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読売テレビが子ども相手に竹田恒泰の「フェイク皇室史」と「女性天皇否定」を一方的に刷り込む偏向番組を放送!

読売テレビ公式HPより
国民の多くが支持している女性天皇論を完全無視し、国民の理解が得られていない「旧宮家の男系男子養子案」を高市政権が数の力で押し切った皇室典範改正。いまだ多くの国民が反対の声をあげているのはもちろん、当の天皇までがその強行ぶりに改正前、「国民の理解を得られるものを」と発言し、その後秋篠宮も天皇に賛同を示した上で「進歩が大事」と発言した。
そんななか、この皇室典範改正をめぐり、読売テレビが子どもを巻き込んだとんでもない偏向番組を放送していたことをご存じだろうか。
その番組とは、8月2日放送の『そこまで言って委員会NP 皇室・減税・夫婦別姓を子どもに説明してみたSP』(読売テレビ)。
『そこまで言って委員会』の出演者たちが子ども相手に授業をする体でいま議論になっている問題について解説するというものだが、「皇位継承」がテーマの時間に教師役で登場したのが、なんとあの竹田恒泰氏だったのである。
竹田氏といえば、周知の通り、“明治天皇の玄孫”で、数々のヘイト発言を繰り返してきた右派論客。とくに皇位継承問題では男系男子論者の急先鋒で、「旧宮家の男系男子養子案」は自分の発案だとも公言している。
そんな人物に子ども相手に皇位継承について解説させること自体ありえないが、もっとヤバかったのが、その内容がとんでもなく一方的で、フェイクが多く含まれていたことだ。
その危険性を指摘するためにも、改めて番組内容を紹介しておこう。
学校の教室を模したスタジオに座る7人の小学生。そこに竹田センセイが教師役で登場すると、いきなりこう宣言する。
「女性は天皇になれない、男系男子が必ず継承してきたんですけれども、それがなぜなのかっていうことをですね、今日は授業していきたいと思います」
歴史上、女性天皇は推古天皇はじめ10代8人も存在したのに、「男系男子が必ず継承してきた」って、のっけから大嘘を口にしたのである。
「女性が天皇になれないのはSnowManに女の子が入れないのと同じ」という発言にSNSでツッコミ殺到
冒頭から子ども相手に「男系男子が必ず継承してきた」という大嘘をつく竹田氏。ところが、番組ではそれを訂正するわけでもなく、続いて「なぜ愛子さまは天皇になれないの?」というテロップを流す。すると、竹田氏はこんなことを言い出すのだ。
「Snow Man知ってますよね? もしメンバーに女の子がいたらSnow Manではないでしょ?」
「たとえば「歌舞伎は女性はダメ」とか「宝塚は男性は入れない」とか、決まってるでしょ。これ、男をバカにしてるわけじゃない。」
「男女同権は?とかなんで女性はダメなんですか?男はダメなんですか?とか言うときに、いやいや“そういうもんだから”っていう話なんですね。」
これこそ“子どもだまし”というやつだろう。竹田氏は女性が天皇になれないのは、名前に「Man」がつくSnowManに女の子が入れないのと同じだというが、皇位継承資格と一アイドルグループのメンバー構成になんの関係があると言うのか。
実際、ネットでは、竹田氏の”SnowManたとえ”に対して、「QUEENは全員男だ」「number girlには男性メンバーもいる」「Mrs. GREEN APPLEは全員男」「ゲスの極み乙女は男性も女性もいる」と、その論法のインチキを指摘するツッコミが相次いでいる。もっと言えば、「snowman」は英語で雪だるまのことであり性別は関係ないし、SnowManに雪だるまは1人もいない。
また、逆にその”SnowManたとえ”を使って、竹田氏が主張してきた「旧宮家の男系男子養子案」を皮肉るこんな投稿もあった。
〈だからと言ってこのオッサンがいきなりSnow Manのメンバーに入ったらSnow Manは終わるよね。養子案って、そういうことでしょ。〉
〈アイドルグループ「SnowMan」に、アイドル性のかけらもないmanが入ったら、それはもうアイドルグループ「SnowMan」ではない 国民に敬愛され世界に誇れる皇室に、竹田一族のような品性のかけらもない一族が入ったら、それはもう国民に敬愛され世界に誇れる皇室ではない〉
この投稿が指摘しているように、「女性が天皇になれないのはSnowManに女の子が入れないのと同じ」という竹田氏の論法は、天皇個人の人格を無視して「男系男子であれば誰でもいい」と言っているのに等しい。竹田氏をはじめとする男系男子派が「天皇の権威を利用したいだけで、中身は誰でもいい」という大日本帝国の軍国主義にも利用された危険な考えを持っていることが露わになったとも言えるだろう。
「歌舞伎は女性はダメって決まってる」というのも全くのインチキだ。そもそも歌舞伎は、出雲阿国という女性の役者を起源としており、江戸幕府が1629年に「女が舞台に立つと風紀が乱れる」という差別的な理由で禁じるまでは女性の役者も多数いた。それを「女性はダメって決まってる」って、この人、たしか歴史教科書作ってたけど、そんな知識で大丈夫なのか。
あげくは、どうして女性天皇がダメかという理由が「いやいや“そういうもんだから”っていう話なんですね。」である。こんなことをいい出したら、虐殺行為や奴隷制、女性の選挙権否認など、歴史上あったことはすべて認めていいという話になるではないか。
「2000年前から男系男子」「1億2000万人が神武天皇の子孫」という嘘の歴史ふりまき
しかし、ここまではまだ序の口だ。竹田氏は続いて、子どもたちを前に、こんなことを言い始める。
「男系男子の血筋を受け継ぐ人が天皇になってきたんですけど、これいつからかっていうと2000年前からなんですよ。」
「「なんで?」とか「女がどうの」「男がどうの」とか言うけど、これで2000年来てるんだから。これをやっぱり守っていったほうがいいんじゃないかなというのが、私の考え。」
本サイトでも再三指摘してきたことだが、男系男子による皇位継承が2000年続いてきたなどという事実はない。6世紀までは、男系男子どころか血縁による継承すら確立していなかったというのが歴史学では常識になっている。にもかかわらず、竹田氏は男系男子の正当性を主張するために、嘘の歴史を小学生に教え込もうとしたのである。
さらに、呆れたのは、続いて飛び出したこんなセリフだった。
「男系継承っていうのは、これ、もし、子孫だったら誰でもいいってやっちゃったらどうなるかっていうと、神武天皇の子孫って何人いると思います?1億2000万人いるんですよ。」
「君たちも神武天皇の子孫なの。島国で2000年間やってるわけだから、みんな神武天皇の血筋ひいてんの、統計遺伝学っていうのがあって、計算上そうなってるんですよね。
子孫だったら『誰でもいい』になっちゃう。だから男系というところに絞ってきたんです。」
そもそも神武天皇は祖母がワニ(サメ)で130歳くらいまで生きたことになっている神話上のキャラクターにすぎないし、1億2000万人、つまり日本人全員が神武天皇の子孫だという家族国家観は、天皇のために命を捨てろという「教育勅語」のベースにもなった危険な思想だ。そんなものを公共の電波で、子どもたち相手に刷り込んでいいのか。
しかも、竹田氏はこの1億2千万人=神武天皇の子孫というトンデモ史観をもとに「皇位継承者が広がりすぎるから、男系男子に絞った」かのような主張をしていたが、これもまったくのインチキだ。養子候補となる旧宮家の男系男子が現在の天皇から30親等以上離れているという事実からも自明なように「男系男子」だけを根拠にしたところで皇位継承者が広がりすぎるのは変わらない。絞るという意味なら、戦後の皇室典範でも旧皇室典範でも皇族に限定されており、皇族の範囲や皇位継承順位は「男系」だけでなく「直系優先」や「親等の近さ」などによって定められ、養子は禁じられていた。つまり、「女系」でも「直系」に限るなどすれば、皇位継承者を現在と同様に絞ることができる。広がりすぎるというなら、むしろ養子案こそそのリスクが高い。男系男子に限ったのは、明治期の男尊女卑思想に基づく政治的な理由に過ぎないのに、何をゴマカしているのか。
竹田恒泰の事実に反した一方的な“授業”を子どもに受けさせた読売テレビの責任
竹田氏のこうした姿勢は、小学生からの質問に対しても同様だった。講義の後。女子児童が「イギリスでは前までエリザベス女王、女の方だったから、ちょっとなんでなのかなって」と質問すると、竹田氏はこう答えたのである。
「世界にいろんな王様っているんですけども、日本の天皇とよその王様って全然違うんですよ。ヨーロッパのほうは女性が王になったり、普通にしてきてるんですけど、ただ女性が王になると、王朝名が変わるんですね。たとえば、愛子さまが田中さんと結婚するとするでしょう? 子どもの田中くんが即位するとどうなるかっていうと、ご先祖辿っていくと、途中から田中家のご先祖に行っちゃうよね? 神武天皇関係ないよね、これ。だから別の王朝になっちゃうのね。だから国が変わっちゃう。ヨーロッパでも中国でもそういうふうに考えてきました」
愛子内親王が田中さんと結婚すると、田中王朝になっちゃうって、天皇家に婿入りすれば苗字がなくなるのだから、そんなことが起きるはずがないだろう。
とにかく、竹田氏は男系男子を押し通し女性・女系天皇を封じ込めるために、終始、子ども相手に史実を無視したデタラメな歴史観とごまかしを強弁し続けたのである。
もちろん竹田氏のこうした発言は珍しいことではないが、問題は、竹田氏の主張を垂れ流した読売テレビの責任である。
番組はアリバイとして、スタジオにいる他のコメンテーターが授業内容を評価するという体裁をとっており、「良くなかった」とするコメンテーターも多かったが、その理由として主張の偏りを指摘したのは橋下徹氏くらい。あとは「4分の時間の使い方が下手くそ」「最初のSnowmanのツカミ、いらない」「結論がそういうもんだからだとプレゼンは1分で終わってしまう」などという半分ギャグのようないじりコメントばかりだった。
「君たち全員神武天皇の子孫」とか「男系男子は2000年続いている」などの大嘘解説について、訂正や注釈が加えられることはなかったし、竹田氏の授業を受けた子どもたちにそうしたフォローが行われる場面もなかった。
こんな事実に反した一方的な内容を、公共の電波にのせていいのか。それだけではない。読売テレビはこの番組に小学生を出演させ、なんのエクスキューズもなく、竹田氏のフィクションやインチキなロジックをあたかも歴史的事実のように聞かせ、その男系男子肯定論と女性差別を刷り込んでいるのだ。
実際、番組では子どもたちが授業を評価するというシーンもあったが、7人中5人の子どもが竹田氏の授業内容に「◯」をつけていた。子どもたちに一方的な洗脳教育をしたというこの事実だけとっても、読売テレビはBPOの対象になってしかるべきではないか。
しかし、恐ろしいことに、そうした批判はネット上にとどまり、メディアでも政界でもまったく問題になっていない。それどころか、社会では竹田氏が番組で子どもたち相手に語っていたような戦前的なカルトな歴史観がどんどん広がっている感じすらある。
このままいけば、全国の小学校で「神武天皇から続く伝統」とか「神武天皇はみんなのご先祖」とか教えられるようになるという可能性も、十分ありうるだろう。
そうした事態を食い止めるためにも、私たちはいまの男系男子論をはじめとする偽の伝統に何度でもおかしいと言い続ける必要がある。本サイトでは、改正皇室典範改正が可決成立した直後に、〈“男系男子の皇位継承”は明治期の創作! 旧皇室典範策定時に「男を尊び女を卑むの慣習、人民の脳髄」とトンデモ論で女性天皇を否定〉と題し、自民や維新、右派の主張する「男系男子は2600年続く伝統」がいかにデタラメかを記事にした。以下に再録するので、あらためてご一読いただきたい。
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皇室典範の改定が7月17日参院本会議で可決され、成立した。世論調査で圧倒的に支持されている女性天皇・女系天皇については議論すら一切されることなく、専門家・識者からも様々な問題点が指摘され、国民の理解もまったく得られていない「旧宮家の男系男子養子案」を、高市政権が数の力で押し切ったのだ。
改定を受け、同日、国連のグテーレス事務総長が「全ての国に対し、あらゆる地位や職業において女性の権利向上につながる包摂的な政策を奨励する」との見解を示したが、当然だろう。
女性天皇を阻止し、男系男子を維持するためだけに、天皇から36親等から38親等も離れた民法上の「親族」ですらない赤の他人を養子として皇族に迎えるというのは、時代錯誤のトンデモ改定でしかない。
しかも、今回の皇室典範改正は、国際社会の常識からみて異常なだけではない。右派が大好きな“日本の歴史・伝統”からみてもインチキ極まりないのだ。
実際、自民のコバホークこと小林鷹之政調会長が「皇位の男系継承は2600年以上にわたって先人たちが守り抜いてきた皇室の伝統」と言ったり、維新の藤田文武共同代表が「2000年以上の歴史を持つ皇室と、たかだか60年あまりの歴史しか持たない憲法や移ろいやすい世論を同時に論じることはナンセンスでしかない」という安倍元首相の言葉を引いて発言したように、右派は男系男子にこだわるほとんど唯一の根拠として「男系男子は神武天皇以来2600年以上続く伝統」と主張してきた。
そもそも2600年前は縄文時代であり、神武天皇は実在しない神話上のキャラクターにすぎないというツッコミはおくとしても、この「男系男子=日本の長い伝統」という論自体が大嘘なのだ。
天皇が「男系男子」と規定されたのは、明治時代、1889年に制定された旧皇室典範(1889〜1947)でのことだ。せいぜい明治からの伝統にすぎない。
これは単に明文化されたのが明治というレベルの話ではない。男系男子による継承が暗黙の不文律だったわけでも日本古来の伝統だったわけでもないことを多くの学者・専門家が指摘している。
高市政権による皇室典範改定がいかにとんでもないものだったかを理解してもらうためにも、改めて歴史的に検証しておこう。
「男系男子は2600年以上続く皇統」の嘘 6世紀までは力による継承も、初期は「双系」
まず、指摘しておかなければならないのは、日本の天皇がそもそも6世紀くらいまで、男系男子どころか血縁による継承ですらなかったということだ。
たとえば、国立歴史民俗博物館の仁藤敦史名誉教授は毎日新聞(7月1日)のインタビューで、こう語っている。
〈「天皇」という称号の前の「大王(おおきみ)」の時代は、血縁ではなく実力によって即位してきた。たとえば中国大陸や朝鮮半島の勢力と緊張関係にあった5世紀には外交や軍事の能力が最優先された。武烈天皇の没後、出自が明らかでなく、都から遠く離れた近江・越前に拠点があった継体天皇が即位したのもこうした経緯からだ。その後は内政の能力が重視された。〉
継体天皇というのは歴史学で実在が確実視されている26代の天皇で、先代の応神天皇と関係が薄いことから、王朝交代が起きたとする見方と遠縁の子孫が迎えられたとする見方があるが、いずれにしても「皇統」が確立されたのは継体天皇の子・欽明天皇からという説が有力だ。継体天皇は天皇の娘と結婚することでその正当生を担保し権力基盤を固めたと考えられており、その意味で皇統はごく初期の時点で女系だったとみることもできる。
しかも仁藤教授によると、男系主義が強まるのはそのさらに後の7世紀後半から。〈中国的な戸籍制度や儒教の影響などのためだ〉という。
古代女性史を専門とする義江明子・帝京大名誉教授も、やはり男系主義が導入されたのは7世紀末で、やはり中国の影響を指摘する。デジタルメディア「nippon.com(ニッポンドットコム)」(2022年5月26日)のインタビューでこう語っている。
「7世紀末、中国にならった律令国家樹立の際に初めて公式に父系原則が打ち立てられました。8世紀あたりまでは、支配層も含め、実質的にはまだ双系性の原理で動いていたと私は考えます」
双系というのは、父系(男系)か母系(女系)どちらか片方の血筋のみを重視するのでなく、男系・女系の血統両方を重視する考え方や制度のことで、古代日本は「双系的社会」であったという認識が、現在は歴史学者の間では広く共有されている。
周知のように6~7世紀の王族は双系的親族関係の中での近親婚が盛んで、男系・女系のいずれを遡ってもすぐ天皇にたどり着く。王族や豪族のなかでの序列やポジションの決定には、男系だけでなく女系の血統も重視された。たとえば、同じ天皇を父親とする子でも、母親が天皇の娘か地方豪族の娘かによって、その子の身分や序列が変わっていた。
義江教授は聖徳太子や天智天皇、天武天皇を挙げ、当時の「双系性」について解説している。
「例えば『書紀』によれば、聖徳太子は用命天皇の息子ですが、母も欽明天皇の娘です。『天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)』に記された太子の系譜を見れば、双方の系統を重視していることは明らかです」
「7世紀後半の天智天皇・天武天皇の父である舒明天皇は、2人が少年の頃に亡くなっています。母が跡を継いで皇極天皇として即位。いったんは退位しますが実力で再度、斉明天皇として皇位に就きました。後に天皇となる兄弟が成長する過程で、国家統治者としての手本を見せたはずです。とすれば、天智・天武はむしろ女系の天皇だとも言えるでしょう。また、両親(舒明・皇極)はそれぞれ、父方・母方双方で欽明天皇につながります」
大宝律令では女性天皇も女系天皇も排除されていなかった 男系男子のルーツは中国の文化
男系が絶対的なものでなかったのは、日本の「家」制度の歴史を見ても明らかだ。
家族社会学を専門とする落合恵美子京都産業大学教授は、毎日新聞(6月27日)のインタビューで、やはり〈日本の家族観は厳密な父系(男系)制ではなく、女系も重んじられる双系的なものとして続いてきた〉としたうえで、中世から近世にかけて成立した日本の「家」制度においては、「直系相続」が特徴だったと指摘している。
〈『家』の論理では、直系の娘の方が、別の『家』の子であるおいよりも、はるかに正統な跡取りです。おまけに直系の子どもの数は限られているので、娘による相続を認めなければ『家』は簡単に滅びてしまいます〉
たしかに、これは感覚としてしっくりくる人も多いのではないか。当の自民党議員だってそうだろう。自民党には世襲政治家が大勢いて、もちろん息子が世襲しているケースが圧倒的に多いが、小渕優子、加藤鮎子など娘のケースも少なくないし、加藤勝信のように娘婿が後を継いでいるケースもある。しかし、30親等まではいかなくても6親等離れた親戚の男子をわざわざ養子にして後継候補にした例など聞いたことがない。
落合教授は〈琉球士族と、武家のなかでも最上層に位置する大名家〉は例外的に父系傾向が強かったと言い、その理由について〈中国文化の影響を強く受けたから〉〈中国の親族制度には「家の継承者は基本的に同じ姓の男子であるべきだ(異姓不養)」という考え方があった〉と解説する。
中国文化の影響については、前出の仁藤教授や義江教授も「中国的な戸籍制度や儒教の影響」(仁藤教授)「中国にならった律令国家樹立の際に初めて公式に父系原則が打ち立てられました」(義江名誉教授)と指摘していた。
ようするに、右派が声高に主張する男系男子は日本古来の伝統文化ではなく、むしろ彼らが毛嫌いしている中国文化にルーツがあったというわけだ。
しかも、日本では、中国文化の影響で男系化・父系化が強まりつつも、女性天皇が認められていた。
周知のように、日本の歴史では、推古天皇、斉明天皇、持統天皇など古代に6人、江戸時代に2人、計8人の女性天皇が存在した。
明治以降「女性天皇は男性から男性への継承が難しかった際の、臨時の中継ぎ役」という見方が支配的だったが、近年、歴史学ではこの「中継ぎ」「お飾り」説も再検証が進み、否定されつつある。とくに古代の女性天皇は、中央主権体制や律令国家の確立に大きな役割を果たしているし、右派の大好きな「戸籍」の作成や「古事記」「日本書紀」編纂で天皇支配を強化したのも持統天皇だ。
さらにもうひとつ指摘しておかなければならないのは、女性天皇だけでなく女系天皇という選択肢も、奈良時代から近世までは、排除されていなかったという事実だ。
そのことを示しているのが、701年に成立・制定され、明治初期まで存続した大宝律令の「継嗣令(けいしりょう)」だ。
皇族の身分や皇位継承について定めたこの法令には〈女帝子亦同〉という記述があり、「女帝の子もまた同じ(=女帝の子も、男性の天皇の子と同じく親王の身分となる)」と規定されている。つまり、男系による継承を前提としながらも、女性天皇も女系天皇も否定していないのである。律令制度は平安時代後半には衰退するが、継嗣令の規定は江戸時代、そして明治に入って旧皇室典範が制定されるまで、廃止されることなく続いていたという。
前出・仁藤教授は「継嗣令」についてこう解説する。
〈奈良時代から近世まで存続した「継嗣令(けいしりょう)」では、女帝の子も皇位継承権が認められていた。確固とした皇位継承原則はなく、女系天皇が制度的に排除されていたわけでもなかった〉(前出・毎日新聞)
明治の旧皇室典範の策定時にあった女性天皇を認める案 井上毅が「男尊女卑」思想で排除
では、なぜ「日本の伝統」でもなんでもない「男系男子による皇位継承」が絶対的なものになってしまったのか。
さまざまな分野の学者が共通して指摘しているのが、明治時代、旧皇室典範が制定される際にそれが恣意的に行われたという事実である。
明治時代の旧皇室典範は大日本帝国憲法と同じ1889年に制定・施行されるが、実は当初の案では女性による皇位継承を認める内容だった。
民法を専門とする橋本有生・早稲田大学准教授は、2021年12月の有識者会議でヒアリングをされた際、以下のように意見を述べている。
〈女性天皇をめぐる議論は目新しいものではなく、旧皇室典範制定時の諸資料にも検討の跡が残されている。 たとえば、「国憲按第一次案」(明治9年)の第二章「帝位継承」における第2条及び第4条は、女性による皇位継承を認める内容である〉
しかし、この案は議論の過程で修正・削除される。それは、旧皇室典範策定にかかわった女帝否定論者の強硬な反対によるものだった。
その中心にいたのが、のちに文部大臣も務めた熊本出身の法制官僚・井上毅(こわし)だ。井上は大日本帝国憲法や教育勅語の起草にも関わった人物だが、皇室典範制定でも主導的な役割を担い、いま右派が声高に叫んでいる「男系の皇統」という概念を広めた張本人だ。その井上が、当時、女性による皇位継承を認める第一次案についてこんな意見書を提出していたという。
「我国の現状、男を以て尊しとなし、之を女子の上に位せり」
「男を尊び、女を卑むの慣習、人民の脳髄を支配する我国に至ては、女帝を立て皇婿を置くの不可なるは、多弁を費すを要せざるべし」
ようするに「日本は男尊女卑の国で、国民の脳髄まで男尊女卑の思想が浸透しているから、女性天皇が不可なのは言うまでもない」と言っているのだ。
今回の皇室典範改定をめぐっては多くの国民が、「女性天皇を認めないのって、ただの女性差別なんじゃないのか」と素朴な疑問を口にしていたが、まさにその疑問通り、露骨すぎる女性差別がベースになっていた。
しかも、この旧皇室典範の思想は大日本帝国の軍国主義とも深く結びついている。
井上は前述したように、旧皇室典範を作っただけでなく、大日本国憲法や教育勅語などにも深く関わっていた。井上の「神武以来の男系男子による継承=万世一系」「万邦無比の国体」というフィクションは、様々な法制度に落とし込まれ、祭政一致の国家主義、軍国主義の基盤となった。
そして、そのグロテスクな思想に基づいて、「現人神の天皇陛下のために命を捧げる」ことを強制する教育が行われ、それが数々の侵略戦争を引き起こしたのだ。
右派の言う「皇室の伝統」は”2600年“どころか、日本国憲法より短いわずか58年間の制度にすぎない
ここまでの解説で「男系男子は神武以来2600年以上続く日本の伝統」などではないことが十分おわかりいただけたはずだ。明治から昭和初期にかけての大日本帝国の時代の伝統にすぎない。明治初期1889年に旧皇室典範が制定され、戦後1947年に廃止されるまでの、わずか58年間だけのものなのだ。
戦後に生まれた日本国憲法や、同じ年に施行された新しい皇室典範は、今年で79年。そういう意味では、右派が「日本の伝統」だと叫ぶ、大日本帝国下の天皇制度より、もはや戦後の象徴天皇制の歴史のほうが長いのだ。
この事実を踏まえれば、改めて右派の論理がいかにインチキであるかがよくわかる。
たとえば、冒頭で、維新の藤田代表も引用していた安倍晋三元首相の「二千年以上の歴史を持つ皇室と、たかだか六十年あまりの歴史しかもたない憲法や、移ろいやすい世論を、同断に論じることはナンセンスでしかない」(「文藝春秋」12年2月)という言葉を紹介したが、歴史的事実に照らせば、こう言い換えるべきだろう。
「79年の歴史しかもたない日本国憲法より、さらに短いたかだか60年足らずの歴史しかもたず、その短い期間で日本と皇室を滅亡の危機に追い込んだ“男系の皇統”というフィクションを、その滅亡の危機から80年かけて積み上げてきた象徴天皇制や戦後民主主義より、優先するとはとても正気の沙汰じゃない」
正気の沙汰じゃないのは、もちろん安倍元首相だけでなく、今回、36親等以上も離れた民法上の「親族」ですらない赤の他人を養子として皇族に迎えるという時代錯誤のトンデモ皇室典範改定を強行した、高市首相や麻生太郎副総裁、維新・藤田代表らも同様だ。
彼らに共通しているのは、日本の伝統や天皇に対する敬愛など、微塵もないということだ。
参院特別委員会で「なぜ女性ではダメなのか?」「なぜ男系男子にこだわるのか?」を問われた木原稔官房長官が1分近く何も答えられなかったが、木原官房長官以外でも、高市政権でこの問いにきちんと答えた人間は一人もいない。
それは彼らの本音が、とても口に出せるようなシロモノでないからだ。もっといえば、皇室を軍国主義、独裁体制構築に利用しようと女性差別丸出しの論理で男系男子の皇位継承を制度化した井上毅と同じだからだ。
そういう意味では、今回のトンデモ改正は皇室の在り方にとどまる話ではなく、安倍政権から引き継がれてきた戦前体制の復活と、戦争で国民に血を流させる国づくりの号砲と言ってもいいだろう。国連に言われるまでもなく、白紙撤回を求めて徹底的に批判していく必要がある。
(編集部)
最終更新:2026.08.30 01:01
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維新ゴリ押し 万博&カジノにかかる金はインフラ整備を含めると8000億円以上だった! 大半が国と大阪市の負担、巨額の税金も投入
防衛費増額の財源で「法人税」を削除し「国民全体の負担」だけにした政府有識者会議は読売社長、日経元会長、朝日元主筆がメンバー
菅首相の追加経済対策の内訳に唖然! 医療支援や感染対策おざなりでGoToに追加1兆円以上、マイナンバー普及に1300億円
菅首相のコロナ経済支援打ち切りの狙いは中小企業の淘汰! ブレーンの「中小は消えてもらうしかない」発言を現実化
菅首相の追加経済対策が“自助”丸出し! コロナ感染対策は10分の1以下、大半が新自由主義経済政策に…坂上忍も「バランスおかしい」
悪評「マイナポイント」事業の広報費は54億円、1カ月で半分を浪費! 事務局事業も電通がトンネル法人通じて140億円
三浦瑠麗のアマプラCMは削除されたが…amazonもうひとつの気になるCM! 物流センター潜入取材ルポが暴いた実態とは大違い
安倍首相“健康不安”説に乗じて側近と応援団が「147日休んでない」「首相は働きすぎ」…ならば「147日」の中身を検証、これが働きすぎか
正気か? 安倍首相の諮問機関「政府税調」がコロナ対策の財源確保と称し「消費税増税」を検討! 世界各国は減税に舵を切っているのに
東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望! コロナで病院経営悪化も安倍政権は対策打たず加藤厚労相は “融資でしのげ”
高市、小泉“靖国参拝”の問題は中韓関係ではない! 靖国神社のグロテスクな本質 戦意高揚、特攻礼賛の一方で参拝しない天皇を攻撃
高市早苗が「戦争をしたがっている」ことを証明するトンデモ発言集!「国家には戦争する基本権」「戦闘員には最後まで戦ってもらう」
高畑勲監督が「『火垂るの墓』では戦争を止められない」と発言し続けた理由! 日本のズルズル体質に強い危機感
慰安婦問題を否定する者の正体! 産経グループ“中興の祖” 鹿内信隆が「軍の慰安所作り」を下劣自慢 「調弁した女の耐久度、消耗度も」
従軍慰安婦問題を改めて問う 慰安所をつくっていた中曽根元首相! 防衛省に「土人女を集め慰安所開設」の戦時記録
昭和天皇の末弟「三笠宮崇仁親王」が日本軍の南京での行為を「虐殺以外の何物でもない」と明言し、歴史修正主義を批判
水木しげるが描いていたラバウルの戦争体験と慰安婦…「80人の兵隊を相手に…あれはやっぱり地獄だ」
村上春樹が長編小説『騎士団長殺し』とエッセイ『猫を棄てる』に込めた歴史修正主義との対決姿勢! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
これで“雑魚寝”避難所は変わるのか…今秋発足「防災庁」職員は「国家情報局」の半分以下! 防災庁設置に反対していた高市首相
高市首相の熊本地震避難所視察は北朝鮮並みのプロパガンダだった!「至れり尽くせり」の選ばれた避難所の一方で実態は…
瀬戸内寂聴が生前、語っていた護憲と反戦…「美しい憲法を汚した安倍政権は世界の恥」と語り、ネトウヨから攻撃も
「BTSグラミー賞逃す」報道に「韓国人のニュースいらない」「日本人の受賞を報じろ」と炎上攻撃が! 日本スゴイの精神的鎖国
ぼうごなつこ『100日で崩壊する政権』を読めば、安倍首相が病気で辞任ししたのでなく国民が声をあげ追い詰めたことがよくわかる
百田尚樹が「安倍総理にお疲れ様とメールしても返信なし、知人には返信があったのに」とすねると、2日後に「安倍総理から電話きた」
村上春樹が長編小説『騎士団長殺し』とエッセイ『猫を棄てる』に込めた歴史修正主義との対決姿勢! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
村上春樹がエッセイ『猫を棄てる』を書いたのは歴史修正主義と対決するためだった! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
安倍首相に利用された星野源がエッセイに書いていた“音楽が政治に利用される危険性” 「X JAPANを使った小泉純一郎のように」
“宇予くん”で改憲煽動のJCと手を組んだTwitter Japanはやっぱり右が大好きだった! 代表は自民党で講演、役員はケントに“いいね”
ウィーン芸術展公認取り消しを会田誠、Chim↑Pomらが批判! あいトリ以降相次ぐ“検閲”はネトウヨ・極右政治家の共犯だ
「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収
幸福の科学出家騒動は清水富美加個人の責任なのか? カルト宗教信者の子どもたちが抱える問題
話題の本『夫のちんぽが入らない』のタイトルに込められた深い意味…しかし一方では広告掲載拒否の動きが
福島の子ども甲状腺がん検診「縮小」にノーベル賞の益川教授らが怒りの反論! 一方、縮小派のバックには日本財団
介護殺人に追い込まれた家族の壮絶な告白! 施設に預ける費用もなく介護疲れの果てにタオルで最愛の人の首を…
宇多田ヒカル「東京はなんて子育てしにくそう」発言は正しい! 英国と日本で育児への社会的ケアはこんなに違う
今もやまぬ人工透析自己責任論の嘘を改めて指摘! 糖尿病の原因は体質遺伝、そして貧困と労働環境の悪化だった
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