“現代の治安維持法”共謀罪が審議入り! 権力批判しただけで逮捕虐殺された小林多喜二の悲劇が再び現実に!

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 前述の通り、『一九二八年三月十五日』が「戦旗」に掲載される際は、検閲にかかりそうなところは事前に伏せ字にしたり、削除したりしていたのにも関わらず、当局は「戦旗」を発売禁止にした。また、その後、単行本とした発行された際にも発売禁止の処分を受けている。

 ここで出てくる登場人物たちはおおよそ実在のモデルがおり、当時、小林多喜二が暮らしていた小樽で実際に見聞きしたものが創作の動機となった。「処女作の頃を想う」という文章のなかで彼はこのように綴っている。

〈雪に埋もれた人口十五万に満たない北の国の小さい街から、二百人近くの労働者、学生、組合員が警察にくくり込まれる。この街にとっても、それはまた只事ではなかった。
 しかも、警察の中でそれら同志に加えられている半植民地的な拷問が、いかに残忍きわまるものであるか、その事細かな一つ一つを私は煮えくりかえる憎悪をもって知ることが出来た。私はその時何かの顕示を受けたように、一つの義務を感じた。この事こそ書かなければならない。書いて、彼奴等の前にたたきつけ、あらゆる大衆を憤激にかり立てなければならないと思った〉

 特高警察の拷問がいかに残忍なものか、それを書いて大衆に伝えなければならない。その義憤が作家・小林多喜二を生んだのだが、同時にそれが原因で彼は若くして命を奪われることになる。権力を批判する小説を書いただけで逮捕され、拷問の果てに虐殺されたのだ。恐ろしい話である。

 ちなみに、小林多喜二が亡くなった後、警察はその死因を心臓麻痺と発表したが、その死体は拷問の果てに全身が腫れ上がっており、特に下半身は真っ黒に変色していたと伝えられている。警察発表が嘘なのは誰の目にも明らかだった。しかし、どの病院も特高警察に目をつけられるのを嫌がって解剖を拒否している。

『一九二八年三月十五日』には、小林多喜二の最期を予見させるようなこんな一文も含まれていた。

〈竜吉は警察で非道い拷問をされた結果「殺された」幾人もの同士を知っていた。直接には自分の周囲に、それから新聞や雑誌で。それらが惨めな死体になって引渡されるとき、警察では、その男が「自殺」したとか、きまってそういった。「そんなはず」の絶対にない事が分っていても、しかしそれでは何処へ訴えてよかったか?──裁判所? だが、外見はどうあろうと、それだって警察とすっかりグルになってるではないか。警察の内では何をされても、だからどうにも出来なかった〉

 繰り返すが、これは20世紀初頭に起こった過去の出来事であると看過していい問題ではない。これと同じことが、いま現在この国で繰り返されようとしているのだ。

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