ビジネスに関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
年収100億円でも税率10%、日本もタックスヘイブンだった? 大企業と富裕層に優しい安倍政権の税制のカラクリ
首相官邸ホームページより
タックスヘイブン(租税回避地)のダミー会社やオフショア口座を通じて、所得や資産を隠し、税金を逃れる租税回避行為の存在が「パナマ文書」をきっかけにクローズアップされた。
だが、富裕層や大企業のみが得をするという歪な構造は、タックスヘイブンの問題だけではない。いま日本では、安倍政権によって、まさに富裕層優遇、庶民無視の“格差助長税制”が推し進められており、その実態がまたひとつ公的な資料から明らかになったのだ。
まず、一般的に富裕層ほど税負担率が上がる(累進性がある)と思われている所得税。だが驚くことに、年100億円超の富裕層の所得税負担率は、たったの「11.1%」だというのだ。
この数値は、財務省から公表された「申告納税者の所得税負担率(平成25年分)」に記載されている事実である。民進党の玉木雄一郎衆議院議員の要求により、明らかにされたものだ。
この資料からは所得税負担率が所得層別にわかるのだが、所得税は総所得として合算されたものに、5%から40%の6段階の超過累進税率が課税される仕組みになっている(2014年まで。2015年からは5%から45%の7段階。平成25年は2013年)。
このため、本来ならば、お金持ちであればあるほど、負担率が高まるはず。たしかに公表された数字を見ると、合計所得金額1億円までは、ゆるやかに増加している(27.5%)。ところが、1億円を超えるとそれが減少し始め、100億円超となると、なんと11.1%まで所得税負担率が低下してしまうのだ。この所得税負担率は1000万円の階級とほぼ同水準(10.8%)だ。
この背景には分離課税となっている金融所得が軽課されている現状があると、玉木議員は指摘する。
「株式譲渡や配当、利子などの金融所得は総所得に合算されずに、分離課税になります。その税率は20%です。こうした金融所得が中心の所得階級の税率は20%に近づいていくことになります。株式を保有しているのは圧倒的に富裕層が多く、今回の数字では、1億円を超えると『合計所得金額のうち株式譲渡等の占める割合』が急増しています。こうした富裕層が金融所得分離課税の恩恵を受けているのです」
2012年末から始まったアベノミクスでは、株高になり株式保有者はアベノミクスバブルの恩恵を受けたとされるが、実際の恩恵を受けたのは、合計所得金額が1億円を超える層で、株式を持つものと持たざるものとの間での格差がますます広がったということがわかるのだ。
しかも、安倍政権による“格差助長税制”は、この所得税のウソだけではない。企業に対しても、安倍政権が大企業ばかりを優遇し、国の根幹を支えている中小・零細企業を冷遇している現実を同様に「資本金階級別の法人税(国税)の状況(平成25年度)」が明らかにしている。
なんと、大企業の“本当の法人税”は、たったの「13.6%」だったのだ。
もともと、日本の法人税は諸外国に比べて高いとされてきた。アジア諸国、なかでもシンガポール(17%)、香港(16.5%)並みの法人税率にすべきだという主張が、財界から大きく喧伝されている。
これを受けて安倍政権は、企業の国際競争力を高めるために、成長戦略の一環として、32.11%の法人実効税率を、2016年度に29.97%に、2018年度に29.74%へと2段階で引き下げる。
ところが、こうした法人税改革を進めずとも、実際には、国税だけをみればすでに「15.6%」と、シンガポール(17%)、香港(16.5%)並みの税率になっているというのだ。いったいどのようなカラクリがあるのか。玉木議員が解説する。
「たしかに、名目上の法人実効税率は、国税、地方税あわせて、32.11%で、国税に限れば名目上の法人税率は25.5%ですが、日本の税制には、他国にはない様々な特別な優遇措置、いわゆる『租税特別措置』などが存在します。これら各種の優遇措置を踏まえた『実際の』法人実効税率(国税)は、『15.6%』と低いものだったのです。それでも、シンガポール、香港以上に、下げようというのでしょうか」
この「資本金階級別の法人税(国税)の状況(平成25年度)」は、玉木議員が財務省に度重なる要求をしてきた末、やっと出てきたもの。これは、法人が実際に負担した法人税率を資本金階級別にしたものだ。
全企業(課税可能な利益計上法人)平均は、「15.6%」で、「租税特別措置」などの様々な特別な優遇措置が差し引かれていることがわかる。
たとえば、資本金1億円以下の法人(中小企業)には軽減税率があり、「資本金1000万円以下の単体法人」では「13.6%」、「資本金1000万円超1億円以下の単体法人」では「17.6%」と法人税が軽減されている。軽減税率の効果がなくなる「資本金1億円超10億円以下の単体法人」では「22.3%」と名目上の法人税率にかなり近い数字になっている。ならば、「資本金10億円超の単体法人及び連結法人」では、さらに数字が高くなるはずだ。
ところが、である。なんと、「資本金10億円超の単体法人及び連結法人」は「14.6%」と、全企業(課税可能な利益計上法人)平均の「15.6%」さえも下回ってしまうのだ。
この理由を玉木議員はこう分析する。
「租税特別措置のうち、研究開発減税の恩恵を受けられるのは大企業。さらに、子会社段階で法人税が課税されることを踏まえ、二重課税を避ける観点から設けられている『外国子会社配当等益金不算入』の恩恵も子会社を外国に有する大企業ほど恩恵を受けやすくなるのです。当初は財務省も出し渋りましたが、さらに、『資本金10億円超の単体法人及び連結法人』のうち『資本金100億円超の単体法人及び連結法人』の税率を要求したところ、出てきた数字は『13.6%』だったのです。これは『資本金1000万円以下』の中小企業と同じなのです」
さらに、玉木議員はより詳細な区分の階級別の「実際の」法人実効税率(国税)を要望しているが、今年度の予算が通過したとたん、財務省から資料が出てこなくなったという。
安倍政権は、法人税を下げろという財界の要望に応え、法人税減税を打ち出すが、消費税は増税の一方だ。まずは、消費増税の前に、法人税や所得税をとるべきところからしっかりとることを優先するべきではないか。
事実、ノーベル経済学賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツ氏(米コロンビア大教授)も、安倍政権の税制について疑義を呈している。スティグリッツ氏は今年3月16日、政府の「国際金融経済分析会合」に出席したのだが、そこで、消費増税の先送りだけでなく、法人税減税へも反対を表明。さらに、所得税の累進性の強化も安倍政権に提言した。安倍政権が一向に省みない格差是正が、経済の成長にとって重要であることを指摘したのである。
それでも、財界にべったりの安倍政権は、今後も格差助長の税制を推進し続けるだろう。しかし、大企業だけが富を増やしても、実質賃金や消費を増加させるどころかむしろ停滞させてしまっていることは、すでに現実が証明している。
「これからも経済最優先だ」と嘯き続ける安倍首相だが、その本質は、公的資料が示すように“富裕層最優先”=“庶民見殺し”。この政権を一刻でも早く退場させなければ、国民の生活はますます困窮を極めることになるだろう。
(小石川シンイチ)
最終更新:2018.10.18 01:41
関連記事
新着 | 芸能・エンタメ | スキャンダル | ビジネス | 社会 | カルチャー | くらし |
斎藤知事が百条委員会欠席で「知事会出席」を理由にするも…前の知事時代には政府主催の知事会を欠席しあの時の懇話会に参加
国民民主・玉木雄一郎の不倫に“政治活動中の公私混同”疑惑が浮上! ヤバすぎる差別体質とビジネス右翼ぶりにも懸念の声
松本人志「訴訟取り下げ」でワイドショーが醜悪な忖度! 吉本御用スポーツ紙は「物証なし」だけ強調し復帰を扇動
萩生田光一ら非公認“裏金”候補に自民党から政党助成金2000万円振込み発覚も…選挙情勢では続々当選の可能性
“裏金”“統一教会”の萩生田光一を応援する極右勢力と有名テレビコメンテーター 一方、新たな裏金疑惑を検察が捜査開始の報道も
石破茂が史上最速で馬脚あらわに! 手のひら返し解散、統一教会も裏金も再調査せず、菅・麻生以外の人事も酷い
安倍首相が統一教会に選挙支援依頼の証拠を朝日がスクープ! 進次郎のバックにいる菅義偉や萩生田光一もあらためて追及せよ
高市早苗のヤバさは極右思想だけじゃない! 総務省文書問題、統一教会との関係、政治資金規正法違反をめぐる“大嘘”の数々
傀儡・小泉進次郎が改革できない“キングメーカー菅義偉”の官房機密費疑惑! 不正選挙やメディア対策にも
兵庫・斎藤知事問題で維新の責任を改めて検証! 局長を“自死”に追い詰めた維新県議、課長の自死は吉村肝煎り優勝パレードが原因か
松本人志「訴訟取り下げ」でワイドショーが醜悪な忖度! 吉本御用スポーツ紙は「物証なし」だけ強調し復帰を扇動
『仰天ニュース』“赤木ファイル”特集で安倍政権・公文書改ざん事件の卑劣があらためて注目! 中居正広も「あってはならない」と
ジャニーズ会見で井ノ原の「ルール守って」発言賞賛と記者批判はありえない! 性加害企業が一方的に作ったルールに従うマスコミの醜悪
ジャニーズ性加害でジュリー社長辞任もテレビ局は検証放棄! 局内での行為が疑われるテレ朝とNHKの無責任な姿勢
ジャニーズ性加害問題で露わになったテレビ局の共犯性! ジュニアの練習場を提供したテレビ朝日はジュリーの謝罪後も批判なし
坂本龍一が最後まで中止を訴えた「神宮外苑森林伐採・再開発」の元凶は森喜朗! 萩生田光一も暗躍、五輪利権にもつながる疑惑
れいわから出馬 水道橋博士が主張する「反スラップ訴訟法」の重要性! 維新・松井だけでなく自民党も批判封じ込めで訴訟乱発
自公維新が提出「国民投票法改正案」にネットで批判の声広がる! 小泉今日子も〈#国民投票法改正案に反対します〉と投稿
三浦瑠麗が「医者はワイドショー見てコロナ怖がりすぎ」と医療従事者を嘲笑! 専門家から反論されると半笑いで「私、医者じゃないんで」
Netflix版『新聞記者』の踏み込みがすごい! 綾野剛が森友問題キーマン官僚に、安倍御用ジャーナリストはあの人が…
国民民主・玉木雄一郎の不倫に“政治活動中の公私混同”疑惑が浮上! ヤバすぎる差別体質とビジネス右翼ぶりにも懸念の声
“裏金”“統一教会”の萩生田光一を応援する極右勢力と有名テレビコメンテーター 一方、新たな裏金疑惑を検察が捜査開始の報道も
窮地の岸田首相が一番頼りにしているのはあの「Dappi」“仕掛人”説の自民党・元宿仁事務総長!「日本の黒幕」特集本が暴いた新事実
兵庫・斎藤知事の「パワハラ告発職員」追いつめに維新県議が協力していた! 職員は吉村知事肝いり「阪神優勝パレード」めぐる疑惑も告発
“既成政党に与しない”石丸伸二の選対本部長は「自民党政経塾」塾長代行! 応援団筆頭に統一教会系番組キャスターの元自民党職員も
小池百合子が都幹部だけでなく“最側近”を天下りさせていた!「大日本帝国憲法復活」「国民主権を放棄せよ」の請願に関与の元特別秘書
大阪万博建設現場のメタンガスが急増し1日2tも発生! 3月の爆発事故では「通報遅れ」「天井破損」を隠蔽していたことが発覚
萩生田光一が裏金問題で提出した「領収書の嘘」が発覚! 安倍元首相が「官房機密費100 万円を参院候補者に手渡し」報道も
吉村知事はガス爆発でも開き直り「他区域ではガスが出ない」と大嘘! 地下鉄工事でメタンガス確認、大阪市も発生可能性認めたのに
吉村知事が「万博出禁」と攻撃した玉川徹のコメントはどれも当たり前の指摘ばかり! 吉村の言論弾圧体質はプーチン並み
維新ゴリ押し 万博&カジノにかかる金はインフラ整備を含めると8000億円以上だった! 大半が国と大阪市の負担、巨額の税金も投入
防衛費増額の財源で「法人税」を削除し「国民全体の負担」だけにした政府有識者会議は読売社長、日経元会長、朝日元主筆がメンバー
菅首相の追加経済対策の内訳に唖然! 医療支援や感染対策おざなりでGoToに追加1兆円以上、マイナンバー普及に1300億円
菅首相のコロナ経済支援打ち切りの狙いは中小企業の淘汰! ブレーンの「中小は消えてもらうしかない」発言を現実化
菅首相の追加経済対策が“自助”丸出し! コロナ感染対策は10分の1以下、大半が新自由主義経済政策に…坂上忍も「バランスおかしい」
悪評「マイナポイント」事業の広報費は54億円、1カ月で半分を浪費! 事務局事業も電通がトンネル法人通じて140億円
三浦瑠麗のアマプラCMは削除されたが…amazonもうひとつの気になるCM! 物流センター潜入取材ルポが暴いた実態とは大違い
安倍首相“健康不安”説に乗じて側近と応援団が「147日休んでない」「首相は働きすぎ」…ならば「147日」の中身を検証、これが働きすぎか
正気か? 安倍首相の諮問機関「政府税調」がコロナ対策の財源確保と称し「消費税増税」を検討! 世界各国は減税に舵を切っているのに
東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望! コロナで病院経営悪化も安倍政権は対策打たず加藤厚労相は “融資でしのげ”
斎藤知事が百条委員会欠席で「知事会出席」を理由にするも…前の知事時代には政府主催の知事会を欠席しあの時の懇話会に参加
萩生田光一ら非公認“裏金”候補に自民党から政党助成金2000万円振込み発覚も…選挙情勢では続々当選の可能性
安倍首相が統一教会に選挙支援依頼の証拠を朝日がスクープ! 進次郎のバックにいる菅義偉や萩生田光一もあらためて追及せよ
高市早苗のヤバさは極右思想だけじゃない! 総務省文書問題、統一教会との関係、政治資金規正法違反をめぐる“大嘘”の数々
傀儡・小泉進次郎が改革できない“キングメーカー菅義偉”の官房機密費疑惑! 不正選挙やメディア対策にも
兵庫・斎藤知事問題で維新の責任を改めて検証! 局長を“自死”に追い詰めた維新県議、課長の自死は吉村肝煎り優勝パレードが原因か
自民党総裁選広告「THE MATCH」は「おじさん」どころか「腐敗ジジイの詰め合わせ」だ! 担当の平井広報本部長は親族ぐるみ税優遇
岸田首相「総裁選不出馬」にごまかされるな! 後継候補の河野太郎、高市早苗、石破茂、小泉進次郎、小林鷹之の欺瞞
都知事候補討論会ですっとぼけるも…小池百合子に清和会時代、裏金を受け取っていた可能性が浮上! 派閥上納額は安倍を超える120万円
裏金裁判で安倍派幹部たちの嘘が明らかに! 抜け穴だらけの政治資金規正法改悪で幕引き図ろうとする自民・岸田政権
瀬戸内寂聴が生前、語っていた護憲と反戦…「美しい憲法を汚した安倍政権は世界の恥」と語り、ネトウヨから攻撃も
「BTSグラミー賞逃す」報道に「韓国人のニュースいらない」「日本人の受賞を報じろ」と炎上攻撃が! 日本スゴイの精神的鎖国
ぼうごなつこ『100日で崩壊する政権』を読めば、安倍首相が病気で辞任ししたのでなく国民が声をあげ追い詰めたことがよくわかる
百田尚樹が「安倍総理にお疲れ様とメールしても返信なし、知人には返信があったのに」とすねると、2日後に「安倍総理から電話きた」
村上春樹が長編小説『騎士団長殺し』とエッセイ『猫を棄てる』に込めた歴史修正主義との対決姿勢! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
村上春樹がエッセイ『猫を棄てる』を書いたのは歴史修正主義と対決するためだった! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
安倍首相に利用された星野源がエッセイに書いていた“音楽が政治に利用される危険性” 「X JAPANを使った小泉純一郎のように」
“宇予くん”で改憲煽動のJCと手を組んだTwitter Japanはやっぱり右が大好きだった! 代表は自民党で講演、役員はケントに“いいね”
ウィーン芸術展公認取り消しを会田誠、Chim↑Pomらが批判! あいトリ以降相次ぐ“検閲”はネトウヨ・極右政治家の共犯だ
「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収
幸福の科学出家騒動は清水富美加個人の責任なのか? カルト宗教信者の子どもたちが抱える問題
話題の本『夫のちんぽが入らない』のタイトルに込められた深い意味…しかし一方では広告掲載拒否の動きが
福島の子ども甲状腺がん検診「縮小」にノーベル賞の益川教授らが怒りの反論! 一方、縮小派のバックには日本財団
介護殺人に追い込まれた家族の壮絶な告白! 施設に預ける費用もなく介護疲れの果てにタオルで最愛の人の首を…
宇多田ヒカル「東京はなんて子育てしにくそう」発言は正しい! 英国と日本で育児への社会的ケアはこんなに違う
今もやまぬ人工透析自己責任論の嘘を改めて指摘! 糖尿病の原因は体質遺伝、そして貧困と労働環境の悪化だった
『最貧困女子』著者が脳機能障害に! 自分が障害をもってわかった生活保護の手続もできない貧困女性の苦しみ
雨宮塔子が「子ども捨てた」バッシングに反論! 日本の異常な母性神話とフランスの自立した親子関係の差が
『NEWS23』に抜擢された雨宮塔子に「離婚した元夫に子供押しつけ」と理不尽バッシング! なぜ母親だけが責任を問われるのか
小島慶子が専業主夫の夫に「あなたは仕事してないから」と口にした過去を懺悔!“男は仕事すべき”価値観の呪縛の強さ
人気記事ランキング
カテゴリ別ランキング
社会
人気連載
アベを倒したい!
ブラ弁は見た!
ニッポン抑圧と腐敗の現場
メディア定点観測
ネット右翼の15年
左巻き書店の「いまこそ左翼入門」
政治からテレビを守れ!
「売れてる本」の取扱説明書
話題のキーワード