」「(水を飲む)」などと細かい指示が書かれた画像が出回っており、これは文言から見て13年9月の所信表明演説の際のものである可能性が高いが、しかし、今回の所信表明での“台本”のなかにも、こうした「(拍手)」というジェスチャーが事前に記載されていたとみてまず間違いない。
実際、昨年4月、安倍首相が米議会上下両院合同会議でスピーチしたときも、海外メディアは安倍首相が手に持つ原稿を写真付きで報じ、そこに「次を強く」「顔を上げ拍手促す」などという“ト書き”が赤ペンでなされていたことを指摘していた。
さらに、安倍首相が30日の国会で放った大ウソはこれだけではない。安倍首相は答弁のなかで、スタンディングオベーションの「いい悪い」は個々の議員が判断するとして、前述の米議会演説の例に挙げ、こう述べた。
「たとえば米国の議会においては、スタンディングオベーションというのはよくあることでございますし、私も昨年米国の上下両院合同会議において十数回スタンディングオベーションがございました。このスタンディングオベーションが悪いと、私は言うことはないわけでございまして(略)、どうしてこれがことさらにですね、問題なのかということは、私はよく理解ができないわけでありますが」
“アメリカではよくあること”とはすり替えもいいところだが、実のところ、これもかなりおかしな話だ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのピーター・ランダース東京支局長は、日経新聞の取材に対し“米議会のそれと安倍首相のそれとは性質が異なる”と疑義を呈している。
「米議会のスタンディングオベーションは安倍晋三首相の所信表明演説のケースと性質が違う。米議会では、演説する人に賛同を示すために皆が立って拍手するのに対して、安倍首相の場合は、その場にいない自衛隊員や海上保安庁の職員に敬意を表すために拍手を呼びかけた。私の記憶では、そのような呼びかけは米国でも珍しいと思う」(日経新聞10月10日付)
つまり、安倍政権が仕掛けた、そこにはいない自衛隊などを礼賛するスタンディングオベーションは、米議会ではほとんどありえないというのだ。
ようするに、安倍首相がいう「自発的」というのはまったくのウソで、例のグロテスクなスタンディングオベーションは自然発生でもなんでもなく、台本からオーディエンスの仕込みまで、明確に計画したうえでの行動。しかも“アメリカではよくあること”という妙に自慢げな言い分も、実はありえないことだったのである。側近に仕掛けさせておいて、問題視されるやすぐさま逆ギレ。これが一国の首相がやることなのか。呆れてものも言えない。
だが、わたしたちが忘れてはならないのは、このグロテスクなスタンディングオベーションのそもそもの目的だ。これは安倍首相の「政治力」を党内外に見せびらかすパフォーマンスであったのと同時に、今後、新安保法下で自衛隊に“命を掛けさせる”事態が発生することを想定した、地ならしの意味がある。まるで戦中、徴兵制や国民徴用令と同時に、政府の意に沿わない人間に対する「非国民」のレッテル貼りが横行した状況を、約70年が経過したいま、再現しようとしているかのようだ。
国のために命を投げ出すことを礼賛する安倍政権は、この国を着実に戦中体制に仕立て上げようとしている。そのことを、わたしたちはよく自覚するべきだ。
(編集部)
最終更新:2017.11.24 07:17
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