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森友文書改ざん問題を彷彿と話題の映画『ペンタゴン・ペーパーズ』!三浦瑠麗はまたトンチンカンコメント
映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』公式サイトより
スティーヴン・スピルバーグが監督を務め、メリル・ストリープやトム・ハンクスといったオールスターキャストが出演している『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』が先月30日に日本公開され話題となっている。
ご存知の方も多いかもしれないが、念のため説明しておくとこの作品は、トルーマン、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソンの4政権が隠ぺいし、ベトナム戦争に関して国民を欺き続けていた証拠となる資料「ペンタゴン・ペーパーズ」の公開をめぐる、ニクソン政権とワシントン・ポスト紙との戦いを描いた作品。
亡き夫の後を継いでワシントン・ポストの社主となったキャサリン・グラハムをメリル・ストリープが、「ペンタゴン・ペーパーズ」公開に圧力をかけるニクソン政権や会社の役員に対し「報道の自由を守るには報道しかない」を口癖に反発し続けるワシントン・ポスト編集主幹のベン・ブラッドリーをトム・ハンクスが演じている。
ニクソン政権は、一番始めに「ペンタゴン・ペーパーズ」をすっぱ抜いたニューヨーク・タイムズ紙に対し、国家の安全保障を脅かすという理由で記事の掲載差し止めを要求する裁判を起こす。この流れのなかで、後塵を拝したベン・ブラッドリー率いるワシントン・ポストもようやく「ペンタゴン・ペーパーズ」のコピーを入手するのだが、ニクソン政権がニューヨーク・タイムズに対して行った報道圧力は、他のメディアを怯えさせるのに十分な効果を発揮した。作品のなかでは、メディア人の矜持を貫き通して文書公開を断行しようとするベンに対し、役員たちは会社の経営のために政権の意向を飲むよう説得。社主のキャサリンは両者の板挟みになり「ペンタゴン・ペーパーズ」公開の可否をめぐって重大な決断を迫られる──。
キャサリンの決断については是非とも劇場で観ていただきたいが(とはいえ史実なので調べれば結果はすぐにわかるが)、スティーヴン・スピルバーグ監督はこの作品を手がけるにあたり、「いま」公開することにこだわった。スピルバーグ監督は昨年の2月にこの作品の脚本を読むやいなやすぐさま製作に取りかかったと語っており、先月6日付朝日新聞デジタルのインタビューでは「撮影中だった一つの作品に関する仕事以外はスケジュールを空けて、この映画を撮ることにしました。17年中に完成させるという目標に向かってみながまとまり、自分の作品で最も短期間で完成しました」と述べている(実際、アメリカでは昨年12月に公開されている)。
トランプ大統領への危機感から、スピルバーグ監督は異例のスピードで製作
もともとスピルバーグは早撮りが得意な監督として知られているが、そんな彼でさえ50年近くにわたる映画監督としてのキャリアのなかで異例となるほど短い製作期間で公開までもっていったのは、これがトランプ大統領登場以降のアメリカで観られるべき物語だったからだ。スピルバーグ監督は『キネマ旬報』(キネマ旬報社)18年4月上旬号のインタビューでこのように語っている。
「この物語には現代との共通点がとても多い。映画で描いた1971年当時と今のマスコミの状況は同じだ。マスコミは同様に圧力を受けている。2017年の“17”を逆にすると“71”だ。両者は数字的にいとこのような存在だよ。歴史の振り子が、現代に戻ってきた感じがする。歴史は繰り返すものだが、状況としては今のほうが悪いと思うね。だからすぐに作って公開したかったのさ」
言うまでもなく、この『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、アメリカだけでなく、いまの日本で観られるべき物語でもある。自分たちに不都合な情報を報道するメディアに圧力をかけるニクソン政権は安倍政権にも重なって見える。
トム・ハンクスは映画の公式パンフレットに掲載されたインタビューで「真実を追い求めるのがアメリカのメディアだと思うし、もちろん怖いことだってたくさんある。しかし、それが民主主義の基盤だと思う」と語っているが、まさしくその通り。映画のなかでベンが繰り返し口にする「報道の自由を守るには報道しかない」という言葉は、安倍政権の恫喝に怯えて忖度だらけとなったここ数年の日本のメディアのことを思うと重く響く。
ちなみに、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の公式ホームページを閲覧すると、著名人からの絶賛コメントの欄に、津田大介氏、ピーター・バラカン氏、黒沢清監督、小島慶子氏、中原昌也氏などと並んで、国際政治学者の三浦瑠麗氏も登場している。
三浦瑠麗がまたトンチンカンなコメント!隠ぺい問題を矮小化し“どっちもどっち論”
三浦氏はこの映画に次のようなコメントを寄せている。
〈痛恨の判断ミスを隠すエリート。追及する正義のメディア。その構図は私たちの時代にまだ生きているだろうか〉
三浦氏の映画へのコメントといえば、黒人に対する差別的な考えをもったデトロイト市警察の白人警官がモーテルに滞在していた黒人青年らに対し不当な尋問を加え、最終的には黒人青年3人が殺害された「アルジェ・モーテル事件」を映画にした映画『デトロイト』に対し、「共感の欠如が、暴動や白人警官の弾圧につながっているというのもあります。差別をなくす道は分かっていても、変化を起こすより単に正義と邪悪なものを対比させて、自分は正義の側だと唱える人権擁護派が多いのも悲しい現実です」(18年1月19日付朝日新聞より)などとコメント。差別を受けている側の暴動と白人警官による弾圧をまるで等価であるかのように並べ、「オルト・ライトに突撃していったオルト・レフトはどうなんだ」と言ったトランプ大統領と同様の悪質な「どっちもどっち」論を掲げて大炎上したのは記憶に新しい。(https://lite-ra.com/2018/02/post-3829.html)
今回は一言だけのコメントなので、『デトロイト』ほどトンデモ感は際だっていないが、「ペンタゴン・ペーパーズ」はベトナム戦争に勝利する見通しがないのにも関わらず、それを隠ぺいして国民を戦争の泥沼に引きずりこんでいったことを表す資料であり、〈痛恨の判断ミスを隠すエリート〉が政府側のことを指しているのだとしたら、そんな軽い言葉で片付けられるようなものではない悪質なものであり、ちょっと首を傾げざるを得ない。しかも隠蔽を矮小化したうえで、多くの人が今作と重ね合わせる森友文書改ざん問題は、隠蔽するエリートと正義のメディアの二元論の構図では語れないと言わんばかりで、結局お得意の“どっちもどっち論”。『デトロイト』のときも感じたが、三浦先生、インタビューを受けたりコメントを出す前にちゃんと映画を観ているのだろうか。映画関係者もまともな映画で三浦先生にコメントを求めるのはそろそろ止めたほうがいいのではないか。
それはそうと、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は「政府VSメディア」の戦いの映画であると同時に、まだ女性経営者などほとんどいなかった1970年代にあって「ペンタゴン・ペーパーズ」騒動を機にキャサリンがトップに立つ人間として成長していくフェミニズム映画として観ることもできる。
豊かな映画体験ができる作品であることは間違いない。自称「映画好き」の安倍首相にも、是非とも観ていただきたい1本である。
(編集部)
最終更新:2018.04.07 11:24
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