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岡村、今田、ジュニア「お笑い芸人は薬物をやらない」自慢の無自覚な隷従! 一方、ウーマン村本はひとり…
岡村隆史も「芸人は薬物やらない」論を展開…(『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』HPより)
「お笑い芸人は薬物をやらない」。いまだ連日テレビを賑わせているピエール瀧のコカイン逮捕報道。そんななか、やたら語られているのが「お笑い芸人は薬物をやらない」という説だ。当のお笑い芸人たちがワイドショーやラジオで盛んに口にしている。
ナインティナイン岡村隆史は、3月15日深夜放送の『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、芸人が薬物をやらない理由をこう推測してみせた。
「こういうのに手を出すと、ずっと言われるじゃないですか、『結局コイツ、クスリの力でおもしろいこと言うてたんや』って」
「笑いがウケたときの気持ちよさが(ドラッグに)勝っていると思うねんな。今日ウケたわ、気持ちええわとなるとおいしいお酒飲めたりするのが一番気持ちええな」
また土田晃之も15日放送『バイキング』(フジテレビ)で「芸人では聞いたことがない」「(薬物で捕まった人は)いないと思いますね」などと力説。土田は2017年にKAT−TUNの田中聖が大麻取締法違反で逮捕された(証拠不十分で不起訴処分)ときも、「ドラッグの話は芸人では聞かない」「芸人で薬をやるやつはいない。万が一いたら、それはつまらないやつ」などと、この「芸人薬物やらない説」を唱えていた。
千原ジュニアも、17日放送『Abema的ニュースショー』(AbemaTV)で「お笑い芸人は絶対に薬はやってない」と主張。吉本興業では天下りしてきた元警察官により数カ月に1度コンプライアンスについて講義を行なっているといい、その元警察官の「これだけ人数がいて、これだけの団体で、これだけ薬物が入っていないのは不思議だ」「給料400円、500円で10年、20年もやり続けるなんて君たちはある種、すでにジャンキーだ。笑いという麻薬を知ってしまったから、止められない。ただ薬物に手を出す必要もない」などという発言を紹介した。同番組に出ていたドランクドラゴンの鈴木拓もこのジュニアの発言に同調し、「お笑い芸人は一人もやっていない」と断言した。
さらに今田耕司は、23日放送『特盛!よしもと 今田・八光のおしゃべりジャングル』(読売テレビ)で、「おもしろいことは、いかにクリアな頭で考えて、計算して笑い取るかということ」「僕らが尊敬している人はやっていないんですよ。やりたくもないし、やってる人を尊敬もしてないし」「音楽をやってる人はビートルズが好きな人ですから。ビートルズはやってる。やってる人を神のように崇めているジャンルですから、一生オレらとは話は合わんと思う」などと、ビートルズや音楽というジャンル全体を引き合いに出し、お笑いと薬物がいかに無縁かを語ってみせた。
こんな調子でお笑い芸人たちが口々に「お笑い芸人は薬物をやらない」と胸を張り、それをまるでお笑いの持つ「優越的な本質」であるかのように自慢しているのだ。
しかし、これ、ちょっと恥ずかしすぎないか。薬物で逮捕されたケースは少ないのかもしれないが、海外では、薬物のオーバードーズで亡くなったブルース・ブラザーズのジョン・ベルーシなど、ドラッグをやっていたコメディアンはいくらでもいる。
「笑わせる快感がドラッグより勝っている」論の頭の悪さ
それに、芸人はドラッグをやっていなくても、他の犯罪や不祥事はいくらでもある。酒がらみの事件、性的暴行や強制わいせつなど、女性に対する性犯罪や女性側が泣き寝入りしたり事件化こそしていないだけでそれに準ずる不祥事も枚挙にいとまがない。警察沙汰にこそなっていないが、合コンを巡ってセクハラや性暴力まがいの実態が報道された芸人は数多くいる。
たまたま薬物犯罪が少ないことを自慢しているヒマがあったら、お笑い界の女性蔑視体質を一刻も早くあらためるべきだろう。それとも「クスリはダメだけど、性犯罪はOK」というのがお笑い芸人共通の価値観なんだろうか(そういえば、松本人志は、薬物で逮捕されたピエール瀧の作品はNGで、強制性交で逮捕された新井浩文の作品はOKとでもいうような転倒したことを言っていたが……)。
さらに、芸人が薬物をやらない理由として、多くの者が「お笑いがウケたときの快感がドラッグより勝っているから」などと言っているのも意味不明だ。それを言うなら、ミュージシャンのライブだって同じ。むしろこれまで薬物で逮捕された国内外のミュージシャンたちのライブのほうがはるかに規模も大きく快感も大きいだろう。
岡村の「クスリの力でおもしろいこと言うてたって言われるのがイヤ」発言や今田の「おもしろいことは、いかにクリアな頭で考えて、計算して笑い取るかということ」発言にいたっては、松本人志のドーピング発言同様、表現に対する意識の低さを露呈するものでしかない。
音楽、文学、映画、美術……古今東西あらゆるジャンルの表現や創作は、現状の社会の法律や倫理の枠に収まらない人間の狂気によって生まれ、そのことでいまある社会からこぼれ落ちている人間を救ったり、既存の価値観を壊し世界を更新させてきた。そのなかにはもちろん、薬物やアルコールに溺れた作家もいたが、だからといって、その作品に価値がないなどというような論評は、これまで聞いたことがない
そもそも創作活動は、様々な外的要因・内的要因の影響を受けるもので、どのファクターがどう作品に影響しているかどうかなど、明確に規定できるものではない。それを「ドラッグやってるから」とか「ドーピング」などと決めつけるのは、頭が悪すぎるだろう。
「クリアな頭で計算」などと言うが、本当に世の中の価値観をひっくり返すような新しい作品や突き抜けた作品は「計算」だけでは決して生まれえない。一般常識から逸脱する一種の狂気のようなものが必要なことは歴史が証明している。
お笑いが「計算からしか生まれない」という主張は、むしろ、現在のお笑いがいかに予定調和でつまらないかを語っているようなものではないか。
ウーマン村本は「小器用なテレビ芸に薬物を使う必要ない」
このように、「お笑い芸人は薬物をやらない」説はツッコミどころ満載なのだが、そんななか、この馬鹿げた仮説に異論を唱えた芸人がひとりだけいる。ウーマンラッシュアワーの村本大輔だ。村本は3月19日夜、noteにこんな投稿をした。
〈芸人は薬物をやらない
笑わせるのは薬物以上に気持ちいいから
と言われてるらしい
人の理解を超える作品を作ってる人がいない
要は覚醒してるような作品を作ってない、小器用なテレビ芸に薬物を使う必要ない
もちろん全員が全員じゃない話〉
「芸人は薬物をやらない」説と違って、この村本の主張に賛同している芸人は今のところ見当たらないし、むしろネットではいつものように総攻撃を受けている。
しかし、村本の指摘は的を射たものだ。現在、テレビや芸能界の中心でつくられているお笑い番組は、視聴者もよく見知ったいつもおなじみの芸人たちが、演者同士の人間関係をベースに、お互いに空気を読み合い、破綻しないトークを行い、そのなれ合いの空気のなかに楽しさを見出す「小器用なテレビ芸」に終始しており、ゼロから何かを生み出すようなクリエイティビティはほとんど失われている。
村本の言う通り、今はほとんどの芸人が「人の理解を超える作品」「覚醒してるような作品」を創作などしていないのだ。
創作の苦しみと本当のよろこびは、ウケるかどうかわからない、もしかしたら大外したり寒くなるかもしれないギリギリのところにチャレンジして、それを突破してこそ得られるものだ。しかし、予定調和のなかでの「ウケる快感」に満足しているのであれば、村本の言う通り、そんなテレビ芸に薬物などそもそも「必要ない」。
「ウケる快感」などと言っているが、彼らは本当の意味で「創作することの快感」をわかってないのだ。
「ドラッグやってない」自慢の芸人と権力批判できない芸人
そう考えると、今回、お笑い芸人たちが揃いも揃ってこういう発言をしたこと自体が、今のお笑いのサムい状況を物語っているといえるだろう。
お笑いというのは、本来、既存の権威や常識を疑い、大衆の価値観をひっくり返すものだ。
今回のピエール瀧事件にしても、ドラッグや麻薬という、明確な被害者もおらず、国によっては合法だったり非犯罪化も進む薬物事件の容疑者をここまで「極悪人」として吊し上げること自体が異常なことだろう。
別に、ドラッグや麻薬を肯定する必要はないが、少なくともお笑い芸人なら、むしろ「法を破ったものは厳しく糾弾されなくてはならない」というムラ社会体質の同調圧力こそを笑い飛ばすべきだ。
ところが、ワイドショー芸人たちはこの「村の掟」になんの疑問も持たず、あまつさえ同調圧力を強化するスピーカーの役割すら果たしている。
本サイトではこれまで、お笑い芸人がなぜ権力批判できないのか、ということを何度も論じてきた。既存の法律に疑問を抱くことなく薬物犯罪に目くじらを立てること、もっと危険で大きな悪を犯している権力を批判することなく応援すること。この2つは根っこでつながっているのではないか。
「お笑い芸人は薬物をやらない」と自慢する風潮に異を唱えたのが、村本ひとりだったというのは決して偶然ではないだろう。
(本田コッペ)
最終更新:2019.03.25 10:57
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