DHC吉田会長の韓国差別コメント問題をなぜテレビは取り上げないのか? 広告料くれればレイシストまでもちあげる日本マスコミ

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DHC公式オンラインショップより


 これまで度々ヘイトスピーチを繰り返している化粧品やサプリメントを主力商品とするDHCがまた差別事件をおこし、大きな批判を浴びている。

 創業者である吉田嘉明会長が同社の公式オンラインショップに掲載された「ヤケクソくじ」と題する文章のなかで、とんでもない在日コリアン差別発言を行なっているのだ。

 サプリ商品で競合しているサントリーに対して、〈DHCなら500円で売れるものを5000円近くで販売している〉〈商品の見栄をよくするために有名なタレントを次々と多用して、そちらに多額のお金を湯水のように使っている会社よりは、よほど良心的だと思いませんか〉などと真偽不明の批判をしたのに続け、サントリーのCMについてこうヘイトスピーチそのものの攻撃したのだ。

〈サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです〉
〈DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本企業です〉

 全国のコンビニ・ドラッグストアで化粧品やサプリメントを大量に販売し、テレビでCMをばんばん流している企業のトップがこんなことを口にしていいのか。

 露骨な差別用語を使って、CM出演者が日本人じゃないと他社をあげつらうのは、外国籍の人々の生存権を奪うことにつながるヘイト煽動以外の何物でもないし、〈DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本国〉と胸を張るというのも、DHCが国籍でタレントを選別する差別行為を行なっていることを自ら認めたようなものだ。
 
 実は、少し前にネトウヨたちがこのDHC会長の言葉とそっくりなサントリーCM出演者への差別攻撃を繰り広げたことがある。

 2017年、母親が在日韓国人というルーツもつ水原希子がサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」のイメージキャラクターとしてCMに出演したところ、プレモルの公式ツイッターアカウントがヘイト攻撃で大炎上する事態に発展したのだ。

〈日本人じゃないのに!通名と同じ作戦か!?サントリーは当分、不買だろ〉〈エセ日本人がcmしてるから買いません〉〈水原希子は見たくもない=アメリカ国籍の朝鮮人。なんでサントリーは、こんなのをCMに起用するんだ?。反日企業と言われてもしょうがないね!。〉などという、おぞましいヘイトスピーチを含んだリプライが大量に押し寄せたのだ。

 このとき水原は卑劣な差別攻撃に屈することなく、自らのツイッターアカウントで〈一日も早く、この世の中の人種や性別などへの偏見がなくなってほしい。そして、世界中の人がどこにいても自分らしく生きていける世の中になるように、まずは私が私らしくこれからも強い心を持って、生きていこうと想います。全ての争いがなくなる事を心から祈っています。LOVE&PEACE〉と、反差別と多様性尊重のメッセージを投稿した。

 しかし、実際の水原の心は大量に押し寄せるヘイトスピーチを受けて、ズタズタに傷ついていた。のちに朝日新聞(2018年4月2日)のインタビューで当時の苦しい思いを吐露。水原にはなんの非もないのに、「いろんな人に迷惑をかけていて、プレッシャーもあっておしつぶされそうになって」と自らを責め、「あの頃は、2週間くらい泣き続けていました」と告白している。

海外メディアも批判するDHC吉田会長の差別問題をきちんと批判しない国内メディア

 まさに、人間の尊厳を踏みにじる犯罪行為というしかないが、DHC吉田会長の今回の発言は、こうした水原に対するネトウヨのグロテスクなヘイトを全面肯定し、さらにそれをエスカレートさせるものだ。まともな民主主義社会であれば、吉田会長やDHCという企業は社会的生命を絶たれてもおかしくない。

 ところが、吉田会長もDHCもこの件について、なんの謝罪も撤回もしていない。コンビニやドラッグストアではいまもDHCの商品を取り下げられることなく堂々と売られている。共同通信がこの問題を取り上げて取材をしたが、ノーコメントをつらぬいている。いったいなぜこんなことが許されているのか。

 大きいのはメディアの責任だ。今回の吉田会長の差別発言はネットで大きな騒ぎになり、〈#差別企業DHCの商品は買いません〉など複数の抗議ハッシュタグがトレンド入りするなどしている。また、イギリス・BBCが「日本の化粧品会社トップの“レイシスト”コメントに批判」と報じるなど、海外メディアからも批判報道が相次いでいる。

 ところが、日本のマスコミはほとんど厳しい追及をしていない。共同通信や東京新聞、朝日新聞、毎日新聞など一部のリベラルなメディアだけはこの問題を批判的に伝えたが、スポーツ紙は一部のネットニュースで「騒ぎ」として伝えただけ。読売、産経、日経などはスルーだった。

 さらに、テレビにいたってはどの局もまったく吉田会長の差別問題を取り上げなかった。芸能人の不倫程度であれだけ大騒ぎするワイドショーもこの問題には1秒たりとも触れず、逆にいまも、テレビでは同社のCMが流れている。

 コラムニストの小田嶋隆氏は16日、ツイッターでマスコミや日本社会がDHCのヘイトを容認している裏に「金」の問題があると喝破していた。

〈DHCの問題は、単に「差別を拡散する企業が実在している」というだけの話ではない。そういう企業がテレビで番組を持ち、CMを打ち、有名タレントを起用し、コンビニに棚を確保し、新聞に広告を掲載することを許しているこの国の現状こそが問題だと思う。カネさえ払えば何をやってもいいのか、という。〉

 小田嶋氏の指摘するとおり、こんなひどい差別をしても、マスコミがなんの追及もしないのは、DHCが大きなスポンサーで自分たちにお金を落としてくれる存在だからだ。

 実際、こうした対応は今回に限ったことではない。吉田会長とDHCは過去にも何度も差別事件を起こしたことがある。

DHC吉田会長は2016年にも在日コリアンに「母国に帰れ」のヘイト発言をしていたが…

 たとえば、2016年には「DHC会長メッセージ」のなかで在日コリアンにかんするデマを書き立てた上で〈似非日本人はいりません。母国に帰っていただきましょう〉などとヘイトスピーチを堂々と掲載した(詳しくはhttps://lite-ra.com/2017/01/post-2865.html)。

 しかし、このときもテレビや新聞は批判どころか、その話題じたいを取り上げることもなく、DHCの広告やCMを流し続けた。

そして、こうしたマスコミの弱腰の結果、吉田会長やDHCはヘイトを反省するどころか、逆に開き直りの姿勢を強め、ヘイトをエスカレートさせてきた。

 その典型がDHCの子会社としてDHCテレビジョンの放送内容が韓国で問題になった一件だろう。DHCテレビでは、安倍応援団が『ニュース女子』や『真相深入り!虎ノ門ニュース』などの番組を制作、政権の露骨な擁護と、韓国や沖縄などに対するヘイトデマを垂れ流してきたが、そうした実態は韓国でほとんど知られていなかった。

 しかも、DHCは日本で韓国ヘイトを垂れ流す一方、韓国で何食わぬ顔をしてビジネスを展開していた。2002年にDHCコリアを設立し、韓国の現地法人が化粧品やサプリメントの販売を開始。その売上は年間100億ウォン(約9億円)を超えるまでになっていた(ハンギョレ新聞2019年8月13日付)。

 ところが、2019年に韓国の放送局・JTBCが「韓国で稼ぎ、自国では嫌韓放送…DHC“2つの顔”」と題し、DHCテレビジョンで嫌韓放送をおこなっていると批判。百田尚樹氏が『虎ノ門ニュース』で日韓併合を正当化し、慰安婦像を揶揄した発言などを取り上げた。その結果、韓国でDHC商品の不買運動が起きたのだ。ネットでは「#さよならDHC」というハッシュタグが拡散。DHCコリアのモデルを務めていた女優チョン・ユミ氏も再契約しないことを表明し、さらには『虎ノ門ニュース』でBTS(防弾少年団)がバッシングの対象となっていたこともネットで広がり、日韓のARMYのあいだで不買を呼びかけるハッシュタグが拡散されるという事態に発展していった。

 DHCコリアはこうした事態にたまらず謝罪文を発表したが、その内容はDHCテレビはDHC本社の子会社であってDHCコリアとは無関係であるというものにすぎず、DHCテレビやDHCグループ全体の謝罪表明はまったくなかった。

 それどころか、DHCテレビは「韓国メディアによるDHC関連の報道について」と題した見解を公表。そのなかで〈韓国DHCが提供する商品やサービス、現地スタッフと、DHCテレビの番組内容とは直接何ら関係はありません。そうした常識を超えて、不買運動が展開されることは、「言論封殺」ではないかという恐れを禁じ得ません。〉〈弊社DHCテレビジョンといたしましては、あらゆる圧力に屈することなく、自由な言論の空間をつくり守って参りたく存じます。〉などと、自分たちの歴史修正主義を正当化、逆に不買運動を「言論封殺」などと攻撃したのである。

マスコミのスポンサーに対する差別ヘイト容認は、アパ、高須院長に対しても

 吉田会長やDHCがどんなひどい韓国ヘイトや歴史修正主義を口にしても、広告料に目がくらんだ日本のマスコミがきちんと批判しないため、まったく責任を追及されないまま、「ネット上のちょっとした騒ぎ」で終わってしまう。その結果、吉田会長やDHCは自分たちを正当化し、さらにヘイトをエスカレートさせる。そうしたことが繰り返されたあげく、起きたのが今回のとんでもないヘイト、人権侵害発言だったのだ。

 同じような構図は、DHC以外のヘイト企業でも起きている。

 創業者が「南京大虐殺はなかった」などと歴史修正主義を撒き散らしているアパホテル。在日コリアンのパート社員に対してレイシャルハラスメントを行い訴えられたフジ住宅。院長がTwitterでホロコーストを否定したり「チョン」などという差別語を平気で口にしたりネトウヨ発言を連発する高須クリニック。(詳しくは→「経済界「極右&ヘイト」ミシュラン」

 しかしこうした差別企業や経営者は一方で、CMを大量出稿し、マスコミに巨額の広告料をバラマキ続けている。その結果、マスコミからまったく追及を受けないどころか、ワイドショーなどで「注目経営者」「注目企業」として好意的に取り上げられることすらある。

 企業に社会的責任が求められるのはいうまでもないが、メディアは単なる営利企業ではなく報道機関として、より高い倫理が求められる。広告料に目がくらんで差別をスルーすることは、ヘイト企業にお墨付きを与え、差別に加担することとイコールだ。そのことをマスコミにわからせるためにも、DHC吉田会長の差別発言問題をこのまま終わらせてはならない。

最終更新:2020.12.20 02:21

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