『新世紀エヴァンゲリオン』とブラック企業の驚くべき関係! シンジくんの「逃げちゃダメだ」が意味するものとは…

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 このように本書はシンクロ率の高い比喩を連発しているのだが、とはいえ、すこし暴走モード気味な解釈もなくはない。

 たとえば、『エヴァ』がじつは現代社会が目指す「女性が活躍する社会」の実態を先取りしていたというくだり。著者はネルフで働く女性キャラをこう評する。葛城ミサトは未婚・子ナシの「負け犬」! しかもバリキャリの「カツマー(勝間和代のフォロワー)」! そして赤城リツコは最近ブームの「リケジョ」!……流行り言葉に無理矢理当てはめただけでは。

 また「使徒」についての記述にも疑問が残る。著者はまず、「使徒」=「労働者にとっての社会不安、および労働に関するルール変更などの象徴」だという。成果主義の導入や労働時間規制緩和などが、なぜ使徒とつながるといえば……どちらも「得体が知れない」から。もう無理にたとえないほうがいい。

 そんな著者の『エヴァ』に対するスタンスはとてもすがすがしい。

〈正直な想いを書き綴ることにしよう。私は『新世紀エヴァンゲリオン』は「面倒くさい」作品だと思っている。(中略)途中で見ることをやめたくなるし、見ても理解不能な作品なのである〉

『エヴァ』人気にあやかり、なかば炎上ねらいで書かれた感は否めない本書だが、しかし一方で労働社会の変化を読み解く「エヴァンゲリオン化」という視点は、的を射ている部分も多々あり、「トンデモ」だと一蹴できないのもたしかだ。

 時に2015年。放映開始から20年、作中の舞台設定とも重なる記念すべきこの年に公開される(はずだった)『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。制作現場がほかのアニメ制作会社と同じようにエヴァンゲリオン化=ブラック化していることは想像に難くない。今作では「ファイナルインパクト」が描かれるというが、先の暗いこの国の労働社会に希望を与えてくれる物語であればよいと思う。
(松本 滋)

最終更新:2015.12.09 11:04

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