「在特会のヘイトも守るべき」ドワンゴ川上量生に反戦平和のジブリは…鈴木敏夫を直撃!

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ジブリ鈴木敏夫プロデューサーとKADOKAWA・DWANGO川上量生新社長。ふたりは師弟関係にある(「KAMINOGE」vol.25/東邦出版)

「最近の川上量生さんについてですが、在特会というヘイトスピーチを行う団体がありまして」──そう、話を切り出すと、スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫は「ああ」とつぶやき、宙を見上げた。

 在日コリアンらに対する差別と虐殺を扇動するヘイト市民団体「在日特権を許さない市民の会(在特会)」に、動画サイト「ニコニコ動画」が「公式チャンネル」を提供したのが昨年12月のこと。「ニコ動」を運営するドワンゴと、会長(当時)の川上量生氏のもとには批難の声が殺到したが、それでも約半年間、ニコ動側はヘイトに関してなんら対応をとってこなかった。

 ところが、今年5月17日になって、突如、ニコ動側が在特会公式チャンネルを閉鎖。理由は「規約違反」とされているが、公式なコメントの内容はなきに等しく、一方的な“トカゲのしっぽ切り”とみられている。

 これまで報じてきた通り、本サイトは、今回の“在特会切り”の裏に、ドワンゴと大手出版社KADOKAWAの経営統合による社内事情の存在を指摘してきた。だが、当の川上氏は自身のツイッターで「憶測も的外れ」と本サイトの報道を否定。それだけでなく、反ヘイト活動を行うC.R.A.C.(旧「レイシストをしばき隊」)に対して「(しばき隊界隈は)やくざとか総会屋とかと同じ」と八つ当たりし、しかも、在特会の運動を肯定するような、こんなツイートを放ったのだ。

〈しばき隊の連中は在特会の存在価値は全くないと断ずるだろうし、彼らが人種差別を繰り返した団体であることは間違いない。しかし、日本社会のあるタブーへの議論のきっかけとしての社会的役割を果たした事実は認めるべき。しばき隊も在特会へのカウンターとしての役割を果たしたのは事実〉

 さらに川上氏は、ツイッターユーザーとのやりとりのなかで、こんな発言もしている。

〈反ヘイトスピーチをさけぶひとたちがいかに危険か。今回もいいサンプルだよね。何度も何度も在特会もしばき隊もクソで賛同できない、でも両者の発言の権利は守るべきというのがぼくの持論。その文脈で在特会の発言だって100%嘘じゃないでしょ?といった瞬間にネトウヨ認定されてレッテル貼り攻撃〉
〈およそあらゆる人間の意見なんて100%正しくもなければ100%間違っていることもない。また、正しい意見に変わることもあれば逆もある。そもそも正しいことってなに? ぼくはだれにせよ発言の自由は守られるべきだと思います。間違えたことをいったら批判されるでいいじゃん。それと発言の自由は別〉

 リテラと「しばき隊」の主張が必ずしも同一というわけではないが(それは本サイトの野間易通氏インタビューをお読みいただければ明らかだろう)、しかし、在特会の差別・虐殺扇動と「しばき隊」の反差別の運動を「どっちもどっち(在特会もしばき隊もクソ)」と等価に並べることのできる神経は、まったく理解できない。

 しかも、川上氏が狡猾なのは、この問題を「発言の自由」の問題にすりかえていることだ。

 川上氏とニコ動が今、問われているのは、在特会の言動が「発言の自由」「表現の自由」として許されるかどうかではなく、具体的なひとつのメディア、社会的企業が差別に対してどういう立場を選び取ったのか、という問題だ。

 今回、ニコ動がやったことはたんに書き込みを削除しなかったとかそういう話ではない。明らかに在特会の普段の言動を知っていながら、その公式チャンネルを積極的に開設したのだ。在特会の桜井誠・元会長は、「(ニコ動側から)頭下げてきたんですよ」と証言しているが、言いだしたのがどちらであっても、ニコ動が差別に加担するという立場を主体的に選び取ったことには間違いない。

 それでも、川上氏が「言論の自由」を担保するための選択だったと言い張るのなら、なぜ、今頃になってチャンネルを停止したのか。そんなに在特会の言論を守る必要性を感じているなら、そのまま続ければよかったではないか。

 ようするに、川上氏のいう「表現の自由」はただの言い訳ではないのか。「今はヘイトが商売になる」という商売上の動機で開設したコンテンツを、今度はKADOKAWAとの経営統合で商売上、邪魔になったから切った。それだけのことにすぎない。

 そういう意味では川上氏の頭のなかでは、たしかに在特会も反差別の言論もフラットに並んでいるのかもしれない。しかし、それは「どちらも表現の自由」だとしてフラットにあるのではなく、金儲けの「商材」として陳列されているだけだ。

 実は筆者は少し前まで、川上氏の本質はそういったIT経営者にありがちな新自由主義的なものとは少しちがうところにあるのではないか、と思っていた。それは、数年前から彼が「プロデューサー見習い」と称してジブリに入社し、鈴木敏夫氏に弟子入りしていたからだ。

 ジブリといえば、戦争と差別を憎み、平和を希求する精神をもった制作集団だ。本サイトでもたびたび報じてきたように、宮崎駿、高畑勲両監督は憲法9条の堅持を訴え、安倍政権の戦争政策や歴史修正主義にも痛烈な言葉で批判してきた。もちろん差別扇動言説に対しても批判的だ。

 川上氏を弟子入りさせている鈴木敏夫プロデューサーも、両監督とスタンスはほとんど同じだ。スタジオジブリの小冊子「熱風」では、押しつけ憲法論に疑問を呈し、ネトウヨもよく口にする「第二次世界大戦での日本と韓国の国家賠償は終わってる」という言い分に対しても、「いや、何回謝ったってダメ。だから、ずっとやる」「亡くなったうちの親父がね、戦時中、中国に行っていた。親父の最後の言葉に僕はびっくりしました。突然こういいだしたんです、『あれだけひどいことをすりゃあね、その恨みは晴れない』って」などと反論している。

 こうした場所に志願して飛び込み、そういう思想をもつ人物に弟子入りするということは、川上氏のなかにもその姿勢に共鳴するところがあるのではないか。そう考えていたのだ。

 しかし、一連の経緯を見て、そうではなかったことがはっきりした。川上氏は結局、ジブリや鈴木敏夫氏の精神をそのまま引き継ごうとしているのではなく、たんにビジネスの方法論だけをマスターしようとしているだけなのだろう。ある意味、川上氏にとっては、ジブリも在特会と同じ“利用できるコンテンツのひとつ”にすぎないのかもしれない。

 では、いったい、ジブリの側はどうなのか。ヘイトも表現の自由で、在特会にも価値があり、商売のためには差別に加担しても平気、という川上氏の考えを知ってなお、彼を自分たちの弟子として扱い続けるのか。とくに、師匠の鈴木敏夫氏は弟子の言動をどう考えているのか。

 それを知りたくて、6月、都内某所で、鈴木敏夫氏を直撃した。

──鈴木さん、お伺いしたいことがあります。いま、鈴木さんのお弟子さんをされています、川上量生さんについてですが、在特会というヘイトスピーチを行う団体がありまして……

「ああ…」

──ごぞんじで?

「それは申し訳ないけれど、俺、何にも分かっていないから」

──いろいろとありまして、まず説明しますと……

「説明を聞いても、ねえ。申し訳ないけれど、それはコメントはできないんです。だって知らないから」

──ヘイトスピーチの問題も、川上さんがニコニコ動画で、そういったものを放置してきたことも。

「それを俺がちゃんと見ていればいいけれど、(自分自身は)何にもやっていないから(言及しようがない)」

──ヘイトスピーチ動画などを放置しているという話も?

「そう」

──だからコメントする立場にない、ということですか。

「そういうことです。すみませんね」

 淡々と答えながら、マンションに入っていこうとする鈴木氏。その背中にむけて、最後にこうぶつけた。

──では一点だけお願いします。クリエーターとして、差別的な言説は表現の自由の範疇だと思われますか。たとえば、「朝鮮人殺すぞ!」とか、そういう……

 鈴木氏は、振り返り、質問を最後まで聞くまでもないと言わんばかりに、強く、こう言い放った。

「俺は、大っ嫌いです」

 鈴木プロデューサーは、川上氏とニコ動のヘイト問題に言及することを慎重に避けたが、しかし同時に、最後には強い語調で差別言説に反対する意思を示したのだ。エントランスにいた周囲の人々がふりかえるほど響いたその声には、確かに“鈴木敏夫の思想”のようなものが表れていた。直接聞いた者として、そう印象を述べておきたい。

 もっとも、川上氏とニコ動への鈴木氏の考えは聞けないままに終わってしまった。もちろん、師匠として弟子に説教してもらうこともできなかった。ジブリはこれからも、川上氏のそういった思想についてはまったく「知らない」こととして、彼とつきあっていくのだろうか。機会があれば、今度は宮崎駿監督にも訊いてみたいところだ。
(梶田陽介)

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