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古舘伊知郎が『あさイチ』でワイドショー進出を宣言!? 権力に媚び弱いものいじめに走るメディア状況を変えられるか
古舘プロジェクト公式サイトより
当サイトでも取り上げたが、4日の『あさイチ』(NHK)戦争特集の放送は大変な反響を呼んだ。その内容が安倍政権の宣伝機関となってしまった最近のNHKではほとんど見ることのできない、攻めたものだったからだ。
まず、井ノ原快彦が現在の日本に「戦争へ向かう」空気があることをはっきりと指摘、NHK解説委員の柳澤秀夫は「右から左にきたものをそのまんま『こうですよ』って垂れ流すのは、ぼくらの仕事を果たしていないと思う」と自局の批判とも受け取れるようなジャーナリズム論を展開。これを受けて、井ノ原と有働由美子も「叩かれてもいいから発言していくことが大事だ」と語ったのだ。籾井会長の独裁に支配され、言論の自由がなくなったNHKで、こうした発言をしたことは高く評価すべきだろう。
そんな『あさイチ』だが、翌5日のゲストは、その政権に叩かれ続け、メイン『報道ステーション』(テレビ朝日)のキャスターを降板したばかり古舘伊知郎だった。
古舘は覚悟を見せたばかりの『あさイチ』出演者たちの前でいったい何を語るのか。注目して見ていたところ、その内容はまったくの拍子抜けだった
古舘は井ノ原に「是非、小池さんの後は都知事になってください」と語りかけたり、井ノ原・有働コンビの司会ぶりをベタ褒めしたものの、前日の番組内容にはまったく触れなかった。
また、井ノ原から『報道ステーション』の思い出を質問されても、「12年服役して出てきた時の気分です」と、バラエティ番組でしょっちゅうしゃべっている視聴者からの苦情の電話や罵詈雑言が殺到していたこと、それにすべて目を通していたことなどを自慢げに語ったものの、政権から圧力を受けていたことや、現在のテレビ、報道番組のあり方について言及することはなかった。
イノッチはさらにこの国の状況をどう考えているかを質問したが、これに対しても、古舘はあたりさわりのないことしか答えなかった。
「いろんなこと個々に思いますよ。都知事選のこととかもいろいろ感じるところもありますし、現政権の金融政策についても思いますし、素晴らしいと思うところも、これ違うんじゃないと思うところもありますし」
安倍政権評価の例までが「改憲」や「安保」でなく「金融政策」……。とにかくこの及び腰には完全に肩透かしをくらったかたちだ。
もっとも、この日の『あさイチ』で、古舘はひとつだけ興味深い発言をしていた。それは、今後の仕事について語った時だ。古舘は、『報ステ』のキャスターになる前のように、バラエティの仕事やスポーツ関係の仕事など、いろいろな仕事をしたいと語りながら、こんな言葉を付け加えたのだ。
「『報道ステーション』を12年やったってことは、良い意味でも悪い意味でも、もう取り返しつかないんで、自分のなかに血肉として入ってるんで。報道の真ん真ん中の『報道ステーション』の総合司会みたいなことはできませんけれども、報道まわりみたいなところでもうちょっとカジュアルにしゃべったりすることは是非やらせてもらいたいと思ってるんです」
古舘が報道に関係した仕事をやりたいと発言するのは、『報ステ』降板後、はじめてのことだろう。『報ステ』から離れて5カ月、古舘は再び、ニュースにかかわりたいと思い始めているのではないか。
しかも、「報道まわりみたいなところ」「報道のど真ん中よりもうちょっとカジュアルにしゃべれるところ」というのは、ワイドショーの司会者を意識した発言だ。
たしかに、古舘がワイドショーの司会をやるというのはアリかもしれない。というのも、今のワイドショーはほとんどが、強いものに媚び、弱いものいじめに血道あげる下劣な扇動ショーと化しており、政治的にも安倍政権の問題点から国民の目をそらすどころか、政権の宣伝役を担う存在に成り果てているからだ。
たとえば、安倍擁護はもちろん韓国ヘイトのようなコメントまで平気で口にする『とくダネ!』(フジテレビ)の小倉智昭、安倍首相出演の際には見るに堪えないようなヨイショを繰り広げた『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ)の宮根誠司、安倍首相の寿司友だち、田崎史郎の政権PRを有り難がって拝聴するだけの『ひるおび!』(TBS)恵俊彰、権力や大物芸能人の不祥事は一切スルーする一方で、軽微な不正を自慢げに叩く『スッキリ!!』(日本テレビ)加藤浩次、そして、ジャーナリストのような顔をしつつ実際はもっとも権力に媚びる司会進行をする『直撃LIVE グッディ!』の安藤優子……。彼らの代わりを、古舘がつとめ、『報ステ』で見せたような安倍政権への切り込みを見せてくれたら、今の閉塞した政治状況も少しは改善されるだろう。
もっとも、一方では、今の古舘にそこまで期待できるのか、という懸念もある。このところの古舘を見ていると、それこそニュースから解放されたはしゃぎっぷりばかりが目立ち、骨のある反権力的なスタンスがまったく感じられないからだ。
古舘は『あさイチ』で、「『報道ステーション』のときは、真ん中に座っている限り、やっぱりバランスをとった発言をしていかないといけない。(でもいまは)若干は自由に言える立場になっていると思うし」と語っていたが、それはたんにくだらないギャグを連発するようになっただけで、同番組での発言を見てもわかるように、政治的にはむしろ『報ステ』のときよりもずっと周囲の空気を読んで慎重になっている気さえする。
ワイドショーの司会をやらせてみたら、宮根とたいして変わりはなかった、という結果にならなければいいのだが……。
(井川健二)
最終更新:2016.08.09 07:06
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