「売れてる本」の取扱説明書③『英語の害毒』(永井忠孝)『英語化は愚民化』(施光恒)

英語が日本をダメにする?“英語化批判本”が語るのはグローバリズム批判か排外主義か

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
eigo_150906.jpg
左『英語化は愚民化』(集英社新書)/右『英語の害毒』(新潮新書)


 元首相の森喜朗が日米首脳会談の際に、クリントン大統領に向かって「How are you?」と言うべきところを「Who are you?」と誤り、「I'm Hillary's husband」と返されたという逸話は有名だが、本人は重ねて「(メディアの)作り話だ」と否定している。いずれにせよ彼が、英語力云々の前に、国際社会では通用しない失言を繰り返す言語力の持ち主であることを再認識したばかりである。危うい英語といえば、東京五輪招致のスピーチが記憶に新しいだろう。所々でアクセントを誤りながら「ダイナミック!」にカタカナ英語で見栄を張った猪瀬直樹都知事(当時)や、福島原発について「the situation is under control」と世界の人々に向けてわざわざ英語で大ボラを吹いた安倍首相などなど、やっぱりここでも英語力をどうのこうのと問う以前の問題であった。

 小学校でも英語の授業が導入され始め、楽天やユニクロなどでは社内の英語公用語化が着々と進んでいる。「中高で6年間英語を学んだって日常会話すらできやしない」という、この国全体で抱えてきたコンプレックスをいよいよ打開すべきと、英語教育の比重を高める必要性が語られている。誰もがグローバル化の動きの中で働くわけではないのだが、「英語が出来るようになる」ことへの希求は疑ってはならない風土にある。今年4月末、安倍首相がアメリカ議会でスピーチしてスタンディングオベーションを受けたのは、それが英語でのスピーチだったことも大きい。あの場での評価は彼の自信の拠り所にもなり、安保法制を成立させなければならない強制力にもなっているわけだが、“日本を取り戻す”首相が、わざわざ自国語を捨てて拙い英語を使った姿勢を咎める人は、支持層の中にもなかなかいない。

 書店の新書コーナーで横並びになっていた『英語の害毒』『英語化は愚民化』とのタイトルを見かけ、「害毒」「愚民」という言葉の強さにたじろぎながらも手に取った。どちらの本も現政府が推し進める英語公用語化政策について「植民地」化であると厳しく断じている。施光恒『英語化は愚民化』(集英社新書)は冒頭で、2014年8月、内閣官房管轄下のクールジャパンムーブメント推進会議の場において「公用語を英語とする英語特区をつくる」という提言が発表されたことについて疑問を呈する。自ら日本語を手放すかのような措置はこの施策に留まらない。英語での講義を増やすことで「スーパーグローバル大学」の認定を得れば最大50億円の補助金が付くし、国家戦略特区構想のなかでは「公立学校運営の民間への開放」が明記され、この民間開放は「グローバル人材の育成」とくっ付けて語られていく。著者はこれを「新自由主義的な要請によって、英語教育を重視する教育」に向かうと断言しているが、これからTPPへの加入が決まれば、ますますこの力学が推し進められることになるだろう。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書)

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 青山繁晴が森友問題で晒した嘘と醜態!
2 政府が隠していた籠池手紙の中身が判明
3 視聴者の会がNEWS加藤シゲアキを攻撃
4 山本太郎が安倍のインチキを暴いた!
5 核禁止条約に不参加に! 渡辺謙が批判
6 官邸、山口敬之がネトウヨ妄想に丸乗り
7 松本人志、森友スルーの裏に大阪万博
8 安倍が木村草太嫌がり報ステ出演中止
9 安倍応援団の情報操作に騙されるな!
10 安倍政権御用ジャーナリスト大賞
11 ECDの妻が明かした夫のがん闘病
12 山口敬之、“安倍太鼓持ち”の歴史
13 橋下徹が籠池証人喚問以来、完全沈黙
14 恵俊彰が田崎史郎を「政権の代弁者」と
15 昭恵夫人が籠池妻に小川榮太郎を紹介
16 2枚目のFAXを封殺、官邸の情報操作
17 マツコが“忘れられない男”と首都高で
18 渡辺謙が核軍縮に反対の安倍政権を批判
19 安倍100万円振込票と長女の目撃証言
20 田崎史郎に自民党が政党交付金から金
PR
PR
12枚目のFAXを封殺、官邸の情報操作
2政府が隠していた籠池手紙の中身が判明
3 昭恵夫人付役人から籠池に予算化報告
4安倍が防大卒業式で軍人勅諭ばり訓示!
5籠池理事長が「安倍首相から100万円」
6安倍100万円振込票と長女の目撃証言
7橋下徹が籠池証人喚問以来、完全沈黙
8迫田、松井、昭恵も証人喚問せよ
9 核禁止条約に不参加に! 渡辺謙が批判
10“第二の森友学園”関係者を最高裁判事に
11安倍応援団の情報操作に騙されるな!
12籠池証人喚問で自民党議員の質問に唖然
13官邸、山口敬之がネトウヨ妄想に丸乗り
14昭恵夫人の口利きで8千万円の予算が
15田崎が“籠池が稲田にセクハラ”の噂を
16稲田夫が籠池と財務局との交渉に同席
17籠池の依頼で昭恵夫人が口利きか
18松井知事が森友認可前に私学課に圧力?
19国税の税務調査を使った報道への圧力
20橋下後援会長の息子と籠池と元在特会
PR
PR

人気連載

アベを倒したい!

室井佑月

室井佑月が斎藤貴男と「共謀罪」を徹底批判!「安倍政権に逆らう人が片っ端から逮捕される」

アベを倒したい!

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

"体育会系相田みつを"松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

「売れてる本」の取扱説明書

ネット右翼の15年

野間易通

高市早苗はいかにして"ネオナチ"と出会ったか

ネット右翼の15年

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

戦争を放棄せよ! 軍事力がなくても侵略と闘う方法はある、自由のために闘える!

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」