小保方晴子『あの日』出版で再燃! STAP 報道を改めて検証する(後)

ES細胞へのすり替えは小保方氏ひとりの問題か? 疑惑発覚前、若山教授が「ネイチャー」で語っていたこと

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 だが、実は、このFES1を作製した研究員は、小保方氏がCDB若山研に着任する1年前の10年3月にCDB 若山研から京都大学助教に転出しているのだ。小保方氏がそれを盗み出すというのはどう考えても不可能だろう。

 では、なぜ、このES細胞が冷凍庫から見つかったのか。作製した研究員がES細胞を置き忘れ、それが若山研→小保方研と、そのまま引き継がれていったと考えるのが妥当だが、もしそうだとしたら、小保方氏だけでなく、若山氏にも若山研の他のメンバーにもES細胞を混入させることが可能だったことになる。

 GOF-ESというES細胞も、STAP細胞の研究でコントロール(比較対照実験のこと)のために小保方氏に手渡されていたが、もとは〈若山氏が指示した別の研究に使用する目的で、11年5月26日から10月31日の間にCDB若山研メンバーによって作製された〉(調査委員会「研究論文に関する調査報告書」)ものだ。これまた、混入の可能性は、小保方氏だけでなく、若山氏や他の若山研メンバーにも同等にある。

 3つめのES細胞129B6 F1ES1については、12年5月に若山氏が比較対照実験のために129B6F1CAG-GFPマウスの独立した胚より樹立した受精卵 ES細胞株だった。これについては、混入だけでなく若山氏の交配ミスの可能性もある。

 つまり、ここまでは、小保方氏が『あの日』に書いている“私はES細胞すり替えに関わっていない”という主張は否定できない、ということだ。

 しかし、調べてみたら、少なくともひとつ、小保方氏が言い逃れできない調査結果があった。それは、調査委員会の報告書の以下のような記述だ。

〈「CD45カルス-テラトーマ」の試料は、Acr-GFP/CAG-GFPを持つこと、およびES細胞FES1に固有の第3染色体および第8染色体の欠失が認められたことから、STAP細胞由来ではなくES細胞FES1に由来すると思われる。したがって、STAP細胞の多能性を 示すテラトーマ実験の証明力は否定された。〉

 前稿でも解説したが、STAP細胞の実験には、(1)細胞にOct4-GFPが発現し、細胞が緑色に発光する、(2)その細胞をマウスの背中に注射して、テラトーマと呼ばれる良性腫瘍ができる、(3)このSTAP細胞を使って、増殖性を持つSTAP幹細胞をつくり、キメラマウスが作製できる、という3つの段階の証明が必要だ。そして、(3)のSTAP幹細胞、キメラマウス作製は若山氏がすべて行っており、小保方氏は一切関わっていないが、(1)のOct4-GFP発現、(2)のテラトーマ作製については、すべて小保方氏自身の手で行われていた。

 つまり、上記の報告書は小保方氏ひとりでつくったテラトーマが、ES細胞由来であったと断じているのだ。これは決定的だろう。実際、報告書には次のようなくだりもある。

〈[テラトーマの作製]すべて小保方氏が行った。したがって、STAP細胞からテラトー マを作製した際は、すべての過程を小保方氏が行ったことになる。以上の実験過程を考慮すると、混入があった場合、当事者は小保方氏と若山氏(STAP細胞からのテラトーマ作製では小保方氏のみ)〉

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