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安倍自民党が選挙運動禁止の投票当日、読売に広告! 安倍応援団本の中吊り、大量のSNS広告などエグすぎるPR戦略
読売新聞に載った安倍自民党の広告
やっぱり、と言うしかない。きょうは参議院選挙の投票日だが、今朝の読売新聞朝刊のテレビ欄の下に、自民党がこんな広告を打っているのだ。
〈安定した政治で、日本の明日を切り拓く。〉
広告には、安倍首相の顔写真とともに「政治は国民のもの 自民党」の文字。さらに、この選挙で安倍首相が繰り返してきた「悪夢のような民主党政権」なるネガキャンを露骨に展開している。
〈政権交代前、決められない政治で、経済は低迷し、外交の存在感も失われていました。
あの混迷の時代に、逆戻りさせるわけにはいかない。
私たち自民党は、皆様とともに、新しい令和の時代を切り拓いていきます。〉
明らかに“今日は自民党に投票してくださいね”と言っているようにしか見えない広告だが、公職選挙法は「投票日の選挙運動」を禁じている。一方、これが「通常の政党の活動を宣伝する政治運動」とみなされれば許されるのだが、その境界は極めて曖昧だ。
実は、自民党が今朝の読売朝刊のように、国政選挙の投票日に新聞広告を打ってきたのはこれが初めてではない。2016年の参院選のときも、投票日当日の全国紙朝刊に安倍首相の顔をデカデカとのせ、アベノミクスをアピールしながら〈今日は、日本を前へ進める日。〉〈この道を、力強く、前へ。〉といった文言の“PR”をやっていた。あまりにも姑息としか言いようがない。
さらに、他にもさまざまな“広告”を使って選挙戦を有利にすすめようとしている疑惑すらある。その代表例が、安倍応援団が繰り出す“安倍礼賛本”だ。
たとえば、2017年の総選挙の際には、安倍首相の熱烈的な支持者である“自称・文芸評論家”の小川榮太郎氏の著書、『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社)が出版された。なお、飛鳥新社は花田紀凱編集長が手がける“安倍応援雑誌”「月刊Hanada」の版元である。
この小川本は、まさに“森友・加計問題は朝日新聞とNHKが共謀した虚偽”なる陰謀論をふりまくシロモノなのだが、選挙中には、同書の中吊り広告や新聞広告が大々的に打たれるなど、普通では考えられないほどの過剰なPRが行われた。
しかも、自民党が同書を少なくとも5000部購入していていたこともわかっている。自民党からの大量購入を見越していたからこそ、こうした大々的な広告が打てたのではないか。そう見られても仕方がないだろう(花田氏は本サイトの取材に対して「関係ない」と否定)。
いずれにしても、通常の選挙運動以外の“安倍自民党PR”が、安倍応援団経由で行われた疑いがあるわけで、実際、今回の参院選でも、まったく同じ手口が使われた。
産経新聞元政治部長のヨイショ本広告が選挙期間中に大量露出
7月初頭、小川本と同じ版元・飛鳥新社から『安倍「一強」の秘密』が出版された。著者の石橋文登氏は“安倍首相に最も近い記者”のひとりと言われた元産経新聞政治部長。その内容は安倍氏を賞賛する永田町ルポで、表紙は当然のように安倍首相の顔写真である。同書は参院選を狙いすましたとしか思えないタイミングで世に放たれ、案の定、選挙期間中に新聞広告や電車の中吊りとして大量に露出していた。
たとえば東京新聞7月17日付紙面に掲載された広告には、〈安倍政権最強の理由は何か〉〈永田町を変えた“運命の出会い”“大きな転換”“裏切りと罵倒”を見続けてきた敏腕記者の全記録!〉などの文言がおどる。まさに、前回の総選挙での小川本と同じ手法がとられたのだ。この広告は地方紙にも掲載されたと見られ、他にも、安倍応援団のひとりである高橋洋一氏の新刊『安倍政権「徹底査定」』(悟空出版)の広告や、「月刊Hanada」8月号(安倍首相と櫻井よしこ氏の対談、菅義偉官房長官の独占インタビューが掲載)の広告などが、この選挙期間中に新聞や電車の中吊りへ大量出稿されていた。
もっとも、選挙期間中に安倍首相を礼賛する本を出版することも、大々的に広告を打つことも違法ではないが、しかし、これだけ同じようなケースが続くと、“出版の名をかたった別働隊による選挙運動”ではないかとの疑念がわくのは当然だろう。おそらく『安倍「一強」の秘密』も、例によって自民党や安倍氏の政治団体あたりが大量に購入するのでないか。
いずれにしても、確かなことがある。投票日当日の「政治運動」PR広告にしてもそうだが、安倍自民党は他の党の何倍も広告戦略に長けているという事実だ。
この選挙期間中、テレビをはじめ、Yahoo!のトップページやYouTubeの広告で、嫌になるほど自民党のコマーシャルをみかけた人は多いだろう。もちろん、こうした量・質ともに大々的な広告戦略は、巨大な資金を有し、かつ広告代理店的な手腕のノウハウが蓄積されている自民党だからできることだ。
さらに問題なのは、同じことが憲法改正を問う国民投票でもかならず行われると容易に予想できることだろう。
憲法改正が発議されれば国民投票運動が60〜180日間にわたっておこなわれるが、現行の「国民投票法」では、新聞広告に規制はなく、テレビ・ラジオCMも投票日の15日前まで「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないように勧誘する」CMを無制限に放送することが可能になっている。しかも、投票日前2週間のあいだも「賛否を勧誘」しないCMならば投票日まで放送できる。つまり、有名人が登場して「私は憲法改正に賛成です」などという意見広告は放送可能だ。
つまり、現行法のままでは約179億円(2019年度)というダントツの政党交付金を受け取っている自民党をはじめ、国会で多数を占める改憲派が潤沢な広告資金を抱えているため、CMを使った広報戦略では圧倒的に有利だ。そしてもし安倍首相が悲願とする改憲発議、国民投票が行われることになれば、当然、今回の参院選挙戦をはるかに超える広告の嵐が吹き荒れるだろう。
今回の選挙の結果、改憲勢力が「衆参両院で3分の2を確保」すれば、改憲発議はすぐ目の前だ。そのとき、資金で明確に劣る護憲派は何ができるのか。「次の戦い」は、すでに始まっているということを、わたしたちは肝に銘じる必要がある。
(編集部)
最終更新:2019.07.21 03:04
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