斎藤知事が百条委員会欠席で「知事会出席」を理由にするも…前の知事時代には政府主催の知事会を欠席しあの時の懇話会に参加

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兵庫県HPより


 パワハラなどの数々の疑惑を告発されながら、デマや陰謀論が飛び交う異常な知事選で再選を果たしてしまった斎藤元彦知事。だが、この御仁の独善体質は、やはり何も変わっていないらしい。知事選が終わるまで控えられていた百条委員会の証人尋問への出頭要請に対し、斎藤知事は「全国知事会への出席」を理由に欠席の届け出を提出したからだ。

 18日に県庁でおこなわれた記者会見では「何よりも職員や県議会とコミュニケーションを取ってやっていきたい」などと殊勝な態度で話していたが、これは明らかな議会軽視だろう。

ネット上では「当選後初の知事会だから出席は当然」などと主張する斎藤信者が湧いているが、斎藤知事は前回の知事当選後初の全国知事会を欠席。「今回の知事会は政府主催だから別だ」という声もあるが、全国知事会の出席名簿によれば斎藤知事は2022年11月7日に開催された政府主催の全国知事会を欠席しているのだ。

 ちなみに、この日の知事の活動記録を確認すると、斎藤知事は「西播磨地域づくり懇話会」に出席。この懇話会は、自殺した元県民局長が亡くなる前に百条委に提出した陳述書で、斎藤知事が地ワインについて「まだ飲んでいないので…またお願いします」と催促の発言をおこなったと記述されていた会合だ。

 いずれにしても、選挙戦では自身の身の潔白を訴えていた斎藤知事が、それを証明する場である百条委をいきなり欠席するというのは、明らかに矛盾する行動だ。ネット上の「選挙に勝ったことがすべて」「百条委は斎藤さんをこれ以上いじめるな」という信者たちの声の大きさを良いことに、斎藤知事は疑惑の追及からさっそく逃げようしているとしか思えない。

 あらためて指摘するまでもないことだが、選挙の結果と百条委での疑惑追及はまったく関係しない。選挙に勝って再選したことは、斎藤知事の「無実」を証明したわけでも、数々の疑惑を晴らしたわけでもないからだ。

選挙に勝ったからといって斎藤知事の問題はなかったことにならない

 たとえばパワハラ問題にしても、県職員約9700人に実施されたアンケートでは、回答した6725人のうち斎藤氏のパワハラ疑惑について「目撃、経験などで実際に知っている」と答えた職員は140人、「実際に知っている人に聞いた」「人づてに聞いた」と答えた職員はあわせて2711人にものぼっている。つまり、回答者の42%もの職員が知事のパワハラを知っていた、というわけだ。

 また、選挙戦の最中からネット上では「百条委の奥谷謙一委員長も『パワハラはなかった』と認めている」という投稿が拡散されていたが、これこそ完全な切り取りであり、実際には奥谷委員長は「私の認識では明確に知事のほうからパワハラを受けたという方はいらっしゃらなかったというふうに考えておりますが、それは職員さんのなかでもこれがパワハラに当たるのか自分では判断できないという方もおられましたし、そこはこれから我々が聞いた事実を評価してパワハラに当たるのかどうか、しっかり評価をしたいと考えてます」と述べていたのだ。しかも、この発言がおこなわれたのは8月23日だが、1週間後の8月30日午前に実施された非公開の百条委には複数の職員が証人尋問に出頭し、斎藤知事から指導の範囲を超える厳しい叱責を受けるなどのパワハラを受けたという証言もされている。ちなみに、奥谷委員長もこの日、証人尋問後の記者会見で「極めてパワハラに近いと評価して差し支えないと思う」との見解を語っている。

 しかも、なにより斎藤知事自身、同日午後の百条委でこうした職員に厳しい叱責をしたことを認めて「必要な指導だと思っていたが、不快に思った人がいれば心からお詫びしたい」と謝罪しているのだ。そしてこのとき、斎藤知事は「パワハラかどうかは私が判定するというより、百条委員会などが判定するものだ」とも述べていた。

 つまり、当の斎藤知事もパワハラの有無については百条委の判断に委ねている状態にあるのだ。ましてや「選挙に勝ったから無罪」が通用するはずがない。

 しかも、斎藤氏には、パワハラ以上に問題な公益通報者保護法違反の疑惑もある。元県民局長が匿名で内部告発をおこなった直後、斎藤知事は片山安孝副知事(当時)らに告発者の特定するよう指示。3月下旬の記者会見では告発文書を「嘘八百」と断定したうえ、退職予定だった元県民局長の人事を取り消して懲戒処分を下した。ようするに、斎藤知事は告発された当事者であるにもかかわらず犯人探しを指示し、第三者による調査もおこなうことも公益通報者として保護することもなく、権力を振りかざして処分を下したのだ。これは公益通報者保護法違反にほかならず、百条委においてさらなる調査がつづいている。斎藤知事には百条委の調査に全面的に協力しなければならない責任があるのだ。

 ところが、斎藤知事が選挙に勝ったとたん、テレビのコメンテーター連中がネット人気に引きずられるように、「斎藤擁護」を展開している。

 たとえば、弁護士の野村修也氏は「テレビが斎藤知事を追い込んだ」などとマスコミ批判をおこなう一方、斎藤知事の逆転勝利について「国民のネットリテラシーが高まってきた」などとのたまった。

 さらに酷いのが杉村太蔵氏だ。杉村氏は『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)に出演し、百条委員会について打ち切るべきなどと主張。選挙前は斎藤知事の公益通報の対応を「権力者による握りつぶしじゃないか」と批判していたにもかかわらず、だ。

吉村洋文・大阪府知事が醜悪な「てのひらがえし」で百条委員会を否定

 だが、もっとも醜悪なのは、吉村洋文・大阪府知事だ。

 吉村知事は、斎藤知事が当選したことを受けて記者団に「『すごいですねと、脱帽です、当選おめでとうございます』という内容のメールを斎藤さんに送りました」などと語ったうえ、百条委について、こんなことを言い出したのだ。

「別にやめろという趣旨ではないが、知事に不信任決議を出した議会が、百条委を継続する正当性はあるのか」「百条委員会やってる最中で不信任決議を出して、斎藤さんを完全否定したわけでしょ」

 そもそも斎藤知事の不信任決議には維新も賛成に回ったというのに、その不信任決議を可決したことをもって「百条委を継続する正当性はあるのか」と言い出す──。まさに無節操とはこのことだろう。

 言っておくが、8月末の時点では、斎藤知事に擁護的だった維新に対する批判が高まったことで、吉村知事は斎藤知事の辞職勧告や不信任決議案提出の可能性に言及。不信任決議案に維新の県議全員が賛成に回っただけでなく、吉村知事も「(知事が説明する)背景や事実関係は、納得できるものではない」と断罪していたのだ。つまり、維新の支持率がガタ落ちするなかでトカゲの尻尾切りをしていたのである。

 ところが、斎藤氏が熱烈なネット人気を獲得したと見るや「すごいですね、脱帽です」などと再びすり寄り、「百条委を継続する正当性はない」と主張しはじめたのである。しかも、重要なのは、吉村知事がやめろと言い出し、斎藤知事が欠席することになった25日開催の百条委では、吉村知事も深く関係する「阪神・オリックス優勝パレード」の疑惑についても証人尋問が実施される予定になっている。百条委の中止に追い込みたいという意味では、吉村知事と斎藤知事の思惑は一致しているというわけだ。

 このように、「勝てば官軍」と言わんばかりの擁護が相次ぐなか、斎藤知事はその尻馬に乗って疑惑の追及から逃れようという算段なのだろう。

 しかし、選挙に勝ったからといって、事実関係が変わるわけがなく斎藤知事の疑惑は何も解消されていない。しかも、今回の斎藤氏の選挙戦をめぐっても大きな問題が指摘されている。斎藤氏の選挙演説での発言と百条委員会での証言の矛盾。フェイク情報が拡散されたこと。そして、斎藤氏当選の最大の功労者といわれる「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首との関係だ。

N党・立花孝志党首の言動や影響についても、追及が及び腰なメディア

 周知のように、立花氏は知事選に出馬しながら斎藤氏を応援することを公言し、選挙中は、自死した元県民局長のプライバシーにかかわる醜聞を流布。これらは伝聞にすぎない上、事実だとしても、斎藤氏のパワハラや公益通報者保護法違反の否定にはならないのだが、立花氏はすでに亡くなっている告発者を攻撃することで、斎藤氏の疑惑を覆い隠す役割を演じてきた。

 さらに、百条委のメンバーにも攻撃を仕掛け、奥谷謙一委員長に対しては、自宅兼事務所前で、「出てこい奥谷!」「まあ、あまり脅しても奥谷さんに自死されたら困るんで、これくらいにしておく」などという演説を行っていた。

 奥谷氏は会見で、立花氏について「脅迫目的でこの行為をしていることを自らおっしゃっている」と非難したうえ、自宅にいた奥谷氏の母親が「怖かったのか涙を流すこともあった。家族に迷惑をかけて大変つらい」と悲痛な面持ちで語っていた。こうした問題をマスコミもようやく報じ始めているが、及び腰としか言いようがない。

 斎藤知事は立花氏と選挙戦で連携していたのかと問われ「まったくなかった」と否定しているが、立花氏が斎藤知事の当選で大きな役割を果たしたことは事実。立花氏の行為を斎藤氏が放置・黙認していただけでも為政者としては問題だし、本当に放置・黙認以上の関係がなかったのか、立花氏の行為について現時点でどう考えるのか、などもっと厳しく追及すべきだろう。

 いずれにしても、改めて強調しておかなければならないのは、選挙に勝ったからといって、斎藤氏の疑惑が晴れたわけではないということである。百条委と第三者委員会での調査・検証がきちんと継続されていくのか、注視していく必要がある。

最終更新:2024.11.21 08:13

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