AV出演強要を告白した人気女優・香西咲が“枕営業”強制の事実も告発! この機に乗じて捜査当局のAV取締の動きも

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「エスワンナンバーワンスタイル」公式サイトより


 先月11日、大手AVプロダクション・マークスジャパンの元社長ら3人が、契約している女性にAV出演を強要したとして逮捕された事件を皮切りに社会問題化したAV業界の出演強要問題。

 アダルトビデオ作品への出演であることを隠しながら「グラビアモデル」として契約書にサインさせ、その後、脅しをかけてAVへの出演を迫る。業界内ではこのような問題が頻繁に起きていることをNGO団体のヒューマンライツ・ナウも以前から指摘しており、AVに出演する女性たちの人権をどう守っていくかについての議論はかねてより交わされていた。

 そんななか、マークスジャパンの元社長らの逮捕が報道され、内閣府も「AV出演強要についての実態把握に努める」との答弁を閣議決定。今後、さらなる実態が解明されていくだろう。

 その最中、先週発売された「週刊文春」(文藝春秋)16年7月14日号では、人気AV女優の香西咲氏が、自身もAVデビュー時に出演強要にあっていたと告白し、話題となった(外部リンク:「週刊文春デジタル」)。

 彼女が出演強要の被害にあったきっかけは、五反田でAVとは無関係を装ったスカウトから声をかけられたことだった。もともとレースクイーンやモデルとして活動していたものの、所属事務所が解散してしまいフリーの状態だった香西氏はそのスカウトの話を聞くことに。

 そこで紹介されたのが、投資会社という触れ込みのマークスインベストメント・青木亮社長だった。それから青木氏と香西氏は「面談」と称して週に1回90分から2時間ほど、香西氏の将来について話し合いの機会をもつことになるのだが、それは「面談」ではなく「洗脳」そのものだった。

 雑貨屋をつくることが香西氏の夢だと聞いた青木氏は、「ビジョンブック」なる、目標やそれを叶えるためにするべきことを書き出したノートを10冊以上つくらせながら、自分の考えを彼女に刷り込ませていく。

 その考えとは、話題性のある女社長となるために、まずはタレントとして有名になるべきだというもの。そして彼は、「これからは中国だ。そして中国で最も人気があるのは「セクシー女優」だ」「モニカ・ベルッチやシャロン・ストーン、日本ならば土屋アンナや菅野美穂、みんな脱いで成功した」「目的のためなら手段を選ぶな」などと話し、香西氏を「洗脳」していった。

 さらに青木氏は、「プロモーター」や「相談係」と名乗る自分の息のかかった人間を彼女の周囲に次々と送り込んでスケジュールを支配。家族や友人など、香西氏の相談相手と成り得る人々を彼女から引きはがすことまでしていた。

 青木氏がそのような行動をしていたのには理由がある。青木氏はマークスインベストメントの社長である他に、AVプロダクション・アットハニーズのオーナーでもあったのだ。

 そして言葉巧みな「洗脳」の結果、思考停止状態に陥った香西氏は人里離れた撮影スタジオに連れて行かれ、強要の果てにAV撮影を行うことになるのだった。

「週刊文春」16年7月14日号で香西氏はこのような告発をしているのだが、今週木曜日に発売された16年7月21日号では、青木氏によるさらに悪辣な「洗脳」の実態が明らかにされている。

 強要されてのAVデビュー後、香西氏には月に1回のペースで撮影の予定が入るようになった。苦しみながらそのスケジュールをこなす彼女はアルコールと睡眠薬を手放せなくなり、酩酊することで何とか正気を保つような生活に陥ってしまう。そんななか、さらに香西氏を追いつめる事態が起こる。青木氏からシンクタンクを運営するある人物の名をあげながらこう告げられたのだ。

「T社のY会長がお前に会いたがっている。わかってるよな」

 これは、もちろん性接待の指示である。

「Y氏は中国や香港にも太いパイプを持っていると聞かされていました。青木はどうしてもY氏のネットワークを利用したかったのだと思います。私は即座に『嫌です』と断りました。すると、青木は『断れば、今後お前のやりたい仕事は二度とさせない』と一方的に宣告しました。私の夢を青木が応援すると約束してくれたので、私は彼の打ち出した戦略を信じ、すでに一年以上、AVにも出演を続けてきたのです。拒めば全てが台無しになってしまう。絶望的な気持ちになりました」

 そして後日、彼女は青木氏に連れられY氏と対面。Y氏はその日のうちに香西氏を自分のマンションへ連れ込んだ。

「『お前のエロさを見せてくれ』と、部屋に入ってすぐY氏は大の字になってベッドに横たわり奉仕を要求しました。私はビールと精神安定剤を飲み、心を殺して従いました。その後、拒んでいるにもかかわらず、彼は避妊具もつけずに挿入してきました」

 なんとも悪辣な枕営業の強要だが、この話を受けてアダルト業界関係者はこのように証言する。

「大手のIT企業社長などと愛人契約、今で言う「パパ活」ですか? そういうかたちでAV女優と金持ちが枕営業するというのは根強くありますし、あと、芸能界とかアダルト業界の関係者が女の子においしい話をもちかけてホテルに連れ込むというのももちろんあります。でも、香西さんの場合、自分ではなく、事務所の人間が有力者とのコネを得るために強要されて枕営業を行っているわけですから、それらとはまた違ったひどいケースと言えますね」

 ちなみに、AV女優の瀬名あゆむ氏は、ウェブサイト「ブッチNEWS」の連載コラムのなかで枕営業について、AV業界でも枕営業が持ちかけられることは滅多にないと前置きしつつ、実体験を踏まえてこのように書いている。

〈ぶっちゃけますけど私自身もAV業界に入って何回か、枕営業的なことを持ちかけられたことがありました。
 これまた仕事やオイシイ話をチラつかせて口説いてくるパターンでした。
 でも、どう考えても、その人に大きい仕事を動かす権限なんかないんです。その人や、その人が繋げる人に、そんな権力も実力もないんです。本当に口からでまかせでしたね。だから思いっきり無視しました。そういうことがあったから、私的には「枕チラつかせてくる人って小物なんだな。ああいう人と関わっていいことは何もないな」と確信するようになりました〉

 枕営業を持ちかけてくるような“自称”業界有力者にろくな人間はいないということのようだ。

 香西氏の件に話を戻すと、Y氏への性接待はその後も続き、しかも要求はさらにエスカレート。「別の女性も連れた3Pを録画したい」とまで言い始めたという。これが我慢の限界だった。

 あまりにも理不尽な仕打ちから、肉体的にも精神的にも、完全に臨界点に達した香西氏は、慢性膵炎、胃腸炎・逆流性食道炎になってしまう。そして4年目の契約更新を前に弁護士を立てて独立。ついに「洗脳」の呪縛を断ち切ったのだった。

 この事実を「週刊文春」に告発するとともに、彼女は現在、青木氏を相手取り裁判を起こす準備に入っているという。

 ただ、「洗脳」が解けたからといって話はそれで終わりではない。いったん市場に出回ったAV を回収することはできないし、それどころか、撮影された素材は「総集編」といったかたちで何度も商品化されていくことになる。香西氏は同誌でこのように語っている。

「マークスインベストメントに所属していた時代に撮られた私の三十余の作品は、知らないうちに二次利用、三次利用され、出演作品は数百にも膨れ上がっています。ネット配信が当たり前の時代、その残骸も含めて、AV女優の履歴は、私の意志と関係なく世の中を漂い続ける。もう二度ともとの人生に戻ることはできないのです」

 ネットでのダウンロード購入が一般的になった今では、10年〜20年前の過去のアーカイブにもクリックひとつで簡単にアクセスすることが可能になった。これまでであれば自然に市場から消えていたものが、半永久的に残り続けることになる。強要により一度でも出演させられてしまったら、その後の人生をAV界に足を踏み入れてしまった過去がバレないかどうか怯えながら過ごすことになり、たとえバレなかったとしても、それが原因で就職や結婚などに二の足を踏んでしまったりと、残りの人生に大きな影響をおよぼすことも少なからずあるだろう。ネット配信時代となった現在では、これまで以上に引退後のAV女優をめぐる環境は厳しさを増しているともいえる。

 しかし、これまであげてきたような香西氏のような告発や、NGO団体ヒューマンライツ・ナウによるAV出演強要に関する報告書がある一方、AV業界側からはそういった事例は一部の悪徳業者が行っていることで、健全化が進んだ現在ではそのようなメーカーやプロダクションは少ないとの反論もなされている。それもまた一面の事実ではあるだろう。

 また、現在の「出演強要問題」の盛り上がりに乗じて、政府や捜査当局に間には、この問題に介入してAV業界潰し、もしくは自分たちの利権につながるような業界監視機関立ち上げという意図も見え隠れしている。

 そんな状況を鑑み、元AV女優で現在は作家の川奈まり子氏は、今月11日、プロダクションやメーカーも巻き込んだ、出演者のための業界内部の団体「表現者ネットワーク(AVAN)」を立ち上げた。この団体では、出演強要などの問題はもちろん、引退後の女優のセカンドキャリア構築サポートなどの活動も行っていく予定であるという。

 今後もこのAV出演強要問題に関しては議論が続けられ、さらなる実態の解明も進んでいくだろう。今後も状況を注視していきたい。
(田中 教)

最終更新:2016.07.16 11:40

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