ノーベル賞受賞、カズオ・イシグロが評論家の“ネタバレ自粛”に疑義!「私の作品はミステリーではない」

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町山智浩や春日太一も過剰なネタバレ糾弾の風潮に反論

 ようは、『スプリット』の作中で突如、01年日本公開のシャマラン監督作品『アンブレイカブル』 に登場したデイヴィッド・ダン(ブルース・ウィルス)が現れ、この作品は『アンブレイカブル』と同じ世界線の物語であることが明らかになるということなのだが、表立って「続編」といったかたちでプロモーションしているわけではないため、『アンブレイカブル』を事前に見ていない観客も多くいるであろうことが予想され、そして、『アンブレイカブル』を見ていないとその展開が何のことなのかさっぱりわからないまま劇場を後にすることになる。

 町山氏のツイートはそのことを踏まえてのものであり、また、上記のことをズバリ指摘したわけではなく、『シックス・センス』と『サイン』という囮も組み込んだ、かなり気を使った文言だった。ところが、それに対しネット上で大炎上したのである(余談だが、この話はシャマラン監督自身もツイッターで明かしており、『アンブレイカブル』と『スプリット』の続編となる『Glass(原題)』を19年に公開予定だということも自身のツイッターアカウントで書いている)。

 以上挙げてきたようなことは、「ネタバレ」を人々がかまびすしく糾弾し、そして、「ネタバレ」炎上を過剰に恐れたメディアが戦々恐々としながら情報を出すようになったことから起きているわけだが、そもそも、小説でも映画でも「ネタバレ」というものはそこまで作品受容を損なうものなのだろうか?

「WOWOWオンライン」で公開されている『日本沈没』『新幹線大爆破』の解説トークショーを収録した動画『町山智浩×春日太一の映画塾!』の冒頭で、町山氏と映画史・時代劇研究の春日太一氏はこのように語っている。

春日「映画って、わかって見たって面白いですからね、本当に」
町山「昔は『太陽がいっぱい』とか『俺たちに明日はない』とか、全部結末はテレビ(のCM)で放送して、結末はわかったまんま、それをもう一回(映画館に)確認しに行きましたよ。いきなりラストシーンで蜂の巣になって死んだりするのを、テレビの予告編とかでやってましたよ」
春日「予告編でけっこう大事な場面流してましたよね」
町山「誰もネタバレなんて言わなかったですよ。なんなんだいったい、いまの世の中」

 行き過ぎたネタバレ忌避は、メディア上で批評や作品紹介の場を奪うことにつながり、そしてそれは、読者の作品の読みを歪め、また、浅くすることにつながっていく。それは、作品を受け取る側にとっても、作者の側にとっても、なんの益にもならないことだろう。

最終更新:2017.12.09 10:30

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