「お前はどっちの味方だ」山口組分裂で板挟み…ヤクザ専門ライターが明かす暴力団に支配された実話誌の実態

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鈴木智彦『ヤクザ専門ライター 365日ビビりまくり日記』(ミリオン出版)

 山口組の分裂騒動が混迷の度合いを増している。

 先月15日に新宿歌舞伎町で起きた小競り合いを皮切りにしばらく続いていた膠着状態が破られ、以降20件以上の諍いが起きている。結果、今月7日には、警察庁が両団体は「対立抗争状態」にあると認定するにいたった。その後も、14日には富山市の住宅街で発砲事件が発生。これから激化する抗争を見越して拳銃の密売価格が高騰しているとの情報まで出始めている。

 昨年の山口組分裂騒動以降、暴力団に関する報道が一気に加熱。「週刊大衆」(双葉社)、「週刊実話」(日本ジャーナル出版)、「アサヒ芸能」(徳間書店)といった、これまで継続的にヤクザ報道を掲載していた実話系雑誌のみならず、一般誌や大手新聞まで盛んにこの件を報道し続けているのはご存知の通りだ。

 その渦中、ヤクザ取材をメインに活動している記者やライターはどんなカオスに放り込まれていたのか。『ヤクザ専門ライター 365日ビビりまくり日記』(ミリオン出版)や『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文藝春秋)などの著書をもつライターの鈴木智彦氏は「創」(創出版)2016年4月号で、その舞台裏を綴っている。

〈山口組の分裂は、私を含め、暴力団記事を生業とする書き手の全ての仕事と収入を増加させた。しかし、同時に大きな試練にもなった。分裂報道では、中途半端な立ち位置が通じない。平時の時の記事とはなにもかもが異なる〉

 神戸山口組の側に立って記事を書くのか、それとも、6代目山口組の味方をして記事を書くのか。ヤクザ取材を行う者たちは、山口組取材において微妙なポジション取りを迫られることになる。

〈山口組にとって、分派した神戸山口組は造反者であり、裏切り者であり、自分たちの名を語る不届者である。逆にいえば、神戸山口組にとって、古巣の山口組は我が身を捨て、戦って当然の仇敵なのだ。敵味方に分かれた以上、どちらかの優位を書けば、そのまま反対側の不利をあげつらうことになる。下手をすれば、相手側を取り上げるだけで反対側の不平不満を誘発する。
「神戸山口組やと! 神戸は山口組の本拠地や。パチモンを神戸言うな!」
 対話の中で理不尽に怒鳴られたことは数知れない。いちいち真に受けていたら病むので、適当に流す〉

 山口組分裂に際し、メディアを媒介した「情報戦」が行われていたのだが、それは同時に、記者やライターに「苛酷な板挟み状態」を生み出したのだ。鈴木氏は当サイトの取材に対して、その体験をこう振り返る。

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