「朝生」が田原総一朗の「下村元文科相にベネッセが2千数百万円」発言を謝罪も…「下村」の名前を先に出したのは別の出演者だった

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公式Twitterで謝罪した『朝生』だが…


 11月30日未明に放送された討論番組『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)で、司会の田原総一朗氏が「ベネッセが下村博文元文科相に2千数百万円の献金をしている」という旨の発言をしたことについて、同番組が7日に公式サイトとツイッターで謝罪した。

「訂正とおわび」と題された文章の内容は、「ベネッセから下村議員へのそのような献金はありませんでした。訂正するとともにベネッセならびに下村議員、視聴者の皆様にお詫びいたします」というもので、全面謝罪と言えるだろう。

 いったい何があったのか。田原氏の発言は大学入学共通テストの英語民間試験問題をめぐる討論で飛び出したもの。周知のように、英語民間試験は萩生田文科相の「身の丈」発言をきっかけに批判の声が殺到し、延期になったが、もともと「経済格差」「地域格差」を助長するとの批判を受けていたうえ、実務上の問題点も次々と発覚していた。にもかかわらず、文科省がなぜこんな無茶な計画を強行しようとしていたか、という議論が進んでいくなかで、田原氏が試験業者の1社であるベネッセから当時の文科相の下村議員に2千数百万円の献金があったと口にしたのだ。

 たしかに下村氏といえば、この英語民間試験導入の中心役的存在だった。英語民間試験は安倍首相の諮問機関である教育再生実行会議が導入を提言したことからスタートしたのだが、この会議を先導し、文科省に実現に向けた大号令をかけていたのが、当時、文科相兼教育再生担当相を務める下村議員だった。また、2018年には英語民間試験を採用しない姿勢を示した東京大学を名指しし活用させるよう、文科省に要求していた“東大恫喝テープ”もNHKのスクープで明らかになった。

 一方のベネッセコーポーレションも6団体7種類が予定されていた英語民間試験の業者のひとつ。同社の「GTEC」は日本英語検定協会の「実用英語技能検定」(英検)ともに、英語民間試験の目玉的存在だった。両者の間に巨額献金というのは、さもありなんという話だが、これに、ベネッセ、下村元文科相の両者からテレビ朝日に対して抗議がきたのだという。

「とくに下村議員からはかなり強い調子で抗議がきたようです。テレビ朝日がさっそく確認したところ、献金の記録がなかったため、お詫びを出すことに決めたらしい」(テレビ朝日関係者)

 しかし、このお詫びについては、不可解な点がある。それはお詫びを出すまで1週間近くかかったうえ、田原氏本人は番組のお詫びをRTしただけで、自分の言葉では一切謝罪していないということだ。ネトウヨや安倍応援団からは「なんで田原本人が謝罪しないのか」という批判の声が殺到しているが、これにはどうも事情があるらしい。

「実は、この日の『朝生』で下村さんのことを口にしたのは田原さんだけではなかった。というか、ほかの出演者のほうが先に下村さんの名前を出していたんです。そのためか、田原さんサイドとの調整が難航して、時間がかかった上、ああいう形のおわびになったと聞いています」(前出・テレビ朝日関係者)

「柴山に2千数百万円」と言い間違えた田原に、「下村さん」と訂正した女性の声

「出演者のほうが先に下村さんの名前を出した」とはどういうことか。改めて、この日の『朝まで生テレビ』で田原氏の発言の前後のやりとりを再録してみよう。

 この日は、言論界からは三浦瑠麗氏、堀潤氏、金子勝氏、田崎史郎氏、政界からは、野党議員に加えて、つい最近まで安倍内閣の閣僚だった片山さつき・元地方創生担当相、そして柴山昌彦元文科相などがパネラーとして出演していた。

 まず、堀氏がこの無理な英語民間試験導入について「いちばん関心があるのがどういうロビー活動が行われてこの結果になったのか、ステイクホルダーは誰で、どっちからどういうリクエストだったのかっていうのを、柴山さんに是非お伺いしたい」と訊く。

 すると、なぜか三浦瑠麗センセイが割って入り「ここでやっぱりベネッセが入っているということに対して。英検は片山さんがおっしゃったようにTOFELほど難しくなくて、いろんな段階で受けられるというのがあるかもしれないんですけど。やっぱり民間業者で、ベネッセみたいなものが入ってきたときに、英検ほど浸透しているわけではないけれども、除外してくれるなっていうことがあったんでしょ」と、ベネッセの疑惑について語り始める。

 これを受けて、田原総一朗氏が「第一ベネッセは、今日ここに持っていないけれども、文科省から天下りがいっぱい降りてる」と言い出し、こう続けたのだ。

「しかも、ベネッセは、柴山に2千数百万…」

 つまり、田原氏は「下村」を「柴山」と言い間違えていたのだが、すると、これに片山さつき議員が即座に反応し、「柴山じゃないですよ」と訂正。続いて、当の柴山前文科相も「私じゃない」と否定した。

 だが、田原氏はまだ気づかない。すると、今度は画面に映っていない女性の声で「下村さん、下村さん」と、下村元文科相だと訂正するセリフが……。これに一同が爆笑し、複数の出演者が口々に「下村さん、下村さん」と叫び始めた。

 これでようやく田原氏も間違いに気がついて「下村、下村に2千数百万円献金してる」と言い直した。片山議員はその後も笑いながら「たいへんだ、たいへん重要な間違い」と田原氏につっこんでいた。

下村元文科相とベネッセの「接点」、政治資金パーティ参加、後援会名簿に社長の名前

 ようするに、この日の『朝生』では、ベネッセの2千数百万円献金を受けたという政治家の名前を田原氏が言い間違えた結果、逆にパネリストのほうが先に、献金を受けた政治家として、下村氏を名指ししていたのだ。ちなみに、口火を切ったのは前述したように女性の声だったが、この日出演していた女性のパネリストは片山さつき氏と三浦瑠麗氏だけだった。

 もちろん、他の出演者が先に名前を言ったからといって、発端は田原氏であり、田原氏が誤報の責任を免れるわけではない。しかしそのことよりも、注目しなければならないのは、政権に近い人たちが言い間違いにつられて「下村さん」と名前を口走り、つい最近まで閣僚を務めていた自民党の政治家や、元文科相までが人物名を訂正しただけで、「2千数百万円献金」については一切否定しなかったことだ。

 これは安倍政権周辺や文科省内部でも下村元文科相とベネッセが「特別な関係」にあると見られていたという証明だろう。

 実際、英語の民間試験導入問題を強引に進めてきた下村元文科相とベネッセの間には、ただならぬ接点がある。たとえば、「週刊文春」(11月14日号)によれば、下村氏の後援会「博友会」が2012年から14年の間に開いた政治資金パーティーに、ベネッセの2名の社員が複数回出席。2007年から14年までベネッセで社長を務めた福島保氏が後援会名簿に名前を連ねていたという。

 また、下村氏はベネッセの機関誌である「VIEW21」にも登場し、大学入試改革について、まさに英語民間試験導入を正当化するようなこんな主張を展開していた。

〈「公平」が保証できないからといって、従来通り学力試験1本とすることが、「真の学ぶ力」を育むために適切といえるのでしょうか〉

 一方、「週刊新潮」(11月14日号)も、両者の関係を物語る文科省関係者のこんなコメントを掲載していた。

「14年12月、中央教育審議会会長として“民間資格・検定試験の活用”という方針を打ち出した安西祐一郎氏は、GTECをベネッセと共催している進学基準研究機構(CEES)の評議員でした。教育再生実行会議委員だった武田美保氏もCEESの理事。元民主党参議院議員で、14年に当時の下村大臣に招聘されて文科省参与に就任、15年から18年まで文科相補佐官を務めた鈴木寛氏は、ベネッセグループの福武財団の理事です。文科省とベネッセグループは一心同体で、“第二の加計疑惑ではないか”という声も聞こえます」

 そして、両誌はこうした関係を背景にベネッセが文科省に食い込み、当初は蚊帳の外だった「GTEC」を英語民間試験の中心的存在に押し上げたと指摘している。

『朝生』で田原氏がなぜ根拠のない「2千数百万円の献金」を口にしたのかさだかではないが、あの『朝生』の空気を見る限り、英語民間試験をめぐる疑惑は掘ればまだまだ出てくる可能性が高い。メディアには徹底した追及を望みたい。

最終更新:2019.12.09 07:29

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