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韓国反発「明治産業遺産」は安倍首相のゴリ押し! 仕掛人の女性に「俺がやらせてあげる」
衆議院議員安倍晋三公式サイトより
日本が推薦した「明治日本の産業革命遺産」(以下、「明治産業遺産」)が、世界遺産に登録されることが5日の世界遺産委員会で決定した。
だが、4日の審議は、韓国の「遺産群のなかには強制徴用が行われた施設がある」という主張から日本と対立。審議が1日先送りになったことを受け、あたかも韓国側の妨害によって審議がもち越しとなったような報道が行われた。そのため、ネット上ではまたぞろネトウヨが感情を剥き出しにし、「徹底的に韓国を潰そう!」「騙したり盗んだり嫌がらせしたりするキチガイ民族とは断交すべき」「もう嫌韓じゃなくて断韓だな」と韓国を非難した。
しかし、このような禍根を残す場所を世界遺産にとぶち上げれば、韓国から反発が起こるのは当然のこと。今回の「明治産業遺産」が世界遺産に登録されるには他国との調整が必要不可欠で、最初から時間がかかることは予想できたはず。第一、国内の世界遺産暫定リストには、ほかに11件もある。ならば、なぜ日本は「明治産業遺産」を性急に推薦したのか……。
日本は政治問題化するなと韓国に文句を言っているが、今回のプロジェクトには、日本側にきわめて政治的な意図があった。
じつは、「明治産業遺産」の世界遺産登録は、ほかならぬ安倍首相がゴリ押ししたものだったのだ。安倍首相はいまから数年前、この世界遺産登録プロジェクトを推し進めてきたある女性に「俺が(世界遺産登録を)やらせてあげる」と約束していたという。
そもそも、今回の世界遺産登録は、「一般財団法人産業遺産国民会議」なる団体が運動を行ってきたのだが、そこには安倍首相のオトモダチがわんさといる。
まず、名誉会長の今井敬・経団連名誉会長、原子力産業協会会長は、安倍首相の側近中の側近である政策秘書官・今井尚哉の叔父にあたる。そして理事には小島順彦・三菱商事取締役会長が名を連ねるが、彼も安倍首相の戦後70年談話の有識者懇談会のメンバーで、安倍首相を支える経済人の会「さくら会」の主要メンバー。同じく理事の石原進・九州旅客鉄道取締役会長は、あの籾井勝人氏をNHK会長に推薦した人物である。
それだけではない。発起人には、安倍首相の小学生時代の家庭教師である本田勝彦・JT顧問や、前述の「さくら会」メンバーの木村恵司・三菱地所代表取締役会長、安倍首相とゴルフ仲間の日枝久・フジテレビジョン代表取締役会長、安倍首相を「全国で一番近い政治家」と語る地元山口の有力な支援者である福田浩一・山口銀行代表取締役頭取……と、ほとんど“安倍首相応援団”というべき面子が揃っている。
しかし、このプロジェクトが安倍首相の肝いりであることを物語っているのは、なんといっても故・加藤六月元農水相の長女で、都市経済評論家の加藤康子氏の存在だろう。
加藤氏は今月2日、内閣参与となった女性だが、前述の「一般財団法人産業遺産国民会議」の専務理事で、「明治産業遺産」を世界遺産にと10年間にわたって根回しを行ってきた。今回の世界遺産登録の“陰の立役者”と呼ばれている女性なのだが、この康子氏と安倍首相は“幼なじみ”で、家族同然の深い関係にあるのだ。
康子氏の父・六月氏は安倍首相の父・晋太郎氏の四天王の筆頭で、康子氏の母は安倍首相の母・洋子氏と“姉妹”のように親しく、昔から家族ぐるみの付き合いをしていたという。
また、康子氏は安倍首相の側近中の側近とも言われる議員・加藤勝信氏の元婚約者で、現在は勝信氏が康子氏の妹と結婚したため、義理の姉にあたる。この勝信氏は第二次安倍内閣で内閣官房副長官を務め、例の「文化芸術懇話会」の発足にも参画。先日の百田発言を「拝聴に値する」とコメントした人物だが、勝信氏の官房副長官への登用には、勝信氏の義母と親しい安倍首相の母、洋子氏の人事だったと言われている。
このような“華麗なる一族”ごっこで内閣の人事が決まっていることには辟易とするが、問題は今回の「明治産業遺産」も、そうしたなかでかたちとなっていったことだ。
事実、まだ暫定リスト入りしたばかりの09年に、安倍首相の妻である昭恵夫人もブログで康子氏を友だちと紹介し、シンポジウムに参加するなど世界遺産登録を応援。“家族ぐるみ”で後押ししていた。
また、「週刊新潮」(新潮社)15年5月21日増大号に掲載された彼女のインタビューによると、自民党が野党に転落していたころ、安倍氏は「明治産業遺産」の世界遺産登録への熱意を語った康子氏にこう語ったという。
「君がやろうとしていることは『坂の上の雲』だな。これは、俺がやらせてあげる」
そして、安倍首相は総裁の地位に返り咲いた3日後、彼女に電話をかけ、「産業遺産やるから」と、決意を語ったという。
幼なじみに丸乗りし、頭の上がらない母親も加わり、発言力のある経済界のオトモダチを動員する──。こうして安倍首相は肝いりで「明治産業遺産」の世界遺産登録に暗躍してきた。
実際、そのやり方は強引としかいいようのないものだった。文科省の文化審議会は13年8月に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を正式に推薦候補として決定していたにもかかわらず、内閣官房の有識者会議は対抗するように「明治産業遺産」を正式推薦に選定。結局、最終的には菅義偉官房長官が決定権を握り、「明治産業遺産」を政府推薦とし、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を先送りにしたのだ。
その上、今回、世界遺産に登録されることになった「明治日本の産業革命遺産を構成する23施設」のなかには、なぜか安倍首相のお膝元である山口県の「松下村塾」「萩の城下町」が入っている。これのどこが「明治日本の産業革命遺産」なのか。ちなみに当初の名称は「九州・山口の近代化産業遺産群─非西洋世界における近代化の先駆け─」だったのだが、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」に変更するよう、以前にイコモス(国際記念物遺跡会議)から求められている。重工業に絞るように、と言われているのに、それでもしつこく「松下村塾」「萩の城下町」を残しているのである。
松下村塾の吉田松陰といえば、安倍首相が尊敬してやまない人物だ。長州が政治家としてのルーツだと考える安倍首相は、萩の街もなんとしても入れたいのだろうか。そんな私欲で世界遺産に推薦するとは呆れてしまうが、そもそもの名称である「非西洋世界における近代化の先駆け」にも、安倍首相らしい思想が滲み出ている。だいたい、「非西洋世界における近代化の先駆け」など、世界史的には何の意味もない。
それどころか、そこには韓国が一貫して主張している「徴用工」「強制徴用」の“負の歴史”があり、戦前の侵略国家を象徴する遺産と言ってもいいだろう。
しかし、安倍首相や周辺にいるオトモダチはそう考えない。むしろ、戦前の大日本帝国の体制、「富国強兵」や「脱亜入欧」といった思想を肯定・美化し、その歴史修正主義をさらに現実化するため、この世界遺産登録をごり押ししたのだ。
自分の思想のバッグボーンである戦前への回帰を象徴する施設に、「世界遺産」のお墨付きをもらいたい──こんな話に付き合わされるとは、バカバカしいにもほどがある。しかも、遺産保護のためにかかる膨大な維持費は税金から賄われるのである。
安倍政権はついに国民の理解を得られなくても安保法制を通すと明言したが、この世界遺産登録もその地続きにある。多くの犠牲を伴ったという歴史を無視し、強い日本という架空の物語を世界遺産登録によって捏造し、戦争に駆り立てる──。こうした安倍首相の独善に、韓国ではなく、日本国民こそ怒るべきなのではないのか。今回の世界遺産登録を手放しで喜ぶことなどできない。
(水井多賀子)
最終更新:2015.07.06 03:22
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