『zero』有働由美子はニュース感覚“ゼロ”? 沖縄県知事選をスルー、安倍改造内閣を「適材適所」と忖度フォロー

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『news zero』公式HPより

 これが「有働由美子というジャーナリスト」の答えなのか。10月1日から有働由美子の新MCでリニューアルした『NEWS ZERO』改め『news zero』(日本テレビ)。有働といえば、今年3月、NHKでは珍しくリベラルな論調だった『あさイチ』を降板、退社してフリーに。フジテレビやテレビ朝日からも熱烈なオファーがあったとされるなか、結果的に有働が新天地に選んだのは日テレの『news zero』で、本人が退社時に「ジャーナリスト」として活動するとコメントしたこともあり、その仕事に注目が集まっていた。

 しかし、蓋を開けてみると、どうだったか。画面に映し出されたのは「ジャーナリスト」とは程遠い姿。たとえばリニューアル初回の1日の放送では、前日9月31日に投開票だった沖縄知事選に、なんと、最後まで一言も触れなかったのだ。


 言うまでもなく、玉城デニー氏が当選した沖縄知事選は、辺野古新基地建設の是非を最大の争点として沖縄と日本の今後を占う、極めて重要な選挙だった。さらに、今回の沖縄知事選では、対立候補の佐喜真淳氏を応援する者たちによる未曾有のデマ攻撃が展開されるなど、ジャーナリズムの切り口はいくらでもあった。しかも、有働がMCを務めていたNHKの『あさイチ』では、断続的に沖縄の基地問題を扱っており、有働自身の関心も高いはずだと思っていた。

 ところが、繰り返しになるが、有働は自分がメインキャスターとして采配を振るう『news zero』で沖縄知事選をニュースとして扱わなかっただけでなく、番組中、沖縄の「お」の字すら一切言及しなかったのである。こんなことってありなのか。

●有働由美子は安倍改造内閣を「適材適所ってことでいいんですか」とフォロー

 番組がやったことといえば、冒頭から約30分、本庶佑氏のノーベル医学・生理賞の話題が延々と続いたのだが、有働の仕事はスタジオから中継で山中伸弥氏にインタビューをしたことぐらい。それも明らかにグダグダで、社会問題と関連づける質問も皆無だった。

 愕然としたことは他にもある。番組終盤、第4次安倍改造内閣の組閣情報が速報で入ってきたのだが、国会記者会館から中継で、担当記者が「総裁選勝利のお返しをするという論功行賞の色合いも強く、ある自民党議員は『在庫一掃内閣だ』と話している」と解説された。するとスタジオの有働は「すみません、『在庫一掃内閣』と言われているのも結構な言いようなだなあと思うんですけども、適材適所は適材適所ってことでいいんですか」と発言したのである。

 新閣僚の顔ぶれを素早く把握し、内閣の特性を予想するのが本来の仕事で、しかも、本サイトでも詳述したように、とりわけ片山さつきの初入閣には一言あってもいいはずなのに、何を恐れているのか、まるで安倍首相をフォローするような言い方ではないか。

 昨日2日の放送でも、そのおどおどした姿勢はまったく同じだった。新内閣の閣僚、安部首相が名付けた「全員野球内閣」なるニックネームに対し、自民党内からも厳しい声が上がり、野党からは「閉店セール内閣」「まったくワクワクし内閣」などと批判が出ていることがVTRで伝えられたのだが、これを受けたスタジオの有働のコメントは「なんか“なんとか内閣”とかつけるからいろいろと言われちゃう感じもしますけど」。「いろいろ言われちゃう」ってどこ目線なんだというのも気になるが、そもそも内閣が厳しい批判も含む議論にさらされるのは民主主義国家なら当たり前のことだが、まるで批判や議論が起きること自体がよくないことのようにこぼす。もしかして有働って、“批判なき政治”と発言した 今井絵理子衆院議員と同じ感覚の持ち主なのか。

池上彰は有働に「簡単にジャーナリストなんて自称してほしくない」と苦言

 沖縄知事選を完全スルーしただけでなく、政治的な話題に踏み込むどころか、逆に自分から身を引いていくような有働の『news zero』。放送前は、有働に鋭い政権批判を望むリベラル派の声も少なくなかったらしいが、これでは肩透かしもいいところだろう。

 しかし、本サイトとしては、この有働の腰砕けMCも、正直に言って“悪い予感”が的中したという感想だ。

 そもそも『news zero』は、前任MCの村尾信尚時代からたいして政権批判をやってこなかったが、それでも翁長雄志前沖縄県知事の国連スピーチを取り上げたり、公文書改ざん問題や加計問題は厳しい言葉で批判、継続的に追及していた。時には、元大蔵官僚の村尾が安倍首相の経済政策について鋭い指摘をする場面もあった。その象徴が、2014年12月の総選挙の特番で安倍首相を憤慨させた一件だ。アベノミクスなどについて具体的な数字を示してほしいと求める村尾に対し、安倍首相が苛立ち、最後にはイヤホンを外して好き勝手にまくしたてるという醜態をさらした、あの“イヤホンブチギレ事件”のことだ。

 そうした村尾の姿勢は安倍官邸から疎ましく思われた。先日、番組を12年間支えた村尾が降板し、番組内容のリニューアルが行われたのも、背景には日テレ上層部の安倍首相への忖度があったとも言われている。

 実際、『zero』の“官邸忖度新体制”を象徴するように、当初、安倍首相の腹話術人形と揶揄されている同局の青山和弘氏のサブキャスター就任が調整されていた。本サイトでも伝えたように、結局、青山氏の就任は局内の女性に対するセクハラ問題を受けて白紙となったのだが、逆に言えば、有働は青山氏の起用などの“安倍応援番組化”に対して、何も言わずに了承していたことになる。

 いや、有働の姿勢は『zero』の官邸忖度の方針だけが問題でもないだろう。そもそも、本サイトでたびたび取り上げてきたが、昨年3月までの『あさイチ』が政権批判も厭わないリベラルな姿勢で奮闘したのは、コメンテーターの柳澤秀夫氏の的確な解説や、現場スタッフの精力的な取材、そして同じくMCを務めた井ノ原快彦の“生活者目線”の怒りによるところが大きかった。そして、実のところそうした場面での有働はというと、よく言えば無難な進行役、悪く言えばそこに座っているだけで、自らが積極的に社会問題に踏み込むことはさほどなかったのだ。

有働は生出演した『月曜から夜ふかし』“沖縄ディス”企画にもヘラヘラ

 また、有働は“エビジョンイル”と言われたNHKの海老沢勝二元会長や数々の問題を引き起こしてきた籾井勝人前会長からも寵愛を受けており、「お上に従順になることで出世してきた」との評もある。事実、同じくNHKからフリーに転身した池上彰は、今年4月にさる番組の会見のなかで、有働のNHK退社について感想を問われ、「ジャーナリストとしては、そんな簡単にジャーナリストなんて自称してほしくないなと受け止めました」と、その本質を見透かすような発言をしていた。

 その有働のニュースセンスのなさは、実は、『zero』初回放送後にハシゴ出演した『月曜から夜ふかし』にもあらわれていた。その日、特別に生放送にしてまで有働を出演させた『夜ふかし』は、同じ事務所のマツコ・デラックスの人気バラエティに登場させるという『zero』と有働のプロモーションだったわけだが、そこでも有働はトホホとしか言いようがない有様だった

 『夜ふかし』ではメイン企画として番組後半、「全国の注目されないニュースを取り上げてみた件」というコーナーで「沖縄の子ども 中学生になると 急に学力低下問題」なるものをVTRで取り上げた。これは、沖縄の中学3年の2018年度全国学力テストが全国で最下位だったことをフックにした典型的な“沖縄ディス”の企画。沖縄県知事選の投開票の翌日というタイミングでこんな企画やること自体、番組のセンスを疑わざるをえないが、そんな沖縄をバカにするような映像明け、スタジオでマツコや村上信五に囲まれたスタジオの有働は、知事選についてはもちろん、企画にいささかの苦言も呈することなく、ただヘラヘラしているだけ……。

「ジャーナリスト」を標榜するニュースキャスターとして出演しておきながらこのザマなのである。はっきり言って、これでは『news zero』ならぬ「ニュース感覚がzero」だ。

 いずれにせよ、新体制『zero』のあまりに腰砕けな内容と、それに輪をかける有働の“ヘタレMC”は、日テレの夜の報道番組から、政治の徹底検証や権力批判が完全にデリートされたという事実を示している。少なくとも、有働由美子が変わらない限り、今後も一切、『zero』には期待できない。

最終更新:2018.10.03 02:59

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