ISの自爆テロと旧日本軍の特攻は違うのか? テロを「カミカゼ」と呼ぶ海外報道にネトウヨは激昂するが

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 特攻隊員の本心は必ずしも「お国を守るために死ぬしかない」という心境だったわけではないのだ。続いて引用するのは、元海軍予備少尉候補生として特攻要員となり、250キロの爆弾を積んだ練習機で出撃する前に終戦を迎えた男性の証言である。

〈特攻は志願制だが、45年に入ると事実上強制となった。特攻隊員の中には名誉の死を受容する者がいる一方、飲酒し抜刀して暴れる者や、太鼓をたたき念仏を唱えながら飛行場を周回する者も現れた。いつ出撃命令が来るかおびえ、逃げられもせず、精神状態が不安定になって自殺する者も少なからずいた。
 離陸後不時着して基地に救援を求める者も目立ってきた。軍は再教育を施したが期待した効果が上がらず、爆弾と機体の装着部をボルトで締め付けた。体当たりを強いるためだ。築城を発った多くの特攻機が米軍の集中砲火を浴びて玉砕した。〉(朝日新聞14年2月18日付朝刊)

 小川氏が主張するような「静かな理性と諦念と勇気があるだけ」というのが、ごく限られた一部の人だけの話だということがわかる。実際、悲壮な決意のもと志願した人でも「当時、両親が亡くなり、6人の弟妹がいたが、それでも血判を押して特攻隊に志願したのは軍隊教育の結果だと思う。今では考えられません」と語っている(朝日新聞04年01月06日付夕刊)。

 ひっきょう、“挙国一致”“一億総火の玉”の状況で行われた特攻は、人を人と思わない作戦だった。その事実は変わらない。神風特攻隊の創始者である大西瀧治郎自身でさえ「外道」と言い切ったという(『神風特別攻撃隊の記録』猪口力正、中島正/雪華社)。

 これをどうやったら、戦争を経験していない者が「狂的なものから最も遠かった」などと言い切れるのか。なぜ「神聖な特攻」などと胸を張れるのか。

 特攻は「お国」の名の下に行われた。その背景に流れていたのが国家神道の思想だった。ある人は「テロは宗教過激派の思想に洗脳された者たちが起こす凶行だ」と言う。だが、その意味で言えば大日本帝国とはなんだったのか問わなければならない。たしかに特攻隊は軍事兵器と兵隊だけを狙った。しかし、あの戦争全体を見てみれば、日本軍もまた大量の民間人を虐殺している。これも歴史の事実である。

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