新海誠に「気持ち悪いです」と言い放って怒らせた!『君の名は。』プロデューサー川村元気の仕事術

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「『告白』と『悪人』を同時に作った二〇一〇年が、僕の大きな転機でした。「どうしてもこういう映画にしたい」という意識が押し付けるくらい強烈にあって、血気盛んだったし、監督と編集で大喧嘩しても折れなかったんです。
 自分の作家性が作品に入り込みすぎて、このままいくと映画を作るという共同作業はもう無理だと思っていたとき、「本を書かないか」という話が来たんです」

 この時期の川村は、『モテキ』の大根仁監督に「悪魔」と呼ばれるほどだったという。しかし、本を書くようになって彼は変わることができた。

「それまでは一緒に映画を作る監督に自分の作家性をぶつけていた。一人で小説を書く行為において、初めて自分の作家性が何か、ということがわかった。何かを消失していく中で大切なものを発見するというテーマだったり、家族に対する違和感だったり、いくつか要素があったんです、僕の中で。
 そうしたら呪縛から解かれて、他人のフェティッシュや作家性をどれだけいびつな形で残しながら、エンタテインメントの作法に則ったものを作るか、というやり方に変わりました」(前掲『週刊文春エンタ!』)

 その結果として生まれたのが『君の名は。』だった。川村は続けてこう語っている。

「『君の名は。』では、「口噛み酒」とか、完璧すぎる奥寺先輩のキャラクターとか、新海さんのフェティッシュが出すぎちゃっているところを、逆に落とさないように気をつけました。新海さんの内側から出てくるものの味をなるべく薄めず、よりよい並びに構成したかった」(前掲『週刊文春エンタ!』)

『君の名は。』において、特に同作の脚本執筆段階で川村が果たした役割は大きいと新海監督は多くのインタビューで語っている。

『ほしのこえ』、『雲のむこう、約束の場所』のSF的要素と、『秒速5センチメートル』、『言の葉の庭』のすれ違う男女の恋という要素。『君の名は。』は、新海監督の過去作のおいしいとこ取りをしたようなストーリーなわけだが、そもそもそれは川村からの「新海誠のベスト盤を作ってほしい」(「エンタミクス」16年10月号/KADOKAWA)という一言から始まっている。

 それからは月に1回、監督自身が「ここまで徹底的に固める作業をやったのは初めて」(「日経エンタテインメント!」16年11月号/日経BP社)と語るほどの厳しい脚本会議を行い、物語を仕上げていった。そこでは、これまでの川村だったら削ぎ落とすように動いていたかもしれない、監督の「フェティッシュ」をうまく活かす方向で脚本づくりが進められていった。

 その最たるものが、先ほど川村も挙げていた「口噛み酒」だ。神主の娘であり、地元の神社で巫女を務めているヒロイン宮水三葉が口に入れ、それを吐き出した水からつくられるのがこの「口噛み酒」である。これは物語においてキーアイテムになるが、その裏にはこんな思いがあった。今月16日放送の『ゴロウ・デラックス』(TBS)にゲスト出演した新海監督はこのように語っている。

「男の子って小学生ぐらいのときに好きな女の子の縦笛を盗んで舐めるみたいな子がいたでしょ?(中略)僕もやってないですけど、その気持ちはちょっと分かるような気はしますよね。唾液のようなものって、特に10代ぐらいの男の子たちにとって1つのフェチ要素というか、たまらない部分なんじゃないかなと思って」

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