伝説のまま逝った森田童子は全共闘世代の挫折感を癒す存在だった…親交のあった劇作家が素顔と音楽を語る

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

森田童子引退の理由は? ドキュメント映像で語っていた消えていく覚悟

 また、森田は、当時、まだ根強く残っていた「男は強くたくましく」「女はおしとやかに」という性の固定観念からも解放してくれる存在でもあったという。

「当時はさまざまな価値観が大きく転換し始めた時期ではありますが、まだ、男らしさ、女らしさという意識は残っていました。そんななかで、森田童子の歌の内容は、センチメンタルというか、ある種“女々しさ”と呼ばれるようなものだったかもしれない。でも、その女々しさを堂々と歌い上げたことで、男女の性差を超えて、孤独感のある人、友人をな無くした人、運動に挫折した人、そういう、やさしくて弱虫かもしれないという人たちに響いた。『さよなら ぼくの ともだち』という歌の中にも『弱虫でやさしい静かな君を僕はとっても好きだった』という一説があるんですが、そんなことを歌う人はこれまでいなかったんですよ。強がっている人はたくさんいるけど、強い人なんて実はいない、弱虫であること、それが好きだったといってくれた」

 森田の音楽を“女々しさ”という言葉で説明する高取だが、実は森田の側も高取の作品に同じく“女々しさ”を見ていた。高取の代表作『聖ミカエラ学園漂流記』を批評する文章の中で、森田はこう書いている。

〈『聖ミカエラ学園漂流記』の高取英の劇作法は、拙い少年少女の肉声を惜りることによって、高取英の女々しい反逆の試みは、確かに不思議な説得力を持ち得た〉

 ふたりが表現で深く繋がっていたことを物語るエピソードだが、しかし、その高取も、森田の素顔についてはよくわからないままだったという。

「サングラスを取った素顔は、わたしも見たことがありません。カーリーヘアもおそらくカツラでしょうし、素顔は一切隠してましたね。プライベートなことも一切話さない。前田さんと結婚していることも、本人たちは一切話しませんでした。それに物静かで、とつとつとしか喋らない人なので、感情の動きもよくわからなかったし、曲のイメージそのままでした」

 1983年、彼女が音楽活動を引退する直前には、こんなこともあったという。

「『聖(セント)ミカエラ学園漂流記』(群雄社出版)の出版記念パーティーに来ていただいたんです。それで、『スピーチをお願いできますか?』って言ったところ、彼女はイヤだとははっきり言わないで『え、え……』って。そのあと、3分ほどしたらその場から消えていました。スピーチの話を急に言われてとまどったのでしょう、悪いことしたなって」

 森田らしいエピソードだが、それからまもなくして、森田は本当にすべての表舞台から完全に姿を消してしまった。

「引退の理由を出産とか病気とかいう人もいましたが、そういったことではなくて、音楽活動をするなかで、自分が言いたいことはもう言いつくしたという感じだったんじゃないかな。80年頃、森田童子の屋外ライブの企画から実現までを追った『夜行』というドキュメント映像があるんですが、その中で森田が『私たちの歌が消えていくさまを見てほしいと思います』という言葉を口にしています。やることをやったら消えていく、最初からそういう覚悟があったんでしょう」

 しかし、彼女の歌と記憶はそれから30年以上たったいまも、1970年代に青春を過ごした人々の心の中に強く刻まれている。7月19日には、高取も出演する追悼イベント「夜想忌 ~さよならぼくのともだち~ 追悼 森田童子」が開催される予定だ。(敬称略)

最終更新:2018.10.18 03:49

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

伝説のまま逝った森田童子は全共闘世代の挫折感を癒す存在だった…親交のあった劇作家が素顔と音楽を語るのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。全共闘森田童子高取英高橋南平の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 森友再調査問われ河野、岸田が呆れた忖度発言! 高市は桜で大嘘
2 総裁選に騙されるな、政府のコロナ対策の酷さは全く変わってない! 
3 安倍晋三が「統一教会」イベントでトランプと演説!同性婚や夫婦別姓を攻撃
4 八代の共産党攻撃の根拠「公安調査庁」がまるで共産党PRの“失笑”報告書
5 葵つかさが「松潤とは終わった」と
6 山口敬之の逮捕をツブした中村格の警察庁長官就任に広がる抗議!
7 高市推薦、自民党ヒトラー本が怖すぎ
8 安倍が支援、高市早苗が「さもしい顔して貰えるもの貰う国民ばかり」
9 高市早苗にネトウヨが総結集、「天照大神の再来」とバカ騒ぎ、膳場貴子を攻撃
10 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
11 岡田斗司夫“ゲス”の秘密が著書に!
12 安倍晋三の総裁選支配に今井尚哉、北村滋の二大側近がまたぞろ暗躍か!
13 八代英輝弁護士が「共産党は党綱領に暴力的革命」とデマ、維新の政治家も丸乗り!
14 統一教会が安倍トランプ会談を仕掛けた
15 DHCテレビが敗訴判決!辛淑玉が語る「犬笛によるヘイト」と判決 
16 自民党政権が「一般病床削減」を継続、看護師5万人削減の計画も
17 堀江、竹中だけじゃない 菅首相に「がんばった」と同情論寄せる世論
18 山口敬之逮捕を握り潰した“官邸の忠犬”中村格が警察庁ナンバー2に!
19 「政治のせいで命失う」正論を口にした野々村真が炎上させた自民党応援団!
20 松尾スズキが“加トちゃん化”?
1安倍晋三が「統一教会」イベントでトランプと演説!同性婚や夫婦別姓を攻撃
2八代英輝弁護士が「共産党は党綱領に暴力的革命」とデマ、維新の政治家も丸乗り!
3八代の共産党攻撃の根拠「公安調査庁」がまるで共産党PRの“失笑”報告書
4高市早苗にネトウヨが総結集、「天照大神の再来」とバカ騒ぎ、膳場貴子を攻撃
5山口敬之の逮捕をツブした中村格の警察庁長官就任に広がる抗議!
6総裁選に騙されるな、政府のコロナ対策の酷さは全く変わってない! 
7河野太郎がワクチンを総裁選に利用!はじめしゃちょー相手にデマも
8堀江、竹中だけじゃない 菅首相に「がんばった」と同情論寄せる世論
9「政治のせいで命失う」正論を口にした野々村真が炎上させた自民党応援団!
10河野太郎が会見で露骨な安倍忖度!森友再調査の質問に答えずワクチンで大嘘
11安倍晋三の総裁選支配に今井尚哉、北村滋の二大側近がまたぞろ暗躍か!
12自民党政権が「一般病床削減」を継続、看護師5万人削減の計画も
13 森友再調査問われ河野、岸田が呆れた忖度発言! 高市は桜で大嘘
14DHCテレビが敗訴判決!辛淑玉が語る「犬笛によるヘイト」と判決 

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄