安倍首相が令和ブームで改憲に強気! 日本会議集会で「2020年新憲法施行」を宣言、「国民の審判を仰いだ」と大嘘まで

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自由民主党HPより


 改元の政治利用で内閣支持率を高めている安倍首相が、憲法改正に向けて大きく舵を切った。本日おこなわれた日本会議系の極右改憲集会に恒例のビデオメッセージを寄せた安倍首相は、そのなかでこう宣言したからだ。

「2年前の、この『憲法フォーラム』でのビデオメッセージにおいて、私は『2020年を新しい憲法が施行される年にしたい』と申し上げましたが、いまもその気持ちに変わりはありません」

 憲法を改正して来年施行する──。2017年に2020年施行と期限を切ったことには批判が殺到し、その後は改憲に意欲を示しながらも「スケジュールありきではない」とエクスキューズを付け加えるようになった安倍首相。事実、昨年の同集会に寄せたビデオメッセージでもスケジュールには触れなかった。だが、今年は再び「2020年施行」と期限を切ってきたのだ。

 これは、改元を政治利用してつくり出した「勢い」に乗り、そのまま憲法改正に持ち込もうと安倍首相は考えているという何よりの証拠だ。

 しかも、だ。やはり本日、掲載された産経新聞の単独インタビューでは、改憲をめぐって、またも安倍首相は国民を欺く嘘をついているのである。

〈一昨年、私は自民党総裁として、憲法9条に1項、2項を残して自衛隊を明記するという考え方を示し、議論に一石を投じました。波紋は広がり、平成29年の衆院選で自民党は自衛隊明記を真正面から公約に掲げ、国民の審判を仰ぎました。昨年の党総裁選でも私はこれを掲げて勝った。つまり党内の論争は終わったということです。〉

 真正面から自衛隊明記を公約に掲げ、国民の審判を仰いだ、だと──? 

 約1年半前のことだから国民は忘れてしまっただろう、などと考えているのかもしれないが、バカにするのも大概にしろ、と言いたい。

 まず、この2017年の衆院選で自民党が発行した公約集では、トップに安倍首相による「総裁挨拶」が掲載されているが、そこでトップに持ち出しているのは「北朝鮮の脅威」。約700文字のその原稿には、「憲法改正」「改憲」の言葉は一言も出てこない。

 しかも、公約6項目のなかに「憲法改正」は含まれているものの、その順番は最後の6つ目。その上、公約集では、他の公約については1056行も費やしているのに、「憲法」についてはたったの8行だけだ。

 いや、もっと酷かったのは、安倍首相自身だ。この衆院選で安倍首相は計75回、街頭演説をおこなったが、そこで繰り返し強調したのは「北朝鮮に対する圧力強化の必要性」だった。その後、関係国が歩調を合わせて対話路線を進み、ひとり圧力強化を訴えた安倍首相が完全に蚊帳の外に置かれたのは周知のとおりだが、一方、75回の街頭演説で安倍首相が「自衛隊明記」について語ったのは、なんと1回だけ。それも、野党批判を展開するなかで「東日本大震災で命がけで頑張ってくれた自衛隊に対して、『自衛隊は憲法違反だけど、しばらくは命をかけろ』というのは通るはずがない」と言っただけ。「憲法改正」を「真正面」から訴えたことなど、ただの一度もなかった(朝日新聞2017年10月27日付)。

 実際、投開票翌日の記者会見では、改憲を街頭で言及しなかったことについて問われると、「街頭は限られた時間の中で、地域に密着した政策を述べるものだ」と言い訳をしていたくらいなのだ。

 ようするに、憲法改正を公約に含めながらも、それを前面に押し出すどころか目立たぬように最後に追いやり、安倍首相は街頭演説で国民に真正面から問うことさえしなかった。それなのに、いまになって「国民の審判を仰ぎました」とは、完全に詐欺師のやり口ではないか。

「自衛隊募集6割の自治体が協力拒否」「お父さんは違憲なの」話も嘘

 ちなみに、この衆院選では、安倍首相は解散発表時に森友・加計問題について「国民のみなさまに対してご説明もしながら選挙をおこなう」と明言しておきながら、選挙中は「街頭演説で説明するより国会で説明したい」と言い出し、選挙後は「国会において丁寧な説明を積み重ねて参りました」と開き直った。そして、総裁選では「(総選挙で)国民のみなさまの審判を仰いだ」と、今回とまったく同じ嘘をついた。

 なぜここまで堂々とあからさまな嘘を吐けるのか、その精神を疑わざるを得ないが、それは問題の、改憲による「自衛隊明記」にかんする説明でも同様だ。

 たとえば、安倍首相は今年2月、「自衛隊員募集に6割以上の自治体が協力を拒否している。だから改憲が必要」と訴えたが、これも実際は9割の自治体が情報の閲覧を認めて協力しており、安倍首相が持ち出した6割という数字は「紙や電子媒体で名簿を提出していない」というものでしかないことが判明。しかも、紙や電子媒体での情報提供には法的根拠がなく、違法性が指摘されている行為である。

 さらに、改憲による「自衛隊明記」をめぐってついた嘘の最たるものといえば、「お父さんは違憲なの?」話だ。

 本サイトでは過去にも取り上げたが、「お父さんは違憲なの?」話というのは、安倍首相が9条加憲の理由としてやたら口にしてきたもの。自衛隊員が目に涙を浮かべた子どもから「お父さんは違憲なの?」「学校の先生に言われた」という話を聞いた、だからそんなことのないように自衛隊を憲法に明記する必要がある、というものだ。

 大前提として「お前のお父さん憲法違反!」といじめられた子どもがいるのだとしたら、おこなうべきはいじめの解消・解決であって、「子どもが違憲と言われたから」改憲するということ自体がむちゃくちゃなのだが、国会でこのエピソードについて追及されると、安倍首相は「嘘だって言っているんでしょ、あなたは」「私が嘘を言うわけないじゃないですか!」と激昂。「資料を出せと言うんであれば出させていただく」と大見得を切ったが、今年2月20日の衆院予算委員会では「(この話は)防衛省担当の総理秘書官を通じて、航空自衛隊の幹部自衛官から伺った話」と答弁した。

「出す」と言っていた資料を出さないまま、自分の「秘書官」から「航空自衛隊の自衛官」の話を間接的に聞いたと言い出す──。しかも、安倍首相はこのエピソードを披露する際、「自衛隊の幹部から聞いた」「自衛官から聞いた」と何度も語っていたのだ。つまり、追及を受けた途端、「秘書官」にすり替わったのである。

“自衛隊いじめ”元ネタの元航空自衛隊空将が「さすがに今はない」

 じつは、安倍首相のこの話では、ネタ元ではないかと思われる人物の名が挙がっている。元航空自衛隊空将で現在は右派論壇人として活動している織田邦男氏だ。安倍首相がはじめて「お父さん違憲なの?」エピソードを披露したのは2017年6月24日、産経新聞が全面サポートする「神戸『正論』懇話会」での講演会後のことだが、織田氏はこのエピソードを、その一週間後、2017年6月30日に発売されたまさに産経新聞社発行の「正論」8月号に書いていたのだ。

 そして、織田氏は現在67歳であり、「小学校か中学校の」息子から「お父さん、自衛隊は違憲なの?」と聞かれた時期となると、おそらく30年くらい前のことだと推測される。実際、織田氏自身、〈さすがに今は「自衛官の子弟」というだけで、学校で先生たちから虐められることはないだろう(そう信じたい)し、自衛隊は国民に既に定着したから「加憲」しなくてもよいではないかという護憲派もいる。〉と「正論」で書いている。

 ところが、安倍首相はこのエピソードが「数年前、中学校に入った直後」と言っているのだ。もし、安倍首相が織田氏の書いた文章を元にしていたとしたら、インチキもいいところだ。

 しかも、織田氏が「正論」に「お父さん違憲なの?」エピソードを書いた同じ時期に、保守界隈でも“違憲だから自衛官の子どもがいじめられている”という話が語られはじめていた。その直前の2017年の5月、安倍首相は読売新聞のインタビューと極右改憲集会に寄せたビデオメッセージのなかで、自衛隊を憲法に明記する、いわゆる「9条3項加憲案」をぶちあげている。つまり、この「9条3項加憲案」を正当化するために、改憲勢力や自衛隊出身の右派論客などが古いエピソードを持ち出したと考えられるのだ。安倍首相は「お父さん違憲なの?」話を現役航空自衛官でなく、自分のブレーンである日本会議幹部から「9条3項加憲案」とセットで聞いた可能性もあるだろう。

 ようするに、「お父さん違憲なの?」話というのは、改憲に利用しようと採用された過去のエピソードであり、安倍首相が「自衛隊は国民の9割から信頼を勝ち得ている」と主張する現在においては、説得力のカケラもない話なのだ。その上、安倍首相は「自衛官から聞いた」「数年前、中学校に入った直後」などと嘘を混ぜて語ってきたのである。

 改憲による「自衛隊明記」の理由はデタラメに塗り固められ、「憲法改正は総選挙で国民の審判を仰いだ」と嘘をつく──。だが、もっとも恐ろしいのは、こうした嘘が嘘だと大きく報じられないうちに、国民が騙されつつあるということだ。事実、憲法記念日に合わせておこなわれた世論調査でも、「自衛隊明記」の改正案について、朝日新聞では「反対」が48%、「賛成」が42%と拮抗。昨年に比べてわずかながらも差が縮まってきている。

 改元の露骨な政治利用が成功したいま、安倍首相にとっては絶好の、そしてまたとない改憲のタイミングであることは間違いない。連休明け早々の9日には憲法審査会が開かれるが、一気に世論を味方につけての改憲発議に持ち込む算段だろう。しかし、安倍首相の改憲案は、ただ自衛隊を明記するのではなく、9条を骨抜きにする、平和憲法を死文化させる危険なものだ。このままでは、この国は安倍首相によって、ほんとうに恐ろしい道に踏み出すことになる。

最終更新:2019.05.03 10:34

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