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五輪の有観客開催強行のため菅首相が会見で“空疎な嘘”連発! インド型変異株拡大、サッカー南米選手権で感染者続出の現実も無視
菅義偉Twitterより
ついに東京五輪開催のための「地獄シナリオ」が実行に移された。本日17日、菅義偉首相は東京や大阪などに出されている緊急事態宣言を20日で解除し、まん延防止等重点措置に移行することを決定したからだ。
東京でリバウンドがはじまっていることはあきらかで、いま宣言を解除するというのはありえない判断だ。事実、本日17日の東京の新規感染者数は先週より13人増の452人。昨日16日も先週より61人も増加して501人となっている。
いや、それ以上に注視すべきは、感染力が高いインド型変異株(デルタ株)の発生状況だ。東京都で昨日16日までに確認されたデルタ株陽性例は計72人におよんでおり、さらに東京都健康安全研究センターによるスクリーニング検査の結果を見ると、直近の6月7日〜13日に確認された変異株陽性数のうちデルタ株は24.3%にものぼっているのだ。
実際、本日おこなわれた都のモニタリング会議でも、専門家からはこんなコメントが寄せられていた。
「新規陽性者数が十分に下がりきらないまま、未だ高い値で推移している。第3波では、新規陽性者数が今回とほぼ同じ400人前後で約3週間推移した後、爆発的に感染が再拡大した。感染性の高い変異株の影響等を踏まえると、第3波を超える急激な感染拡大の可能性があり、新規陽性者数を徹底的に減らし、感染の再拡大を防止しなければならない」
にもかかわらず、菅首相は新規感染者数を徹底的に減らすどころか増加傾向にあるのに、デルタ株による急激なリバウンドが必至の状況下で宣言を解除することを決定してしまった。しかも、菅首相は宣言解除後に移行する重点措置も「7月11日まで」とあらかじめ期限を切った。
これはどこからどう見ても、7月21日から競技が開始される東京五輪に約1万人もの観客を入れて開催するための布石ではないか。
厚労省新型コロナ対策アドバイザリーボードに示された試算では、宣言解除後に人の流れが15%増、くわえて五輪開催で10%増えた場合、「有観客と無観客での累積の新規感染者の差は8月25日ごろに1万人を超え、1日あたり約300人増えることになる」という(朝日新聞デジタル16日付)。しかもこれは「デルタ株の影響を小さく見積もった」数字だ。人命第一、国民の命と安全を第一優先だと言うのであれば、無観客であろうと人の流れの増加を招くリスクがある東京五輪は「中止」という判断しかありえない。
だが、菅首相は本日おこなわれた記者会見でも「東日本大震災から復興を遂げた姿を世界に発信し、子どもたちに夢や感動を伝える機会になる」と口にし、感染リスクについても「会場に来られる観客は常時マスクし、大声の応援は禁止される。会場に直行、直帰をすることも大事だ」などと発言した。
「日本ではしっかり感染対策を講じることができる」と言い張る菅首相
マスクと大声の応援禁止、直行直帰で感染リスクを抑えられると考えているような人間が、約1万人もの観客を入れて五輪を開催しようとしている……。これだけで背筋が凍るが、さらに菅首相は本日の会見で、真っ赤な嘘を堂々と言い張ったのだ。
会見では、ラジオ・フランスの記者が、選手や関係者がたとえワクチンを接種し感染防止対策をとっても100%の安全性を確保することはできないと指摘した上で、「なぜ感染拡大のリスクや死者が出るリスクがあっても、総理大臣は開催するのは大丈夫と思っているのか。その理由はなんですか。ノーと言えないことでしょうか。それともプライドでしょうか。または経済の理由でしょうか」と質問。すると、菅首相は笑みさえ湛えた余裕の表情で、こう言い切ったのだ。
「ノーもプライドも経済でもありません(笑)。しっかり、日本においては、そうした外国から来られた方を感染対策を講じることができるからであります」
いや、菅首相が開催に固執しているのは「日本ではしっかり感染対策を講じることができるから」などではまったくなく、総裁選と解散総選挙を睨んだたんなる私利私欲じゃないか。しかも、「日本ではしっかり感染対策を講じることができるから」と語ったあとに菅首相が述べたその中身は「選手や関係者はワクチンを打って来る」だの「日本に入る前に2回、PCR検査」だの「選手は毎日検査する」というもの。挙げ句、海外メディアの報道陣については“移動する車両でもアクリル板を設置”と主張し、「そうしたことをしっかりやるから海外から来る人はリスクは非常に少ない」と述べたのである。
言うまでもなく、ワクチン接種をおこなっていても感染する例は実際にあるし、ワクチン接種を選択しない選手もいる。また、陽性者が検査をすり抜けることもある。だからこそ「100%の安全性を確保することはできない」と指摘されていたのに、菅首相はワクチンと検査があれば万全だと言うのである。だったら国民がもっと検査を受けられるようにするべきだし、ワクチンを国民の希望者に全員接種を終えてから開催すべきではないか。
だいたい、菅首相はなにかあると「安全安心の大会」と言うが、同じように「安全」を謳い、いまブラジルでおこなわれているサッカーの南米選手権(コパ・アメリカ)のお粗末な状況を知っているのだろうか。
サッカー南米選手権は感染者続出で、選手がサッカー連盟に「すべてはお前らのせいだ」と抗議する事態に
コパ・アメリカは東京五輪と同じように昨年開催される予定だったが新型コロナを理由に延期となり、さらに開催地となったブラジルでは感染が拡大しており、世論調査では「反対」が6割超えに。さらに〈南米諸国の感染症専門家などからも「複数の国から選手団を受け入れるのは問題だ」といった批判が上がっていた〉という(毎日新聞ウェブ版17日付)。だが、大会を主催する南米サッカー連盟は「世界で最も安全なスポーツイベントになる」と発信。今月13日から無観客で開幕した。
感染拡大の最中の開催、開催反対の世論、主催者の「安全」という掛け声……「無観客」という点以外では東京五輪を彷彿とさせる開催経緯だが、いざ開幕すると「世界で最も安全なスポーツイベントになる」というのが看板倒れであることが露呈。というのも、大会では毎日PCR検査を実施しているというが、開幕早々から陽性者が続出し、ブラジル保健省は15日、選手やスタッフ33人を含む52人が陽性と確認されたと発表。「サッカーダイジェスト」に掲載された現地発の記事によると、選手の陽性者は23人にものぼり、これは参加10チーム全選手の約9%にあたる陽性率になるという。
当然、選手からも主催に対する怒りの声があがっている。たとえば、陽性反応が出たというボリビア代表であるマルセロ・モレーノ選手は、自身のインスタグラムにこう投稿したと前出「サッカーダイジェスト」記事は伝えている。
「CONMEBOL(編集部注:南米サッカー連盟)よ、見てみろ! すべてはお前らのせいだ。もし誰かが死んだらどうする? 選手の命に価値はないのか!」
多くの人が抱いていた懸念が的中し、選手や大会関係者に感染が広がっていくコパ・アメリカ。しかも、コパ・アメリカは前述したように参加チーム数は10というスポーツイベント。200を超える国・地域から選手が参加し、メディア関係者を含めると約8万人もの人びとが集まる東京五輪は比較にもならないほど大規模なものだ。菅首相は「選手には毎日検査をする」ことを安全対策として語ったが、コパ・アメリカのように連日陽性者が続出し、メダル数よりも感染者数に注目が集まる「一大クラスターイベント」になる可能性はけっしてゼロにはできないものなのだ。
にもかかわらず、菅首相は「ワクチンと毎日検査」を念仏のように唱えるだけ。さらにはコパ・アメリカとは違い、観客まで入れて東京五輪を開催しようとしている。これを恐怖と言わずしてなんと言うおうか。
菅首相が有観客に執着した結果、議論は「開催か中止か」ではなく「有観客か無観客か」にシフトし、いまや「観客は何人ならOKか」という話にまで移っている。しかし繰り返すが、人命第一ならば「中止」の一択しかないのだ。
(水井多賀子)
最終更新:2021.06.18 12:04
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