スタバも遺伝子組み換え食品を支援!?「オーガニック」「有機」ブランドの現実

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『オーガニックラベルの裏側 21世紀食品産業の真実』(春秋社) 

ゴキブリ、ビニール片、歯、ネジ……異物混入事件が相次いで発覚しているが、このような目に見える“混入”よりも更に深刻な、目には見えない食の“混入”問題がある。

 さまざまな政治的活動でも知られるミュージシャン、ニール・ヤングは昨年末に、公式サイトで「GOODBYE STARBUCKS!!!」と宣言し、スターバックスの不買運動を訴え始めた。アメリカのバイオ化学メーカー・モンサントが遺伝子組み換え食材の使用明記を条例化したバーモンド州に対して訴訟を起こしており、この訴訟にスターバックスが加わっていることに対して、声をあげたのだ。

 今やスーパーの加工食品の70%に遺伝子組み換え素材が使われていると言われる。この遺伝子組み換え食材において圧倒的な世界シェアを持つモンサント。ニール・ヤングが「モンサントに加担しているスターバックスをボイコットする」と個人行動に出たのは、消費者には目立たぬところで支援をするというスタンスに不誠実さを感じたからだろう。

『オーガニックラベルの裏側』(クレメンス・G・アルヴァイ著/長谷川圭・訳/春秋社)を読むと、この「目立たぬところで」というスタンスが、オーガニック・ブーム全体に横たわっていることが分かる。著者は、有機農法とは名ばかりで、実際にはこれまでの流通形態に準じた「有機農法の“陳腐化”」が進んでいると指摘する。11週間に及ぶヨーロッパ横断取材で得た「エセ有機農法」の実態は、末恐ろしいものだった。

 例えば、ドイツの卵販売会社ハイデゴルト社の契約養鶏場。この会社のウェブサイトでは「青い空の下、黄金色に輝く穀物畑を背景に二羽の鶏が描かれ、右側には伝統的な木組みの家のイラストが添えられている」。しかし、実際の飼育の風景は「オーガニックという名の鶏地獄」。1区画に3000羽の鶏がひしめき合いながらひたすら泣き喚いていた。しかしこれでも「1平方メートルあたり6羽以下」というEUが定める基準値を違反してないという。

 ここにはトリックがある。有機飼育では1羽につき4平方から10平方メートルの土地が用意されることもあると伝えられるが、「鶏が実際にそれだけの空間を動き回ることはありえない」。当初から密閉空間で育てられストレスを溜め込んだ鶏たちは群れを成すことを覚えぬまま、本来の生態行動を乱され、自ら広い場所に出ることが出来なくなる。過度なストレス状態にある鶏同士が首や背中や尾を突つき合った結果、羽がむしり取られ感染症にかかりやすくなる行動障害を「カニバリズム」と呼ぶが、この障害によって、鶏たちは用意された広い農場に出ようとすらしなくなる。そして、この環境で育てられた鶏の卵が「有機飼育」「オーガニック」として市場に堂々と流通していく。

「採卵業界では、有機飼育用であっても、雄の雛は生まれたその日には孵化工場内のベルトコンベアーでシュレッダーまたはガス室に送られる」……こういった実情が隠されたまま、牧歌的なイメージ戦略だけで「有機」というフレーズが活用されていく。この手の「名ばかり有機」は、何よりも実際に小規模生産で有機飼育や農法を守り抜いている人たちを冒涜している。

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