山口敬之「韓国軍慰安所報道」はやはり捏造だった! 文春vs新潮のバトルで浮かび上がった新たな疑惑

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文春の反論記事には、捏造否定できる根拠がまったくない

 事実、新潮では、公文書研究に精通する有馬哲夫・早稲田大学社会学部および同大学院教授もこう断じている。

「慰安所という言葉を使うのであれば、その施設に軍医や憲兵がいるなど、きちんと軍が運営管理していた実態を把握する必要があります。しかし、公文書からはそうした事実は読み取れません。逆に一般に開かれた施設であることを文書は証明しているので、軍事売春所、つまり山口氏の読み替えた慰安所ということも完全に否定されます。一般大衆に開かれていては性病予防が徹底できず軍用にふさわしくない。文書にそうあり、その要旨からもあり得ないのに、山口氏は故意に無視しており、捏造と言われても仕方がないでしょう。旧日本軍の場合、慰安所の管理体制を示す資料がありますが、この公文書はそうしたものは何もないのです」

 さらに、山口記事が公文書だけでなく、この韓国軍慰安所についての裏付け取材でも、被取材者の発言を自らの都合のよいように捻じ曲げていたことも新潮の記事によって明らかにされている。

 山口記事では、ベトナム従軍経験のある元米軍大佐のアンドリュー・フィンレイソン氏が「韓国軍の慰安所は確かにサイゴンにありました。よく知っています」などと証言したとされる。ところが、「新潮」がこの退役軍人に取材すると、「そんな風には言っていない」と全否定。そもそもフィンレイソン氏は「その場所をよく知っていたわけではありません」として、ついで「私は慰安所という言葉を使っていない。そういう用語が出ていたならば、発言に気をつけていたでしょう」と断言したというのである。こうした証言者に関する“矛盾”は他にも多くあり、「新潮」によるフィンレイソン氏へのインタビューは動画でも公開された。

 これらの指摘を総合すると、山口氏はどう見ても、記事を捏造したとしか思えないが、しかし、新潮からこうした数々の捏造を指摘された文春は、その翌週に「週刊新潮「韓国軍に慰安婦」捏造記事の指摘に答える」と題して、こう弁明した。

〈山口氏が取材した米軍OBや元海兵隊員など複数の関係者の証言だけでなく、ベトナムと韓国にも小誌記者を派遣した上で裏付け取材を行った。その結果、ベトナム戦争当時、ベトナムに韓国軍が関与している慰安所があったことは、じゅうぶんな裏付けがあり、世に問う意義があると判断し、記事を掲載した。〉
〈小誌が山口氏の記事を掲載した本旨は、戦時下における女性の人権問題は、世界的かつ普遍的なテーマであり、広く問題提起をする意義があると考えたからだ。〉

 たしかに、サイゴンの「トルコ風呂」が「単なる売春施設」であったとしても軍が使用していたら、それは暴力を背景にした女性の人権侵害の側面が必ずあると考えるべきだろう(山口氏が「女性の人権問題」などと言える分際かはおくとしても、だ)。「文春」にはぜひ、日本軍の慰安婦問題についてもこの姿勢をつらぬいてほしいものだが、しかし、それとは別に、問題は文春の反論記事に、捏造を否定できる具体的な根拠がほとんどなかったことだ。

 反論の体をなしていたのは、新潮記事で有馬氏が「公文書には慰安所という言葉が一切出て来ない」「憲兵や軍医はいないと慰安所とはいえない」という内容のコメントをしたことに対して、歴史学者の秦郁彦氏が「慰安所や慰安婦は売春に関する言葉ですから、しばしば隠語が使われます」「旧日本軍の慰安所であっても、必ずしも憲兵や軍医が常駐しているわけではありません」などと解説していた部分くらい。

 公文書の捏造・歪曲や、公文書を発見したのは山口氏ではなくリサーチャーのグリーン誠子氏であるとの指摘、元米軍海兵隊のアンドリュー・フィンレイソン氏のコメントでっち上げについては、一言も反論もできていなかった。そして、そのわずかな弁明も「新潮」の再反論によって、ことごとく粉砕されてしまっていた。

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