東京五輪で代理店に支払う会場準備担当ディレクターの人件費は1日42万円! 下請けパソナは日当1万2000円で募集しているのに…

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武蔵野の森総合スポーツプラザHPより


 またも東京五輪利権の実態が暴かれた。東京五輪組織委員会が、会場運営を委託した企業と交わした契約書とその内訳書を毎日新聞が入手、そこに目玉が飛び出るような高額の人件費が記載されていたのだ。

 毎日新聞が入手した契約書は、東京五輪の42会場あるうちのひとつでバトミントンなどの競技がおこなわれる武蔵野の森総合スポーツプラザのもので、組織委が大手広告代理店に委託。委託先の中心を担っているのは電通をはじめ、博報堂、ADK、東急エージェンシーといった大手広告代理店で、武蔵野の森総合スポーツプラザの委託先は東急エージェンシー。契約金額は税込みで6億2304万円にものぼる。

 そして、内訳書によると、「本大会に向けての準備業務」を担うディレクターの1日当たりの「単価」は、なんと35万円。日数は「40日」となっており、つまり1カ月ちょっとで合計で1400万円にものぼっているのだ。

 しかも、昨日26日におこなわれた衆院文科委員会では、立憲民主党・斉木武志衆院議員が、毎日新聞が報じたものと同じ契約書・内訳書を入手し、それをもとに追及。斉木議員によると、委託された代理店側は諸経費として15%、管理費として5%を上乗せするため、準備業務を担うディレクターの場合、実際に組織委に請求している金額は1日当たり42万円にもなるという。

 コロナ禍で国民生活が疲弊しきっているのを尻目に、東京五輪では1日で1人42万円というびっくりするような高額契約が平気で交わされている──。毎日新聞は4月にも組織委作成の委託費見積額を記した内部資料を入手し、委託費の積算根拠となる1日当たりの人件費単価が最高30万円であると報道していたが、当時、丸川珠代・五輪担当相は「守秘義務で見せてもらえない資料がある」などとすっとぼけた答弁をおこなっていた。だが、実態はさらに酷く、こうした事実を隠すためにごまかしたとしか思えない。

 さらに、今回発覚した内訳書によって、丸川五輪担当相がついていた嘘も判明。丸川五輪担当相は4月19日の衆院決算行政監視委員会において、高額な人件費単価について「人件費単価を設定した契約ではなくて、各競技会場の設備の特徴を踏まえて、すごく詳細な分厚い運営計画というのをまずおつくりになる」「運営マニュアルを策定するというのに大変な労力がかかる」などと答弁し、そうした業務を含めてのものだと説明を受けているなどと述べていた。

 ところが、今回発覚した内訳書を見ると、1日当たり1人35万円の「本大会に向けての準備業務」とは別に、「大会準備期間における会場運営計画策定業務」を担当するディレクターに対し、1人当たり1日25万円を計上。つまり、丸川五輪担当相の答弁は大嘘であり、運営マニュアルの策定業務と準備業務を合わせると1日当たり30万円どころか、1日60万円、諸経費・管理費の20%も含めると1日72万円もの高額単価だったのだ。

 これらの問題を斉木議員が追及すると、組織委の布村幸彦副事務総長は「内訳書は一般論で言えば契約締結の際の参考資料という位置づけ」「単価は、必要な経費やバックヤードの費用を含むものと推測され人件費単価そのものではない」などと抗弁していたが、仮にその主張どおりだったとしても、人件費単価の設定もおこなわないこと自体が杜撰としか言いようがない。

人件費20万円以上なのに、パソナのHPではマネージャーでも日当1万2000円

 だが、問題なのは人件費が高額であることだけではない。問題は、ここでも絶句するような「中抜き」がおこなわれる可能性が高いことだ。しかも、中抜きするのは、菅義偉首相のブレーンである竹中平蔵氏が取締役会長を務める人材派遣大手のパソナグループだ。

 パソナグループといえば、「人材サービス」カテゴリーで「東京2020オフィシャルサポーター」として組織委と2018年に契約を締結。一方、会場運営を支えるスタッフの多くは派遣であり、斉木議員によると「パートナー契約では、人材派遣サービスはパソナにしか許されていない。43会場の派遣スタッフを頼むときはパソナに出さなくてはならない契約になっている」という。

 昨日の衆院文科委員会では、組織委の布村副事務総長が「すべてにわたってパソナさんのパートナーの権利が及んでいるという実態ではない」と答弁したが、一方、組織委に入っている派遣スタッフのほとんどはパソナからの派遣であることを認めていた。

 だが、問題はここから。じつはパソナのHPに掲載されている東京五輪大会スタッフ(職員)の募集概要によると、責任を担うマネージャーでもスタッフでも時給は1650円(深夜時間帯は125%の割増賃金)。日給にして約1万2000円ほどなのだ。

 前述した4月19日の衆院決算行政監視委員では、斉木議員が組織委の内部資料ではディレクターの単価が1日20万円なのに対して人材派遣会社がディレクター職くらいでも日当1万2000円で募集をかけていると指摘し、管理費などを含めて計算すると「中抜き率は95%。これはあまりにひどすぎるんじゃないか」と追及をおこなっていた。しかし、もし仮に今回発覚した内訳書にある1日42万円のディレクター職でも実際には1万2000円しか支払われないのだとすれば、中抜き率は97%になる。

 会場運営を委託された電通をはじめとする広告代理店が儲け、さらにあくどい中抜きによってパソナが潤う──。つまり、国民からこれだけ東京五輪開催に反対の声があがっても、菅首相や組織委がその民意を無視しつづけるのは、こうして利権に群がる大企業の利益を優先しようとしているからだ。

 本日、組織委の武藤敏郎事務総長は「医療やコロナ感染の観点はあるが、日本経済全体を考えれば、五輪を開催するほうがはるかに経済効果があると思う」などと発言したが、儲かるのは結局、電通やパソナ、公式スポンサーの大企業だけ。それと引き換えに国民は命の危険に晒されるのである。

最終更新:2021.05.27 10:51

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