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アベ友と極右教科書をめぐる利権の構造(後編)
アベ友・八木秀次とヘイト・晋遊舎の道徳教科書が自治体に事前売り込み! 教科書に安倍首相の演説が丸々1ページも
日本教科書社の中学校道徳教科書(公式HPより)
前編では、安倍首相の極右教育のブレーンである八木秀次・麗澤大学教授が理事長をつとめる「日本教育再生機構」「(以下、再生機構)に、これまた首相と八木氏の息のかかった自治体首長による「教育再生首長会議」(以下、首長会議)を通じ、巨額の公金が横流しされていたことを紹介した。これは沖縄タイムスが15日付でスクープしたものだが、実はこの“アベ友”団体間の利権構造をめぐっては、もうひとつ重大な疑惑が浮かび上がっている。
それが、八木氏が首長会議をつかって、自前の教科書を文科省への申請中にも関わらず、売り込みをかけていたという疑惑だ。
前編でも言及したように、教科書をめぐっては、検定・採択の公平性を担保するため、採択期間などにおける宣伝や広告が制限されている。ところが八木氏らは、その前段階である文科省の検定期間中に、公立校での採択に大きな影響力をもつ各自治体首長に対し、露骨に営業をしかけていたことが明らかになったのである。
詳細を伝える前に、まずは背景の説明が必要だろう。
そもそも、本サイトが今年2月21日の記事「児童凌辱のマンガも出版、ヘイト出版社・晋遊舎が“道徳教科書”に参入! 安倍のブレーン・八木秀次がバックか」で報じたとおり、八木氏の再生機構は『マンガ嫌韓流』などのヘイト本で知られる晋遊舎の武田義輝会長らと協力して、「日本教科書株式会社」(以下、日本教科書社)なる道徳教科書専門の新会社を運営、2019年度から中学校で始まる道徳教科への参入を目指していた。
日本教科書社の設立は2016年4月28日。設立時の代表取締役には八木氏が就任し、所在地も再生機構と同じだった。そして文科省への申請期間が始まる直前の2017年4月21日に晋遊舎の武田会長が取締役に加わると、住所も再生機構から晋遊舎のビルに移転。八木氏が2017年9月に表向きの代表を辞任すると、武田会長が代表に繰り上がった。昨年4月から文科省による検定が行われているなか今年初頭にはホームページを開設。3月に日本教科書社の教科書に合格が出され、現在、他の7社と並んでの採択期間となっている。
なお、この道徳教科書の新会社とヘイト本の版元・晋遊舎のただならぬ関係を指摘した本サイトの2月の報道後、ホームページ上からは武田会長の名前が消え、別の人間が代表を務めていることになっているが、会社登記によれば、7月現在も武田会長は日本教科書社の代表取締役社長のままである。
つまり、八木氏と晋遊舎の武田会長はビジネスパートナーとして道徳教科書の作成と検定合格に取り組んできたわけだが、こうした経緯から分かるように、日本教科書社には“八木隠し”と“晋遊舎隠し”の動きが透けて見えていた。
そうしたなかで今回、その日本教科書社が、なんと文科省の検定期間にもかかわらず自治体首長らに対してゴリゴリの営業をしかけ、さらには“口利き”としか思えない要請までしていた形跡が浮かび上がったのだ。
筆者の手元に3組の文書がある。大阪の市民団体が、首長会議の現会長・野田義和氏が市長を務める東大阪市など、複数の自治体に情報公開請求をして入手したもののコピーだ。
1枚目は2017年7月12日、教育再生首長会議の会議で配布されたリーフレット。そこには「日本教科書株式会社」とクレジットされ、「コンセプト」や「編集の基本方針」「教材形式の特色」などが細かく書かれている。
2枚目は、「会社案内」と書かれた日本教科書社の冊子だ。武田会長(当時、日本教科書社代表取締役)の「ご挨拶」などが記されており、2017年11月、首長会議で日本教科書社道徳教科書の監修者である白木みどり・金沢工業大教授の講演会が行われた際に配布されたものと見られる。武田会長は「ご挨拶」をこのように締めくくっている。
〈検定合格後は、ひとりでも多くの子供たちに私どもの教科書を届けるために尽力してまいりましたので、一層のご理解と支援をお願いします。〉
検定合格前から不正が疑われる売り込みをかけていた“アベ友”八木の教科書会社
すなわち、日本教科書社はまだ検定も合格していない時期に、他社を出し抜いて、採択へ大きな影響力をもつ自治体首長らに対し「ご理解と支援」を要請していたことになる。
これだけでも驚きだが、3枚目はさらに露骨だ。「ご案内」と題された文書で、首長会議が今年1月24日に行った会議で配布されたものと見られている。〈市長各位〉から始まり、〈日本教科書株式会社 顧問 八木秀次 代表取締役社長 武田義輝〉の連名となっているこの文書は、首長に対して直接的かつ極めて強い要求を行っている。
〈市長が主催をする総合教育会議では教科書採択などについて議論することができるとされています。つきましては、弊社に関する資料を同封致しましたのでぜひご覧ください。
あわせて、市長、教育長、教育委員の皆様に、直接ご説明の機会をおつくり頂きたく、ご検討賜りたいと存じております。〉
文書に出てくる「総合教育会議」とは、第二次安倍政権が地方行政教育法を改正して制度化した首長と教育委員会により構成される機関。教育に関する根本方針を策定するとされるが、この総合教育会議の新設により、これまで教育委員会の権限が大きかった教科書採択に首長の意見が介入しやすくなった。つまり、この日本教科書社側の文書は、採択にあたっての“口利き”を首長に対してモロに要請しているのである。
繰り返すが、これらの文書が首長会議で配布されたとされる時期は、いずれも検定申請中であり、合格の可否すら決まっていない段階だ。
教科書採択をめぐっては、これまで教科書会社側から自治体側への金品贈与などが問題化しており、とりわけ、2015年から2016年にかけては育鵬社を含む不適切な採択運動が表沙汰になったこともあって、利益供与の禁止はもちろん、公正性担保を徹底するために宣伝等にも制限がかけられている。
たとえば、文科省の通知では〈検定申請本及びその内容を、教科書採択を勧誘するための宣伝活動(実質的にこれと同視され得るものを含む。)には一切用いないこと〉や、〈採択関係者若しくは公職関係者又はこれらの職にあった者など採択関係者に影響力を及ぼし得る者(教科書発行者の社員である者を除く。)を教科書採択の勧誘を目的とした宣伝活動等に従事させないこと〉などが定められている。
また、業界団体である一般社団法人教科書協会は「教科書発行者行動規範」において〈会員各社は、公正かつ公平な職務執行を法令により義務付けられている教科書の採択に関与する者〉に対して〈健全かつ適切な関係を保たなければならない〉などの自主ルールを策定しており、文科省もこれを遵守するよう通告している。
中学2年生用道徳教科書に安倍首相の演説がまるまる1ページ解説なしで
検定申請中にもかかわらず、採択に大きな影響力を持つ首長に対して営業をかけ、ましてや採択権限者らに〈直接ご説明の機会をおつくり頂きたく〉とお願いする。そこに「健全かつ適切な関係」が保たれているはずがないが、しかも、日本教科書社の実質的母体である日本教育再生機構は首長会議から自治体の公金を流してもらいながら、その事務局を委託されていたのである。裏を返せば、事務局的役割を担うことの“対価”として、八木氏の教科書の採択に協力を迫っているという見方もされうるだろう。
少なくとも、再生機構(日本教科書社)と首長会議の癒着構造は明らかであり、八木氏らはその癒着関係を教科書採択に利用しようとしていたと考えるのが自然ではないか。
逆に言えば、八木氏らはなぜ、これほどまでに露骨な営業を敢行することができたのか。それはやはり、安倍首相の存在抜きには考えられないだろう。
そもそも、本サイトでは以前から指摘してきたことだが、八木氏が検定の結果が出る前の段階で日本教科書社の代表から降りた(裏では「顧問」として首長会議への営業を続けたのだが)のは、2017年4月24日〜27日の申請期間までは誰もが安倍首相のブレーンだということを知っている八木氏の存在を前面に出すことで官僚に忖度させようとし、他方、検定に合格したあとは八木氏の名前を隠しておくことで「お手盛り」との批判を避ける狙いがあった可能性がある。
さらに、日本教科書社の道徳教科書には、他社には見られない特徴がある。もとより道徳の教科化は安倍首相とその周辺が企図する愛国教育の発露であり、その内容の酷さは別の機会に論じたいと思うが、実に日本教科書社の教科書は、合格した全8社のなかで唯一、“安倍首相の演説”を教材に用いているのだ。
日本教科書社の道徳教科書は2年生版で「和解の力」と題し、まるまる1ページをつかって、安倍首相が2016年12月27日に真珠湾で行った演説を抜粋引用。解説のサブテキストは一切ついておらず、端的に言って安倍晋三の宣伝以外のなにものでもないだろう。まるで、森友学園が経営する幼稚園で、園児たちに「安倍首相ガンバレ!」とエールを送らせていたことを思い出させるではないか。
首相のブレーン・八木秀次氏の教育再生機構および日本教科書社と教育再生首長会議の癒着、そして、この爛れた極右愛国教育利権の中心に鎮座する安倍首相。この問題が看過されるようならば、もはや民主主義国家ではない。全メディアが徹底して究明すべきはもちろん、国会でも強く追及されるべきだ。
(前編はこちら)
(編集部)
最終更新:2018.07.19 11:22
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